TISI(3626)2027年3月期 中間決算分析――訴訟損失引当金の消え方が気になる

TISI(3626)2027年3月期 中間決算分析――訴訟損失引当金の消え方が気になる 日本株

カード決済や銀行の業務を裏で動かしている会社

TISIは、カード会社や銀行、保険会社、メーカーなどから頼まれて、業務用のシステムを作り、動かし続ける会社です。お店でカードを出して決済が通る、その裏側にあるような仕組みを得意にしています。

使う人が社名を意識することは、ほとんどありません。お金を払うのは企業の情報システムの担当者です。業務を止めないため、また古くなった仕組みを入れ替えるために発注します。この夏、北陸に根を張ってきた子会社のインテックを吸収合併し、今の社名になりました。

4行とも増えた中間決算

11月4日に出た中間決算です。

今回前年同期増減率
売上高3,071億5,300万円2,885億2,500万円+6.5%
営業利益381億8,400万円355億5,300万円+7.4%
経常利益383億3,900万円359億7,000万円+6.6%
純利益269億3,700万円237億2,600万円+13.5%

通期予想も引き上げています。ここまでなら、文句を付ける場所はありません。

この短信に、キャッシュ・フロー計算書が載っていません

私は短信を開くと、キャッシュ・フロー計算書を探します。2023年に、1ページ目は完璧なのに営業キャッシュ・フローがマイナスだった会社に当たってからの癖です。

ところが今回の短信には、計算書の本体が載っていません。あるのは計算書に関する注記だけで、中身は減価償却費とのれんの償却額です。1ページ目に半期報告書の提出予定日が11月11日とあるので、確かめるのはそのときにします。

それまで待てないので、貸借対照表と説明文から、大きなお金の動きだけ拾いました。

向き項目金額
入り親会社株主に帰属する中間純利益269億3,700万円
入り減価償却費とのれんの償却額約96億2,300万円
出自己株式の取得等約348億8,400万円
出剰余金の配当92億9,100万円
出訴訟損失引当金の減少74億3,400万円
手当て借入金の増加237億8,400万円

約の付いた数字は私の計算です。償却費は注記の2つの金額を足しました。自己株式は、消却の500億2,100万円から、貸借対照表の自己株式の減少151億3,700万円を引いています。消却した額より残高の減りが少ないので、その差を今期の取得等に使ったお金と見ています。

入りは約366億円、出は約516億円です。引くと約150億円足りません。そこを借入金で手当てした形で、現金及び預金はむしろ少し増えています。

借入金の増加について、短信は「自己株式取得の資金調達等」と書いています。3月から5月にかけて約500億円分を取得し、8月に消却した件です。純利益の伸びは1割強なのに、1株当たり純利益は2割強伸びました。

支払利息は倍になりましたが、5億4,700万円です。自己資本比率も半分を大きく超えているので、借入金の増加そのものは心配していません。

訴訟損失引当金74億3,400万円が、半年でゼロになりました

負債の説明(添付資料6ページ)で引っかかったのは、借入金ではなく同じ文の前半です。前期末に74億3,400万円あった訴訟損失引当金が、9月末の貸借対照表では消えています。

同じ文の未払法人税等には「納付により」、借入金には「自己株式取得の資金調達等により」と理由が付いています。訴訟損失引当金は「減少」の2文字で終わります。……ここだけ、理由が付いていない。

何の訴訟なのか、相手が誰なのかは、決算短信には書かれていません。この科目が出てくるのは、負債の説明と貸借対照表の2か所だけです。

引当金が消えるのは、支払ったとき、戻し入れて利益にしたとき、未払いの科目に移したときのどれかです。

戻し入れたのなら特別利益に出るはずですが、特別利益の「その他」は5億6,200万円です。未払いに移したのなら流動負債の「その他」が増えるはずですが、こちらは減っています。ここまでは短信の数字です。

半年のあいだに支払いを終えた、と私は読みました。ただ、流動資産の「その他」が109億5,500万円増えた理由は追えておらず、引当金と関係があるのかも分かりません。支払いの確認は、半期報告書に持ち越します。

売上予想を150億円増やして、粗利は10億円の上積みです

もう一つの引っかかりは、通期予想の引き上げの中身です。増えた売上が、利益にほとんどつながらない組み立てになっています。

前回予想今回予想増減
売上高6,200億円6,350億円+150億円
売上総利益1,795億円1,805億円+10億円
売上総利益率29.0%28.4%△0.6ポイント
販売費及び一般管理費985億円975億円△10億円
営業利益810億円830億円+20億円

営業利益の上積み20億円のうち、半分は経費の予想を減らして作っています。その経費を何で減らすのかは、決算短信には書かれていません。

決済を含む事業は上期が減益で、下期に戻す計画です

売上予想をいちばん増やしたのはオファリングサービスで、84億円の上積みです。一方で、この事業の営業利益予想は1億5,000万円減らしています。自社で投資して作ったサービスを提供する事業で、決済分野もここに入ります。

オファリングサービス売上高営業利益営業利益率
前年の上期760億7,000万円46億6,700万円6.1%
今年の上期825億8,400万円42億7,100万円5.2%
前年の下期約845億400万円約57億7,500万円約6.8%
今年の下期の計画約899億1,600万円約68億2,900万円約7.6%

約の付いた数字は、通期の実績や予想から上期を引いて出したものです。

上期の減益の理由として、短信は決済分野の先行投資の増加と、海外事業の収益性の低下を挙げています。この事業ではソフトウエアの減損損失も、前年同期の11億3,900万円に続いて今期も6億200万円を計上しました。

次の中期経営計画でストック型収益の拡大を掲げる以上、この事業は将来の柱のはずです。それでも営業利益率は全事業でいちばん低く、下期には前年の下期より2割近い増益を計画しています。

本業の説明は受け取り、純利益の伸びには留保を付けます

短信は増収の理由をIT投資需要への対応に求め、増益の理由を高付加価値ビジネスと生産性向上に求めています。

これはそのまま受け取ってよいと考えています。理由は、金融ITと産業ITの営業利益率がそろって約1ポイント改善しているからです。営業利益も金融ITは2割増、産業ITは1割強の増益でした。

留保を付けるのは純利益です。短信の説明は「特別損益(純額)の改善」の一言です。特別利益は47億8,400万円、特別損失は18億7,300万円です。引き算すると29億1,100万円になります。前年同期は同じ引き算で4億4,700万円でした。

改善額は24億6,400万円で、税金等調整前中間純利益の増加48億3,300万円のほぼ半分です。主な中身は政策保有株式の縮減に伴う投資有価証券売却益42億1,700万円なので、純利益の伸びをそのまま本業の伸びとは受け取りません。

営業利益の進捗率は46.0%で、前年とほぼ同じです

上期の実績通期予想進捗率残り6か月に必要な額前年の下期比
売上高3,071億5,300万円6,350億円48.4%3,278億4,700万円+6.5%
営業利益381億8,400万円830億円46.0%448億1,600万円+10.2%
経常利益383億3,900万円830億円46.2%446億6,100万円+10.2%
純利益269億3,700万円575億円46.8%305億6,300万円+33.5%

進捗率から右の列は、表紙の予想と実績から私が出した数字です。

半分に届いていませんが、前期も上期の営業利益は355億5,300万円、通期は762億2,900万円でした。割ると約47%です。下期に利益が偏る会社なので、遅れとは受け取りません。

不思議なのは純利益です。通期で想定する特別利益50億円の大半は上期に計上済みなのに、残り6か月は3割以上の増益が必要になります。

前期の下期を引き算で出すと理由が分かります。純利益は通期が466億2,400万円、上期が237億2,600万円です。引くと下期は228億9,800万円です。営業利益は同じように引いて406億7,600万円です。前期の上期は営業利益の3分の2が純利益に残ったのに、下期は6割に届いていません。

前期の下期に大きな損失があり、前期末の訴訟損失引当金がそれに関係している、と私は考えました。前期の損失の内訳は、今回の短信には載っていません。

私はどう読んだか

私は、本業の堅い決算だという見方をしています。理由は、増益の中心が金融ITと産業ITの利益率の改善で、特別利益の入らない営業利益が伸びているからです。

心配性なので、悪いほうも書いておきます。オファリングサービスの下期の計画は、そのままは受け取っていません。この先どうなるかは知りません。11月11日に確かめたいのは、キャッシュ・フロー計算書です。

出典:決算短信(会社発表)

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訴訟損失引当金74億3,400万円が何の訴訟のもので、いつ現金が出たのかは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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