グロービング(277A)通期決算分析・続報――同じ1年の決算が、自己資本比率73.5%と63.5%の2通りで出てきた

グロービング(277A)通期決算分析・続報――同じ1年の決算が、自己資本比率73.5%と63.5%の2通りで出てきた 決算を読む

はじめに

7月15日にこの会社の通期決算を読んだとき、最後にこう書きました。「この決算を読み終えるには、8月26日をもう一度開く必要がある」と。

その8月26日が来ました。有価証券報告書が出て、同じ日に2026年5月期の決算短信〔IFRS〕も出ています。7月に空欄だった欄が埋まり、7月の決算短信には見当たらなかった理由も、表の一行になって出てきました。

前回持ち越した宿題は3つです。順番に片づけます。

  1. 来期の利益率が6ポイント落ちて見えるのは、物差しの違いなのか、中身なのか
  2. 税負担が9ポイント下がった理由は何か
  3. コンサルタントは何人になったのか

宿題1:空欄だった欄が埋まった

7月の短信では、来期予想の「前期比」の欄が上から下まで空欄でした。理由は短信の注記に書いてあります。来期予想はIFRSで作っているのに、比べる相手である2026年5月期の実績は日本基準しかない。だから増減率を書けない、と。

8月26日の短信は、その2026年5月期をIFRSで書き直したものです。比べる相手ができたので、欄が埋まりました。単位は百万円。

項目2027年5月期予想前期比
売上収益16,100+39.8%
営業利益4,830+20.6%
税引前利益4,830+22.2%
親会社帰属当期利益3,381+17.6%

売上は4割伸ばす、利益は2割。ここが7月には見えませんでした。

その6ポイントは、1.2と4.8に分かれた

7月の疑問はこうでした。実績の営業利益率36.0%に対して、来期予想は30.0%。6ポイント落ちて見えるが、そのうちどこまでが物差しの違いなのか。

答えが出ました。同じ2026年5月期を、2つの物差しで測った結果です。

2026年5月期日本基準(7月15日)IFRS(8月26日)
売上高/売上収益11,51211,512
営業利益4,1424,003
営業利益率36.0%34.8%

売上は1円も動いていません。同じ11,512,844千円です。動いたのは費用のほうで、営業利益が138百万円減りました。この引き算は私がしています。2つの数字はそれぞれ別の書類に印字されているもので、会社が並べて見せているわけではありません。

6ポイントは、こう割れていました。

  • 1.2ポイントは物差しの違いです。日本基準の営業利益率36.0%が、IFRSでは34.8%になります。
  • 4.8ポイントは中身のほうです。IFRSの34.8%から、来期予想の30.0%まで落ちます。

大半は物差しではありませんでした。会社は来期、利益率が5ポイント近く落ちる前提で予想を出しています。

そしてなぜ落ちるのかは、有価証券報告書にも決算短信にも書かれていません。 「今後の見通し」の項は、景気の話と4つの重要指標の話をしたあと、そのまま予想の数字に着地します。142ページ全部を見ましたが、理由の説明は見つけられませんでした。私が見落としているだけかもしれません。

物差しの違いは、のれんではなかった

7月に私はこう書きました。IFRSではのれんを毎年償却しなくなるから、利益率はむしろ上がる方向に働くのではないか、と。逆でした。 IFRSのほうが利益は小さく出ています。

有価証券報告書に、前期(2025年5月期)ぶんの調整表が載っています。日本基準の利益剰余金をIFRSに直すとき、何がいくら動いたか、という表です。単位は千円。

項目金額
リース△1,189
有形固定資産+7,520
法人所得税+22,133
未払有給休暇△85,846
のれん+11,092
条件付対価△34,231
株式交付費+5,388
新株予約権△144,081
その他+9,318
合計△209,895

のれんは+11,092千円。1,100万円です。7月に「桁が足りない」と書いたところは、合っていました。ただし全体の方向を読み違えていて、実際に効いたのは別の2つでした。

  • 未払有給休暇 △85,846千円。日本基準では負債に立てない、社員が使っていない有給休暇を、IFRSでは負債として認識します。当期末の計上額は140,608千円です。
  • 新株予約権 △144,081千円。ストックオプションを、日本基準の本源的価値ではなくIFRSの公正価値で測り直した差です。

どちらも短信の1ページ目には出てこない種類の数字です。7月にこれを当てるのは無理だったと思いますが、外したことは外しました。

同じ会社の自己資本比率が、73.5%と63.5%で出てくる

物差しが変わるとどれくらい見え方が変わるのか。いちばん分かりやすいのが貸借対照表です。

2026年5月31日日本基準IFRS
総資産10,949百万円12,017百万円
自己資本/親会社帰属持分8,045百万円7,633百万円
自己資本比率73.5%63.5%
1株当たり純資産/持分282.12円267.67円

……同じ日の、同じ会社の数字だ。会社の中で起きたことは何ひとつ変わっていません。それでも自己資本比率は10ポイント違います。

理由は有価証券報告書に書かれています。オフィスの賃貸借です。日本基準では毎月の家賃を費用にするだけですが、IFRSでは借りている場所そのものを「使用権資産」として資産に立て、同じくらいの額を「リース負債」として負債に立てます。この会社の場合、使用権資産が1,335,130千円、リース負債が1,290,698千円、日本基準に比べて増えたと明記されています。

比率を動かしたのは、この使用権資産13億円が資産の側に載ったことです。総資産は10,949百万円から12,017百万円へ増えました。分子のほうは、さきほどの調整のぶんだけ逆に減ります(8,045百万円から7,633百万円へ)。分母がふくらんで、分子が縮む。だから比率は10ポイント落ちます。新しく借金をしたわけでも、株主のお金が出ていったわけでもありません。

営業キャッシュフローも同じ理由で動いています。日本基準の2,952百万円が、IFRSでは3,334百万円。差の382百万円は、家賃の支払いが営業から財務へ移った分です。財務キャッシュフローは△1,328百万円から△1,711百万円へ、ほぼ同じだけ悪くなっています。会社から出ていく現金の総額は1円も変わっていません。

数字を比べるときは、どちらの物差しで測ったものか先に確かめる必要があります。この会社は2026年5月期を境に物差しを替えたので、これから1年は特にそうです。

宿題2:税負担が9ポイント下がった理由は、表の一行だった

7月に、純利益が7割増えた理由の3割は税率の低下で、その理由は短信に書かれていない、と書きました。その答えが、有価証券報告書に載っていました。

2025年5月期2026年5月期
法定実効税率30.62%30.62%
留保金課税+9.85%
税額控除△5.81%△5.07%
交際費等+0.37%+0.32%
株式報酬費用+0.99%+1.24%
新株予約権戻入益の取消+0.73%
その他+0.58%+0.15%
負担税率37.34%27.25%

法定実効税率は動いていません。30.62%のままです。10.09ポイント下がったうちの9.85ポイントが、留保金課税がゼロになったことで説明できます。

留保金課税というのは、特定の同族会社が利益を配当せずに社内にためこんだとき、通常の法人税とは別にかかる税金です。かかるのは、1つの株主グループが議決権の50%超を持っている会社です。

有価証券報告書は、なぜこれが消えたのかを書いていません。先に、別の線を消しておきます。資本金は1,195,288千円。資本金1億円以下の中小法人なら留保金課税は原則かかりませんが、この会社は約12億円なので、そちらでは説明がつきません。

そのうえで、同じ書類の中に事実が2つ並んでいます。

  • 2026年5月31日時点の大株主は、EMMA&KEITO株式会社が30.68%、輪島総介氏が17.32%。合わせて48.00%です。書類は別の箇所でも「輪島総介及び同氏の資産管理会社であるEMMA&KEITO」の合計を、提出日現在で48.0%と書いています。50%を、2ポイント下回ります。
  • 2026年4月30日付で、東証グロース市場からプライム市場へ移りました。

50%を超えていれば留保金課税がかかり、超えていなければかからない。持分が48.0%まで下がっている――この2つを結びつけているのは私であって、会社ではありません。判定は議決権の数で行うので、上の株数の割合とは厳密には別ものですし、ほかの説明があるかもしれません。ただ、表の上でこの一行が消えていることと、持分が線の手前にあることは、どちらも同じ書類に印字されています。

金額にすると小さくありません。仮に前期と同じ9.85%が今期もかかっていたら、税金が3億9千万円ほど増えていた計算になります(私の掛け算です)。7割増えた純利益のうち、それだけの額は、会社の稼ぐ力とは別のところから来ています。

ちなみに来期予想の税率は、逆に上がる前提です。税引前利益4,830百万円に対して、親会社帰属当期利益は3,381百万円。割るとちょうど70.0%で、残りの30.0%を税金として置いていることになります(これは私の割り算です)。実績の27.25%ではありません。会社自身も、今期の27.25%を恒久的なものとは見ていないようです。

宿題3:コンサルタントは178人から203人になった

7月に読み取れなかった人員数が、有価証券報告書に載っていました。会社が自分で重要指標として並べている4つです。

指標2025年5月期2026年5月期
コンサルタント人員数(調整後)178人203人
コンサルタント平均年収20,120千円20,047千円
JI売上高比率43.6%59.9%
AI関連売上高比率30.0%49.2%

ここが、この決算のいちばん大事なところだと思います。

人は14.0%しか増えていないのに、売上は39.4%増えました。

1人あたりの売上は、46.4百万円から56.7百万円へ増えました。伸び率は22.3%です(私の割り算です)。そのあいだ、コンサルタント1人あたりに払っている平均年収は20,120千円から20,047千円へ、わずかに下がっています。

売る値段が2割上がって、仕入れ値は横ばい。これが利益率36%の中身です。会社は「“人の頭数=売上”というビジネスモデルからの脱却を目指しております」と書いていますが、今期の数字は実際にそうなっています。

問題は、これがどこまで続くかです。会社は「当面は同ペースでの採用を継続」と書いています。年25人ペースなら来期は228人あたり。その228人で16,100百万円を売るには、1人あたり70.6百万円が要ります。今期の56.7百万円から、さらに24.5%です(これも私の計算です)。

利益率が4.8ポイント落ちる前提と、この数字は、たぶん同じことを別の側から見たものです。

AI関連売上高49.2%の中身

ひとつ、読み方に注意が要る数字があります。

AI関連売上高比率が30.0%から49.2%へ。金額では2,477,993千円から5,662,694千円です。売上の半分がAI関連、と読めます。

有価証券報告書に定義が書いてあります。「①提案書の検討事項でAIに言及しているもの、又は②報告書などでAIの検討が含まれているプロジェクト」。提案書か報告書のどこかでAIに触れていれば、そのプロジェクトの売上は全額がここに入ります。

一方、この会社にはAI事業というセグメントがあり、そちらの外部顧客向け売上高は405,047千円です。全体の3.5%です。

どちらの数字も嘘ではありません。ただ、49.2%のほうは「AIの話が出た仕事」の比率であって、AIを売った金額ではありません。ここを混ぜて読むと、会社の形を取り違えます。

7月に書いた読みは、当たっていた

7月に、顧客の入れ替わりの速さについて書きました。前年の筆頭顧客が1年で線を割っている、本田技研も減っているようだ、と。実数が出ました。単位は千円。

顧客2025年5月期割合2026年5月期割合
トヨタ自動車571,9446.93%2,313,70020.10%
本田技研工業1,274,61815.4%875,7077.61%
株式会社MTG983,57711.9%550,5054.78%

トヨタが1年で4.0倍。本田技研は31.3%減、MTGは44.0%減です(倍率と減少率は私の割り算です)。7月に「こちらは減っています」と書いたのは、合っていました。

上位5社で48.3%、上位10社で65.9%。トヨタ1社で売上の5分の1です。

もう1社、株式会社モルテンの名前が9.3%で挙がっています。10%の線をわずかに下回る位置です。

12月1日に、社名が変わります

有価証券報告書の後発事象に載っています。2026年7月15日の取締役会で決議済み。

2026年12月1日付で会社分割により持株会社体制へ移行し、商号を「WAOホールディングス株式会社」に変更します。事業は承継会社へ移り、上場は持株会社の側で維持されます。

証券コード277Aはそのままですが、来期の決算からは連結の形が変わります。

私はどう読んだか

7月の記事は、答えの半分を8月26日に持ち越しました。その半分は返ってきました。

良かったのは、人を14%増やして売上を39%伸ばした、その1点です。これは物差しの話ではありません。日本基準で読んでもIFRSで読んでも、売上収益は同じ11,512,844千円です。1人あたりの生産性が2割上がったのは、実際に起きたことです。

宿題が残るのは、来期の4.8ポイントです。物差しを差し引いてなお、会社は自分で利益率が落ちる予想を出していますが、その理由は有価証券報告書にも決算短信にも書かれていません。人を年25人ずつ増やしながら、1人あたりの売上をさらに24%上げる。予想はそういう形をしています。だとすると、増えた人がすぐには売上にならない時期のコストを見ているのかもしれません。ただしこれは私の想像で、書類の裏づけはありません。

もう一つ、留保金課税の9.85ポイントです。消えた理由が持分比率にあるとすれば、稼ぐ力とは関係のないところで税金が4億円近く軽くなった、ということになります。来期の予想が30.0%で置かれているのは、会社もそこを当てにしていない、という読み方ができます。

トヨタ20.1%という数字は、7月に想像していたより大きいものでした。1年前は6.93%だった相手が、いまは売上の5分の1です。深く入り込む商売なので、集中そのものは宿命だと思っています。心配なのは、入れ替わりの速さのほうです。伸びているうちは長所で、止まったときは短所になります。この会社を見るときは、来期以降もこの1行を毎回確かめることになると思います。

私の読み違いかもしれません。

出典:有価証券報告書 第11期(2026年8月26日提出、EDINET 書類管理番号 S100YYQX)/2026年5月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(2026年8月26日)/2026年5月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年7月15日)グロービング株式会社 https://www.globe-ing.com/

来期の営業利益率が4.8ポイント落ちる前提の理由は、有価証券報告書からも決算短信からも読み取れませんでした。決算説明会の資料や質疑応答には書かれているのかもしれませんが、そちらは読んでいません。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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