日本郵船(9101)2027年3月期 中間決算分析・続報――現金の入りが気になる

日本郵船(9101)2027年3月期 中間決算分析・続報――現金の入りが気になる 日本株

はじめに

スーパーに並ぶ食品の原料、ガソリンスタンドの燃料、家電量販店の製品。日本で手に入るものの大半は、どこかの港で船に積まれてやってきます。日本郵船は、その船を動かしている会社です。

運ぶものによって船が違います。日用品や部品はコンテナ船、完成した自動車は専用船です。鉄鉱石や石炭や穀物はばら積み船、原油や液化ガスはタンカーで運びます。港の荷役、倉庫、航空貨物まで含めた物流の会社でもあります。世界のどこかでモノの流れが変わると、その変化がそのまま決算の数字になります。

この会社の決算を読むのは2回目です。前回は2026年8月5日に出た第1四半期の短信で、上方修正の前提に「ホルムズ海峡封鎖が2026年9月末まで継続」と書かれていたことに引っかかりました。キャッシュ・フロー計算書が作られておらず、現金の出入りを確かめられなかった、とも書いています。前の記事

この中間決算で何が起きたか

2026年11月5日に出た、2027年3月期の中間決算です。

項目今回前年同期増減率
売上高1兆5,050億2,500万円1兆1,821億100万円+27.3%
営業利益1,148億7,600万円598億4,900万円+91.9%
経常利益2,132億6,200万円1,186億3,600万円+79.8%
純利益2,034億8,100万円983億3,100万円+106.9%

営業利益率は5.1%から7.6%へ上がりました。中間配当は前回予想から45円引き上げて165円になります。年間では330円になる予定です。

私がいちばん長く止まったのは、この表の下にある営業外収益の欄でした。

経常利益の半分が、持分法による投資利益でした

営業利益と経常利益の差の大半は、営業外収益にある持分法による投資利益1,120億9,900万円です。前年同期は626億7,600万円でした。

持分法による投資利益は、出資している会社の利益を、持ち株の割合だけ自分の利益として足すものです。この1,120億円のうち805億円がコンテナ船の共同運航会社ONE社からの分だと、4ページ目に書いてあります。前回の短信では持分法全体で165億円、ONE社からの分は13億円でした。

四半期ごとの業績が20ページ目に並んでいます。

第1四半期第2四半期
営業利益577億800万円571億6,700万円
経常利益712億2,200万円1,420億4,000万円

ここまでは損益計算書と四半期推移表の数字です。本体の営業段階は7月から9月に伸びておらず、増えたのは出資先の利益を取り込む部分だった、と私は受け取りました。前回「コンテナの稼ぐ力が細った、とも読める」と書いたほうは、半年で裏返りました。

現金の受け取りが、前年の1割以下になっています

前回は作られていなかったキャッシュ・フロー計算書が、今回は13ページ目から載っています。

営業活動によるキャッシュ・フローは1,191億3,100万円。前年同期は2,922億4,200万円です。……利益が倍で、現金は半分以下。これは変だ。

内訳を追うと、減っているのは一か所だけです。「利息及び配当金の受取額」が前年同期の1,938億7,600万円から172億9,600万円へ落ちています。その上の小計は、1,331億7,100万円から1,578億4,100万円へ増えています。

持分法による投資利益は、会計の上では利益になりますが、現金は出資先の金庫の中にあります。配当として払われて初めてこちらに入ります。前年の上期はその配当が大きく入っていて、今年は入っていません。理由は決算短信には書かれていません。

投資活動によるキャッシュ・フローは3,473億9,300万円の出。船を中心とする固定資産の取得に2,295億6,100万円、子会社株式の取得に784億3,500万円を使っています。

埋めたのは借入です。財務活動によるキャッシュ・フローは2,815億7,200万円の入りで、うち短期借入金の純増が2,455億1,300万円。短期借入金の残高は3月末の1,551億5,600万円から4,220億7,300万円へ増えました。有利子負債の合計は1兆5,532億1,200万円です。

自己資本比率56.3%、D/Eレシオ0.49と、7ページ目にあります。土台は厚い。ただ、利益が倍になった半年に、投資の原資を短期の借入で手当てしている形です。

16ページ目には、NSユナイテッド海運を公開買付けで子会社にする話が載っています。取得原価は約1,670億円の予定で、うち現金での支払いが約1,200億円。完了は2027年4月の予定です。この支出は、まだこの半年の数字のどこにも入っていません。

封鎖に押し上げられた事業と、封鎖に削られた事業

5ページ目のセグメント別の経常利益です。会社が億円で書いているものをそのまま並べます。

事業前年同期今回
定期船333億円979億円
物流62億円△8億円
自動車490億円351億円
ドライバルク△15億円297億円
エネルギー303億円454億円
その他33億円82億円

自動車事業だけが大きく減っています。会社は、封鎖に伴うルート変更、燃料費の増加、港湾混雑による運航コスト、傭船コストの急騰を理由に挙げています。同じ封鎖が、タンカーを押し上げながら、自動車船を削っています。

物流は前回が第1四半期だけで24億円の赤字で、今回の上期は8億円の赤字です。その差の分だけ、7月から9月の3か月は黒字に戻ったことになります。これは私の引き算です。

会社はどう説明しているか

7ページ目。前回「9月末まで」だった前提が、「ホルムズ海峡封鎖が2027年3月末まで継続することを前提として策定しています」になりました。そのうえでコンテナ船については「スエズ運河経由の航行が一部段階的に再開することを前提としています」とも書いてあります。封鎖は続くが、スエズは少し戻る。その組み合わせが今回の予想の土台です。

外部の出来事で儲かっていることを、会社は前回も今回も隠していません。ここは素直に受け取ります。気になるのは、説明のしかたではなく、その前提がいつまで続くのかです。

通期予想に対して、どこまで来ているか

10月29日に引き上げたものを、この短信が追認しています(8ページ目)。

項目前回予想今回予想
売上高2兆8,810億円3兆円
営業利益1,850億円2,100億円
経常利益2,500億円3,350億円
純利益2,400億円3,300億円

通期予想から上期の実績を引くと、残り半年は営業利益951億2,400万円、経常利益1,217億3,800万円です。上期の経常利益2,132億円に対して、下期は1,217億円。封鎖が3月末まで続く前提なのに、下期は上期の6割ほどを見込んでいることになります。私の引き算です。

前年の下期の経常利益は924億9,800万円でした(20ページ目の四半期推移を足しました)。前年より増えて、上期より減る。それが会社の組み立てです。

配当は年間330円。予想1株利益817.36円に対して4割ほどで、8ページ目にある「連結配当性向40%を目安」という方針の内側に収まっています。

私はどう読んだか

前回、私は慎重なほうの見方をしました。封鎖が解ければ剥落する、と書きました。この半年については外れました。封鎖は続き、前提は期末まで延び、会社は予想を二度引き上げています。

それでも今回も慎重です。引っかかっている場所が変わりました。理由は、経常利益の半分を占める持分法による投資利益に、現金が伴わないからです。その出資先からの配当は、前年の1割以下しか入っていません。そのあいだに船と買収へ現金を出し、短期の借入で埋めています。

ONE社の利益が配当になって戻ってくるなら、この構図は時間で解けます。戻らないまま封鎖が終われば、利益も現金も一緒に減ります。私は後者のほうを重く見ています。理由は、配当を出すかどうかを決めるのは出資先であって、この会社の側ではないからです。来年4月には買収の現金支払いも控えています。確かめる場所は、下期のキャッシュ・フロー計算書にある利息及び配当金の受取額です。

出典:決算短信(会社発表)

https://www.nyk.com/ir/library/highlights/2026/__icsFiles/afieldfile/2026/11/05/261105_tanshin_jp.pdf

利息及び配当金の受取額が前年同期の1割以下に減った理由は、決算短信からは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました