旅客機のエンジンを、飛び続ける間も支える会社
飛行機に乗るとき、翼の下のエンジンを誰が作ったのかを気にする人は、あまりいません。IHIは、世界の旅客機に積まれるエンジンの開発と量産に、共同事業の一員として加わっています。
エンジンは納めて終わりではなく、飛び続けるかぎり部品の交換と修理が必要です。その整備の仕事が、いまの稼ぎの中心にあります。
ほかにも、防衛向けの機器、ロケット、原子力発電所の機器、橋や水門、トンネルを掘る機械、車のターボまで手がけています。名前を見かける機会は少なくても、移動と電気の裏側にいる企業です。
営業利益は前年同期の1.6倍を超えました
11月4日に出た中間決算です。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高(売上収益) | 7,793億1,800万円 | 7,136億5,100万円 | +9.2% |
| 営業利益 | 1,149億7,900万円 | 694億4,900万円 | +65.6% |
| 税引前中間利益 | 1,227億5,000万円 | 747億900万円 | +64.3% |
| 純利益(親会社の所有者に帰属) | 849億9,400万円 | 559億1,200万円 | +52.0% |
国際会計基準の短信には経常利益の欄がないので、税引前中間利益を入れました。表だけなら、文句のない決算です。
増益の柱は、江東区の不動産でした
どの事業が稼いだのかを知りたくて、事業別の表まで進みました。
| 営業損益 | 前年同期 | 今回 |
|---|---|---|
| 資源・エネルギー・環境 | △1億3,400万円 | 7億5,000万円 |
| 社会基盤 | △33億2,700万円 | △44億2,000万円 |
| 産業システム・汎用機械 | 170億3,200万円 | 114億600万円 |
| 航空・宇宙・防衛 | 547億3,600万円 | 722億6,300万円 |
| その他 | 68億7,700万円 | 457億5,000万円 |
| 調整額 | △57億3,500万円 | △107億7,000万円 |
| 連結 | 694億4,900万円 | 1,149億7,900万円 |
引っかかったのは、航空ではなく「その他」です。この区分には都市開発が含まれ、短信の説明文には東京都江東区の不動産の一部を譲渡したとあります。
説明会資料の数字では、不動産売却益は426億円です。これを除いた営業利益は723億円で、売上に対する利益率は前年とほぼ同じでした。
……本業は横ばいなのか。
不動産を抜いた数字にも、譲渡の損益が混じっていました
ここで止めずに、損益計算書へ戻りました。
| 前年同期 | 今回 | |
|---|---|---|
| 売上総利益 | 1,688億2,300万円 | 2,041億4,600万円 |
| 販売費及び一般管理費 | 1,142億3,100万円 | 1,186億4,700万円 |
| その他の収益 | 217億6,800万円 | 470億9,800万円 |
| その他の費用 | 69億1,100万円 | 176億1,800万円 |
売上総利益から販管費を引くと、前年同期は約546億円、今回は約855億円です。309億円増えた、というのが私の引き算です。横ばいどころではありません。
食い違いの原因のひとつは、その他の費用にありました。短信の追加情報によると、ドイツの子会社を譲渡することを決め、それに関わる127億4,000万円をこの科目に含めています。海外事業の構造改革の一環です。
説明会資料には、不動産に加えて為替と事業譲渡の損益も除いた「一時要因除く営業利益」が載っています。今回の事業譲渡損益は140億円の損失で、前年は113億円の利益でした。これらを除くと、営業利益は521億円から707億円へ増えています。増加額は186億円です。
会社が作った数字なので、検算しました。私の309億円から引くのは、説明会資料にある為替影響の差134億円です。結果は175億円でした。186億円に近いところへ収まりました。
増益455億円のうち、事業そのものの増加は4割ほどです。これは186億円を455億円で割った数字です。残りは、不動産と為替の押し上げから、事業譲渡の損益の差を引いた分になります。
航空の増益にも、円安が入っていました
航空・宇宙・防衛の増益は175億円ほどです。説明会資料を開くと、そのうち135億円が、売上にかかる為替の平均レートの差でした。1ドルは146円57銭から160円3銭へ動いています。
増益の175億円から、この135億円を引きます。残りは40億円です。この区分の販管費などは63億円増えているので、その負担を吸収したあとの数字になります。
需要が弱いわけではありません。説明会資料では、整備費用を引いたスペアパーツの売上収益が、ドル建てで2割増えています。ドルで測った伸びなので、円安では説明できません。
営業CFのマイナスは前年と同じ形でも、中身は違いました
| 前年同期 | 今回 | |
|---|---|---|
| 営業キャッシュ・フロー | △571億3,000万円 | △650億1,800万円 |
| 棚卸資産及び前払金の増減 | △1,016億2,700万円 | △974億900万円 |
| 営業債務の増減 | 250億3,200万円 | △536億1,300万円 |
| 投資キャッシュ・フロー | △229億8,100万円 | 89億7,500万円 |
| コマーシャル・ペーパーの純増 | 1,360億円 | 600億円 |
説明会資料の通期見通しでは、営業CFは1,000億円です。上期に650億円のマイナスを出しているので、それを取り戻す分も含めて、下期に1,650億円が必要になります。
前年はどうか。見通しは前年より213億円少ないので、前年通期は1,213億円です。上期の571億円のマイナスを取り戻す分も含めて、前年の下期は1,784億円でした。下期に現金が入る形は前年も同じなので、上期のマイナスだけでは騒ぎません。
違うのは営業債務です。前年は現金を250億円ほど増やした項目が、今回は536億円減らす側に回りました。棚卸資産は半年で864億7,100万円増え、説明会資料は事業の成長に伴う動きだと説明しています。
不動産の売却収入517億7,600万円は投資CFに入りますが、営業CFのマイナスを埋めきれず、コマーシャル・ペーパーで手当てしています。一方で親会社所有者帰属持分比率は、26.9%から28.4%へ改善しました。
短信の増益理由に、為替は出てきません
短信の4ページ目は、増益の理由を3つ挙げています。民間向け航空エンジンの需要拡大、国内のカーボンソリューションと原動機のライフサイクルビジネス拡大、そして不動産譲渡利益です。不動産を隠していないので、ここは受け取ります。
ただ、短信のこの増益の説明文に為替は書かれていません。説明会資料では134億円の差が要因の一つに並んでいます。短信の説明文だけで判断すると、需要の力を大きく見積もることになります。
業績の表に出ない話も、同じページにあります。子会社のIHIエアロスペースが、事実と異なる報告に基づく費用請求を理由に、JAXAから5か月の競争参加資格停止処分を受けました。処分は11月1日に終わり、影響があれば見通しへ反映するとしています。金額は短信には書かれておらず、説明会資料も25ページまでの範囲では触れていません。
8月からの上方修正200億円のうち、130億円は為替でした
| 通期予想 | 中間実績 | 進捗率 | 残り6か月 | |
|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1兆8,800億円 | 7,793億1,800万円 | 約41% | 約1兆1,006億円 |
| 営業利益 | 2,700億円 | 1,149億7,900万円 | 約43% | 約1,550億円 |
| 税引前利益 | 2,600億円 | 1,227億5,000万円 | 約47% | 約1,372億円 |
| 純利益 | 1,850億円 | 849億9,400万円 | 約46% | 約1,000億円 |
約の付いた数字は、短信の通期予想と中間実績から私が計算したものです。
営業利益の進捗率は半分に届いていません。ただ、前年同期の694億円を説明会資料の前年通期1,655億円で割ると、前年も4割強でした。下期に利益が偏る形は同じです。
通期の不動産売却益は930億円の予定で、上期に426億円を計上しました。差し引くと、504億円残っています。残り6か月に必要な営業利益は約1,550億円なので、その3分の1ほどは不動産です。
説明会資料の要因別の表では、今回の上方修正200億円のうち130億円が為替です。ライフサイクルビジネスの拡大が50億円、コスト構造の強化が20億円と続きます。
短信は修正の理由を、民間向け航空エンジン事業やライフサイクルビジネスの実績などと書いています。下期の前提は1ドル150円で、8月の145円から見直しています。それでも上期の平均より10円ほど円高です。配当予想は2円増えて、年間25円になりました。
事業も伸びた決算だと考えています
不動産と為替で膨らんだだけの決算か、事業も伸びた決算か。私は後者の見方をしています。理由は、損益計算書から引き算した数字と一時要因を除いた数字が近いところに収まり、スペアパーツもドル建てで増えているからです。
ただし、65.6%増という強さでは受け取っていません。心配性なので、来期も同じ規模の不動産売却益が続くのかが先に気になります。短信を読むかぎり、それは見通せません。次の決算では、棚卸資産と営業CFの動きを確かめます。この先どうなるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
事業譲渡損益の140億円と、短信にある127億4,000万円の差が何なのかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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