カード決済や銀行の業務を裏で動かしている会社
TISIは、カード会社や銀行、保険会社、メーカーなどから頼まれて、業務用のシステムを作り、動かし続ける会社です。お店でカードを出して決済が通る、その裏側にあるような仕組みを得意にしています。
使う人が社名を意識することは、ほとんどありません。お金を払うのは企業の情報システムの担当者です。業務を止めないため、また古くなった仕組みを入れ替えるために発注します。この夏、北陸に根を張ってきた子会社のインテックを吸収合併し、今の社名になりました。
4行とも増えた中間決算
11月4日に出た中間決算です。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,071億5,300万円 | 2,885億2,500万円 | +6.5% |
| 営業利益 | 381億8,400万円 | 355億5,300万円 | +7.4% |
| 経常利益 | 383億3,900万円 | 359億7,000万円 | +6.6% |
| 純利益 | 269億3,700万円 | 237億2,600万円 | +13.5% |
通期予想も引き上げています。ここまでなら、文句を付ける場所はありません。
この短信に、キャッシュ・フロー計算書が載っていません
私は短信を開くと、キャッシュ・フロー計算書を探します。2023年に、1ページ目は完璧なのに営業キャッシュ・フローがマイナスだった会社に当たってからの癖です。
ところが今回の短信には、計算書の本体が載っていません。あるのは計算書に関する注記だけで、中身は減価償却費とのれんの償却額です。1ページ目に半期報告書の提出予定日が11月11日とあるので、確かめるのはそのときにします。
それまで待てないので、貸借対照表と説明文から、大きなお金の動きだけ拾いました。
| 向き | 項目 | 金額 |
|---|---|---|
| 入り | 親会社株主に帰属する中間純利益 | 269億3,700万円 |
| 入り | 減価償却費とのれんの償却額 | 約96億2,300万円 |
| 出 | 自己株式の取得等 | 約348億8,400万円 |
| 出 | 剰余金の配当 | 92億9,100万円 |
| 出 | 訴訟損失引当金の減少 | 74億3,400万円 |
| 手当て | 借入金の増加 | 237億8,400万円 |
約の付いた数字は私の計算です。償却費は注記の2つの金額を足しました。自己株式は、消却の500億2,100万円から、貸借対照表の自己株式の減少151億3,700万円を引いています。消却した額より残高の減りが少ないので、その差を今期の取得等に使ったお金と見ています。
入りは約366億円、出は約516億円です。引くと約150億円足りません。そこを借入金で手当てした形で、現金及び預金はむしろ少し増えています。
借入金の増加について、短信は「自己株式取得の資金調達等」と書いています。3月から5月にかけて約500億円分を取得し、8月に消却した件です。純利益の伸びは1割強なのに、1株当たり純利益は2割強伸びました。
支払利息は倍になりましたが、5億4,700万円です。自己資本比率も半分を大きく超えているので、借入金の増加そのものは心配していません。
訴訟損失引当金74億3,400万円が、半年でゼロになりました
負債の説明(添付資料6ページ)で引っかかったのは、借入金ではなく同じ文の前半です。前期末に74億3,400万円あった訴訟損失引当金が、9月末の貸借対照表では消えています。
同じ文の未払法人税等には「納付により」、借入金には「自己株式取得の資金調達等により」と理由が付いています。訴訟損失引当金は「減少」の2文字で終わります。……ここだけ、理由が付いていない。
何の訴訟なのか、相手が誰なのかは、決算短信には書かれていません。この科目が出てくるのは、負債の説明と貸借対照表の2か所だけです。
引当金が消えるのは、支払ったとき、戻し入れて利益にしたとき、未払いの科目に移したときのどれかです。
戻し入れたのなら特別利益に出るはずですが、特別利益の「その他」は5億6,200万円です。未払いに移したのなら流動負債の「その他」が増えるはずですが、こちらは減っています。ここまでは短信の数字です。
半年のあいだに支払いを終えた、と私は読みました。ただ、流動資産の「その他」が109億5,500万円増えた理由は追えておらず、引当金と関係があるのかも分かりません。支払いの確認は、半期報告書に持ち越します。
売上予想を150億円増やして、粗利は10億円の上積みです
もう一つの引っかかりは、通期予想の引き上げの中身です。増えた売上が、利益にほとんどつながらない組み立てになっています。
| 前回予想 | 今回予想 | 増減 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 6,200億円 | 6,350億円 | +150億円 |
| 売上総利益 | 1,795億円 | 1,805億円 | +10億円 |
| 売上総利益率 | 29.0% | 28.4% | △0.6ポイント |
| 販売費及び一般管理費 | 985億円 | 975億円 | △10億円 |
| 営業利益 | 810億円 | 830億円 | +20億円 |
営業利益の上積み20億円のうち、半分は経費の予想を減らして作っています。その経費を何で減らすのかは、決算短信には書かれていません。
決済を含む事業は上期が減益で、下期に戻す計画です
売上予想をいちばん増やしたのはオファリングサービスで、84億円の上積みです。一方で、この事業の営業利益予想は1億5,000万円減らしています。自社で投資して作ったサービスを提供する事業で、決済分野もここに入ります。
| オファリングサービス | 売上高 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|
| 前年の上期 | 760億7,000万円 | 46億6,700万円 | 6.1% |
| 今年の上期 | 825億8,400万円 | 42億7,100万円 | 5.2% |
| 前年の下期 | 約845億400万円 | 約57億7,500万円 | 約6.8% |
| 今年の下期の計画 | 約899億1,600万円 | 約68億2,900万円 | 約7.6% |
約の付いた数字は、通期の実績や予想から上期を引いて出したものです。
上期の減益の理由として、短信は決済分野の先行投資の増加と、海外事業の収益性の低下を挙げています。この事業ではソフトウエアの減損損失も、前年同期の11億3,900万円に続いて今期も6億200万円を計上しました。
次の中期経営計画でストック型収益の拡大を掲げる以上、この事業は将来の柱のはずです。それでも営業利益率は全事業でいちばん低く、下期には前年の下期より2割近い増益を計画しています。
本業の説明は受け取り、純利益の伸びには留保を付けます
短信は増収の理由をIT投資需要への対応に求め、増益の理由を高付加価値ビジネスと生産性向上に求めています。
これはそのまま受け取ってよいと考えています。理由は、金融ITと産業ITの営業利益率がそろって約1ポイント改善しているからです。営業利益も金融ITは2割増、産業ITは1割強の増益でした。
留保を付けるのは純利益です。短信の説明は「特別損益(純額)の改善」の一言です。特別利益は47億8,400万円、特別損失は18億7,300万円です。引き算すると29億1,100万円になります。前年同期は同じ引き算で4億4,700万円でした。
改善額は24億6,400万円で、税金等調整前中間純利益の増加48億3,300万円のほぼ半分です。主な中身は政策保有株式の縮減に伴う投資有価証券売却益42億1,700万円なので、純利益の伸びをそのまま本業の伸びとは受け取りません。
営業利益の進捗率は46.0%で、前年とほぼ同じです
| 上期の実績 | 通期予想 | 進捗率 | 残り6か月に必要な額 | 前年の下期比 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,071億5,300万円 | 6,350億円 | 48.4% | 3,278億4,700万円 | +6.5% |
| 営業利益 | 381億8,400万円 | 830億円 | 46.0% | 448億1,600万円 | +10.2% |
| 経常利益 | 383億3,900万円 | 830億円 | 46.2% | 446億6,100万円 | +10.2% |
| 純利益 | 269億3,700万円 | 575億円 | 46.8% | 305億6,300万円 | +33.5% |
進捗率から右の列は、表紙の予想と実績から私が出した数字です。
半分に届いていませんが、前期も上期の営業利益は355億5,300万円、通期は762億2,900万円でした。割ると約47%です。下期に利益が偏る会社なので、遅れとは受け取りません。
不思議なのは純利益です。通期で想定する特別利益50億円の大半は上期に計上済みなのに、残り6か月は3割以上の増益が必要になります。
前期の下期を引き算で出すと理由が分かります。純利益は通期が466億2,400万円、上期が237億2,600万円です。引くと下期は228億9,800万円です。営業利益は同じように引いて406億7,600万円です。前期の上期は営業利益の3分の2が純利益に残ったのに、下期は6割に届いていません。
前期の下期に大きな損失があり、前期末の訴訟損失引当金がそれに関係している、と私は考えました。前期の損失の内訳は、今回の短信には載っていません。
私はどう読んだか
私は、本業の堅い決算だという見方をしています。理由は、増益の中心が金融ITと産業ITの利益率の改善で、特別利益の入らない営業利益が伸びているからです。
心配性なので、悪いほうも書いておきます。オファリングサービスの下期の計画は、そのままは受け取っていません。この先どうなるかは知りません。11月11日に確かめたいのは、キャッシュ・フロー計算書です。
出典:決算短信(会社発表)

訴訟損失引当金74億3,400万円が何の訴訟のもので、いつ現金が出たのかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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