玄関に届くまでの間にいる会社
佐川急便を傘下に持つ持株会社です。通販で注文した品物が玄関に届くまでの間に、この会社のトラックと配達員がいます。運ぶのは個人宛ての荷物だけではありません。企業間の荷物、冷蔵や冷凍が要る食品、海外との航空・海上の輸送、倉庫の運営まで手がけています。
前の期には海外の航空貨物の会社をグループに入れ、国際物流の規模が一段大きくなりました。
私が気にしているのは、宅配の値段と個数です。人件費と燃料費が上がる中で、荷物1個にいくら払ってもらえているか。8月7日に出た第1四半期決算を、そこから読みました。
この決算で何が起きたか
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 4,473億600万円 | 3,674億400万円 | +21.7% |
| 営業利益 | 200億6,200万円 | 174億5,400万円 | +14.9% |
| 経常利益 | 205億5,100万円 | 178億7,800万円 | +15.0% |
| 純利益 | 122億6,400万円 | 101億5,000万円 | +20.8% |
数字だけなら文句のない四半期です。ただ、増えた売上の大半は、前年の同じ時期にはまだグループにいなかった会社の分でした。
増えた売上のうち、宅配の分はどれだけか
| セグメント | 営業収益(今回) | 増減率 | 営業利益(今回) | 前年同期 |
|---|---|---|---|---|
| デリバリー(宅配) | 2,684億6,200万円 | +6.7% | 126億8,900万円 | 137億300万円 |
| ロジスティクス | 510億9,900万円 | △0.5% | 19億3,500万円 | 19億7,400万円 |
| グローバル物流 | 1,127億2,800万円 | +127.9% | 27億2,400万円 | 1億3,300万円 |
| 不動産 | 17億4,600万円 | △2.0% | 12億4,500万円 | 12億3,200万円 |
| その他 | 132億6,900万円 | +1.4% | 7億5,900万円 | 6億9,000万円 |
グローバル物流が前年の2倍以上になっています。会社側はモリソン社の連結効果と、航空・海上の運賃が上向いたことを理由に挙げています。
全体で増えた売上は799億200万円です。今回の4,473億600万円から前年の3,674億400万円を引いた数字です。そのうちグローバル物流の増加分は632億7,300万円でした。今回の1,127億2,800万円から前年の494億5,500万円を引いています。増えた売上の8割が、この事業から出ていることになります。
主力の宅配は6.7%の増収でした。取扱個数は3億2,600万個から3億4,900万個へ、6.8%増えています。個数の伸びと売上の伸びがほぼ同じですから、1個あたりの値段は前年からほとんど動いていません。小型の荷物が増えて平均単価は前年を下回った、と短信の4ページ目にも書かれています。
宅配の営業利益は、1割弱減っています
会社の説明は、子会社で賞与の支給方法を見直した結果、賞与引当金の計上が上期に偏ったというものです。計上時期の差による一時的な影響で、それを除けば前年並みだ、と続きます。
貸借対照表を開くと、賞与引当金は3か月で201億6,100万円から342億600万円へ増えています。増えた額は140億4,500万円です。前年の同じ時期の増え方は短信には載っていないので、このうちいくらが「偏った分」なのかは分かりません。減益幅は約10億円ですから、偏りもその程度と受け取るしかありません。
引っかかったのは「前年並み」のほうです。荷物が7%近く増えて、費用を引いたら利益は前年と同じ。増えた荷物の分は、上がった人件費と外注費と燃料費に食われた、ということになります。……前年並みは、良い話ではない。
純利益の伸びが、営業利益より大きい理由
営業利益は+14.9%なのに、純利益は+20.8%です。特別損失には損害賠償金10億9,900万円が新しく載っているので、営業利益より下の段では、減る要因はあっても増える要因はありません。差を作ったのは法人税等でした。前年75億1,700万円から今年69億6,900万円へ、税引前利益が増えたのに減っています。
税引前利益に対する割合にすると、前年が約42%、今年が約36%。これは私の割り算です。四半期の税金は年間の見積り税率で計算する、と注記にあるので、その見積りが下がったのだと思います。ただ、なぜ下がったかは短信には書かれていません。
損害賠償金のほうは、注記に「連結子会社において発生した輸送貨物に係る顧客への損害賠償金」とあるだけです。10億円は宅配の営業利益の1割近い額です。
会社はどう説明しているか
費用の増え方について、会社は正直に書いています。取扱量の増加に加えて、ベースアップと委託単価の引き上げで人件費と外注費が増えた。中東情勢で原油が上がり、燃料費と協力会社への燃料サーチャージが増えた。大手EC事業者が自前の配送網を広げていて競争は厳しい、とも書いています。
そのうえで、適正運賃の価格交渉は堅持している、越境ECの単価は前年より改善した、と続きます。ここは、そのままには受け取っていません。理由は、単価が改善したのは越境ECだけで、宅配全体の平均単価は前年を下回っている、と同じ段落にあるからです。
通期予想に対して、どこまで来ているか
営業利益の進み具合は、通期予想970億円に対して2割ほどです。売上は4分の1強まで来ていますが、利益はそこに届いていません。理由は、増えた売上が利益率の低いグローバル物流だからです。
ただ、会社自身が上期を営業減益と見込んでいます。表紙の第2四半期累計の予想は営業利益360億円で、前年同期比△6.7%です。そこから割り戻して並べると、こうなります。
| 営業利益 | 第1四半期 | 7月から9月 | 上期 | 下期 | 通期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 前期 実績 | 174億5,400万円 | 約211億円 | 約386億円 | 約516億円 | 約902億円 |
| 今期 会社予想 | 200億6,200万円 | 159億3,800万円 | 360億円 | 610億円 | 970億円 |
約の付いた数字は、表紙の増減率(上期△6.7%、通期+7.5%)から私が割り戻したものです。今期の7月から9月は上期予想から第1四半期を引いたもの、下期は通期予想から上期予想を引いたもので、どちらも私の引き算です。
上期に費用が寄って下期に軽くなる、という会社の説明と、この置き方は合っています。下期を前期より約94億円多く見込んでいるのは、引当金の偏りが戻る分だと考えれば筋が通ります。
合わないのは7月から9月です。第1四半期は前年より26億円多く稼いだのに、次の3か月は前年より約52億円少ない数字です。賞与引当金の減益幅は約10億円でしたから、それだけでは埋まりません。何か悪い材料を見込んでいるはずですが、それが燃料なのか、単価なのかは短信には書かれていません。
私はどう読んだか
増収2割の主役は、買った会社だと考えています。理由は、増えた売上の8割がグローバル物流で、宅配は個数が増えた分だけ売上が増え、利益は前年と同じところに戻っているからです。
会社の説明と通期の置き方に、矛盾はありません。上期減益を先に書いてある以上、予想の据え置きも当然です。それでも7月から9月を前年より薄く置いた理由が、私には分かりませんでした。心配性なので、次の短信でその3か月の数字を最初に確かめます。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260807/140120260807514026.pdf
損害賠償金10億9,900万円が、どの子会社で何を運んでいて起きたものなのかは、読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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