セイコーエプソン(6724)2027年3月期 中間決算分析・続報――還付の場所を読み違えました

セイコーエプソン(6724)2027年3月期 中間決算分析・続報――還付の場所を読み違えました 日本株

インクを買い足しながら使い続ける機械と、その中身

家庭や事務所のインクジェットプリンタを作っている会社です。本体を売り、あとから買い足すインクでも稼いでいます。

ただ、完成品を売るだけの会社ではありません。インクを紙に飛ばす印刷ヘッドを、よその印刷機メーカーにも部品として売っています。水晶の部品、半導体、産業用ロボット、プロジェクター、腕時計。四半期ごとに主役が入れ替わるのは、こういう構えの会社だからです。

2026年8月5日に出た第1四半期の決算を、9月の末に読みました。営業利益の伸びと本業の利益の伸びが食い違っていて、差を作っていたのは「その他の営業収益」でした。その中身が米国の関税還付と関係するのかは読み取れず、次の決算で確かめると書いて終わっています(前の記事)。

純利益が2倍を超えた半年

2026年11月5日に出た、4月から9月までの決算です。国際会計基準なので、経常利益の欄はありません。

今回前年同期増減率
売上収益7,411億1,500万円6,673億5,200万円+11.1%
営業利益632億400万円311億4,500万円+102.9%
経常利益———
純利益446億5,500万円186億6,400万円+139.3%

純利益は、親会社の所有者に帰属する中間利益です。売上は1割増えて、利益はどれも2倍を超えました。

第2四半期だけ、売上が増えて売上原価が減っている

短信の最後に、四半期を2つに割った参考の表が付いています。第2四半期の売上収益は第1四半期より66億3,200万円増えたのに、売上原価は199億900万円減っていました。どちらも私の引き算です。

売上が増えて原価が減れば、粗利はその両方の分だけ膨らみます。第2四半期の事業利益は450億3,300万円でした。第1四半期は221億2,200万円で、2倍以上に増えています。

理由は短信の終わりのほうにありました。追加情報という節に書いてあります。米国で国際緊急経済権限法を根拠に課された関税は、連邦最高裁判所に無効と判断されました。米国子会社の還付申請の審査も完了した、とあります。還付対象として認められた173億2,500万円を、売上原価の減額として計上した、と書いています。

……還付は、ここに入っていたのか。

前の記事で私が疑ったのは「その他の営業収益」でした。本業の外の箱です。実際には、還付は本業の利益そのものの中に入っていました。切り分ける線を、一本手前に引いていたことになります。

前年同期今回
事業利益374億3,000万円671億5,600万円
うち関税還付(売上原価の減額)—173億2,500万円
その他の営業収益と費用の差し引き△62億8,500万円△39億5,100万円
営業利益311億4,500万円632億400万円

出典:短信の要約中間連結包括利益計算書、セグメント情報、追加情報の節。

事業利益は297億2,600万円増えました。そのうち173億2,500万円が還付ですから、残りは約124億円です。半分より多くが、一回きりの収入でした。私が目を付けていた「本業の外」は、半年全体で23億3,400万円縮んだだけです。この半年の増益を説明する大きさではありません。

4つの部門のうち3つが、同じ言葉で増益を説明されている

部門売上収益前年同期比部門の利益前年同期比
プレシジョンイノベーション(ヘッド・水晶・半導体)1,009億4,100万円+24.4%323億7,400万円+55.5%
インダストリアル&ロボティクス(業務用プリンタ・ロボット)1,649億2,500万円+15.1%194億2,700万円+131.7%
オフィス・ホームプリンティング(家庭・事務所用プリンタ)3,384億9,800万円+7.0%305億8,100万円+14.9%
ビジュアル&ライフスタイル(プロジェクター・時計)1,346億4,000万円+7.0%141億4,400万円+21.1%

出典:短信のセグメント情報と、会社の説明文。売上は部門間の取引を含みます。

4部門すべてが増収増益です。前の記事で2割以上の減益だった家庭・事務所用プリンタも、増益に戻りました。

引っかかったのは、増益の理由の書き方です。ヘッドと水晶の部門だけは「増収の影響が大きく」と説明されています。残る3部門は「米国関税還付や増収、為替のプラス影響などにより」「米国関税還付などにより」で、還付が先頭か単独です。173億2,500万円が部門ごとにいくらずつ配られたのかは、決算短信には書かれていません。

本体の台数も、前の記事に書いたことから変わりました。第1四半期の短信では「前年同期並み」でしたが、今回は「当第1四半期に部品調達で一時的な問題が発生したことなどにより、全体では減少しました」と書かれています。増収を支えたのは、為替と大容量インクタンクモデル、それに消耗品でした。

会社の説明と、残る留保

為替は米ドルが159円32銭、ユーロが184円31銭でした。円安の幅は、ドルが9%、ユーロが10%です。

還付を先に置いた説明は、そのまま受け取ります。理由は、金額も計上した場所も注記で開示されていて、数字と説明がかみ合っているからです。留保を付けるのは部門への配分だけです。

中間で6割超まで来たのに、事業利益の予想は動いていない

通期前回予想今回予想中間期進捗率
売上収益1兆5,100億円1兆5,100億円7,411億1,500万円約49%
事業利益1,050億円1,050億円671億5,600万円約64%
営業利益1,010億円1,030億円632億400万円約61%
純利益690億円720億円446億5,500万円約62%

進捗率は、中間期を今回の通期予想で割った私の割り算です。

半分が目安の時期に、利益はどれも6割を超えています。それでも会社は売上収益と事業利益を据え置き、営業利益から下だけを少し引き上げました。

下期に何を見込んでいるのかを、前年と並べます。

事業利益中間期下期通期
前期 実績374億3,000万円約463億7,000万円838億円
今期671億5,600万円(実績)約378億4,400万円1,050億円(会社予想)

約の付いた数字は、通期から中間期を引いた私の引き算です。

前年に463億7,000万円稼いだ半年を、今年は378億4,400万円と見込んでいます。2割ほど下を向いた予想です。為替の前提は第3四半期以降が1米ドル153円、1ユーロ174円で、この半年の実績より円高に振ってあります。

この半年の実力は、還付を抜いた498億円のほうだと考えています

前の記事では、一過性のものが本業の外にあると疑いました。それは外れでした。

そのうえで、この半年の実力は、事業利益671億5,600万円から還付を引いた498億3,100万円のほうだと考えています。理由は、還付が裁判所の判断から生じた一回きりの収入で、下期も同じ額が入る根拠が決算短信に無いからです。それでも前年同期の374億3,000万円より3割ほど多くなります。会社自身が下期を前年より低く見込んでいることも、この読みと向きが同じです。

心配性なので、棚卸資産にも目が行きました。3,947億3,300万円から4,193億8,500万円へ増えました。半年で246億5,200万円の増加です。

ただ、営業活動で入った現金は690億2,900万円で、前年同期の242億3,800万円から戻りました。投資に331億3,400万円を使っても残り、配当118億5,500万円と自己株式の取得も、借入をほとんど増やさずに払えています。前の記事で覚えておくと書いた順番は、半年で見れば気にしなくてよいものでした。

出典

出典:決算短信(会社発表)

還付173億2,500万円が4つの部門にどう配られたのかは、決算短信からは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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