赤いきつねの会社が、海の向こうで売っているもの
スーパーの棚に並ぶ「赤いきつねうどん」と「緑のたぬき天そば」の会社です。袋麺の「マルちゃん正麺」もここが作っています。お湯を沸かす気力しか残っていない夜に、戸棚から出してくるあの手の品物です。私も決算期には世話になっています。
ただ、カップ麺だけではありません。もとは水産の会社で、いまも魚の加工品を扱っています。生麺、冷凍食品、フリーズドライ、パックのご飯、弁当や惣菜、冷蔵倉庫まであり、食卓の裏側をかなり広く受け持っています。
そして米国とメキシコでも、カップ麺と袋麺を売っています。日本の夕食の話だと思って短信を開くと、話の中心は海の向こうにありました。
増収増益で、利益の伸びは売上の倍以上です
11月4日に出た中間決算です。4月から9月までの半年分を、前年同期と並べます。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,740億6,400万円 | 2,560億7,400万円 | +7.0% |
| 営業利益 | 458億2,500万円 | 397億7,200万円 | +15.2% |
| 経常利益 | 503億500万円 | 437億8,400万円 | +14.9% |
| 純利益 | 371億5,100万円 | 333億2,500万円 | +11.5% |
表紙だけなら、文句の付けようがありません。
増益の全額を、海外即席麺が稼いでいます
事業ごとの表まで行くと、増益の出どころがはっきりします。
| 事業 | 売上高 | 前年同期比 | セグメント利益 | 前年同期の利益 |
|---|---|---|---|---|
| 海外即席麺 | 1,329億1,200万円 | +14.7% | 357億1,100万円 | 289億500万円 |
| 国内即席麺 | 479億2,800万円 | +3.4% | 38億3,100万円 | 36億6,500万円 |
| 低温食品 | 322億2,200万円 | △0.8% | 31億5,300万円 | 47億5,400万円 |
| 水産食品 | 153億4,100万円 | △2.8% | 9億4,500万円 | 8億9,800万円 |
| 加工食品 | 106億1,300万円 | △2.0% | △4,500万円 | △5億6,200万円 |
| 冷蔵 | 140億8,500万円 | +4.2% | 18億9,400万円 | 15億5,200万円 |
| その他 | 209億6,000万円 | △1.5% | 8億3,400万円 | 8億9,600万円 |
全社の営業利益は、前年同期より60億5,300万円増えました。海外即席麺のセグメント利益は、68億600万円の増加です。60億5,300万円から68億600万円を引きます。残りの事業は調整額まで含めて7億5,300万円の減益になります。
引っかかったのはここです。増益の全額を、ひとつの事業が稼いでいます。海外即席麺は売上では全社の半分弱ですが、セグメント利益は全社の営業利益の8割近くにあたります。
大きく減ったのは低温食品で、16億100万円の減益でした。国内即席麺は増益ですが、増えた額は1億6,600万円にとどまります。
円安を除いても、海外の増益は残りました
そうなると、海外の増益がどこまで円安の分なのかが気になります。期中平均レートは、1米ドル146.04円から159.38円へ動きました。説明文は「円安の影響もあり」と書くだけで、その金額は決算短信には載っていません。
なので電卓を叩きました。159.38円を146.04円で割ります。答えは約1.091倍です。前年同期の数字をこの倍率で膨らませれば円安だけの姿になり、今回との差が為替以外の増加分です。
| 海外即席麺 | 前年同期 | 円安だけの姿 | 今回 | 為替以外の増加 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,158億3,900万円 | 約1,264億円 | 1,329億1,200万円 | 約65億円 |
| セグメント利益 | 289億500万円 | 約315億円 | 357億1,100万円 | 約42億円 |
約の付いた数字は、平均レートの比から私が出したものです。全額を米ドル建てとみなした粗い計算で、メキシコの通貨の動きは入っていません。
売上の増加170億7,300万円のうち、為替以外の約65億円は4割弱です。ところが利益の増加68億600万円では、約42億円、6割ほどが為替以外でした。セグメント利益率も高まっています。前年同期は289億500万円を1,158億3,900万円で割ります。答えは約25%です。今回は357億1,100万円を1,329億1,200万円で割ります。答えは約27%です。ここまでは短信の数字からの計算です。
換算の倍率は売上にも利益にも同じようにかかるので、利益率の改善は円安では説明できません。販売の伸びは控えめで、値上げと採算の改善が利益を押し上げた、と私は読みました。
現金が減った分は、自己株式の取得でした
いつものようにキャッシュ・フロー計算書まで行きました。増益なのに現金が入っていない、という形ではありません。
| 今回 | 前年同期 | |
|---|---|---|
| 営業キャッシュ・フロー | 428億1,400万円 | 330億900万円 |
| 有形固定資産の取得 | △102億2,000万円 | △207億8,200万円 |
| 配当金の支払 | △136億2,700万円 | △119億4,700万円 |
| 自己株式の取得 | △275億200万円 | △93億5,400万円 |
営業キャッシュ・フローは3割増えています。自己株式の取得は前年同期の約3倍に増えましたが、配当と合わせても営業キャッシュ・フローの内側に収まります。設備投資まで足すと、少しはみ出す計算です。
現金及び預金は半年で111億4,900万円減り、2,506億3,400万円です。一方、短期借入金は4億3,700万円しかありません。支払利息9,100万円に対して受取利息は35億7,000万円あり、これが経常利益を営業利益より大きくしている理由の一つです。
計算書の末尾にある資金は333億4,500万円と小さく、現金及び預金との差の多くは定期預金だと考えています。理由は、投資活動の欄で預入と払戻の額がどちらも1,500億円を超えているからです。
予想を変えない理由は「想定していた範囲内」でした
事業ごとの説明はかなり具体的です。米国は7月以降カップ麺も袋麺も前年を上回り、メキシコは4月の価格改定後も堅調で、国内は7月にカップ麺の一部を価格改定しました。低温食品の減益は、原材料費、人件費、減価償却費の増加が理由だ、と書いています。数字の動きと合っているので、ここはそのまま受け取ります。
留保を付けたいのは米国です。「前年を上回る販売」が数量なのか金額なのかは、この文からは分かりません。7月以降と区切っているので、6月までは価格改定の影響が残っていたことにもなります。
一方、通期予想の説明は一文です。上期の業績が想定していた範囲内なので、5月15日の見通しを変えない、と書いています。上期の増益が範囲内なら、次に見る下期の減益も前提に入っていたことになります。
なぜ下期に利益が減るのかは、決算短信には書かれていません。表紙に決算補足説明資料と説明会が「有」とあるので、そちらに理由があるのかもしれませんが、私はまだ読んでいません。
売上は増えるのに、下期の営業利益は約98億円減る計算です
| 通期予想 | 上期実績 | 進捗率 | 下期に必要な額 | 前年の下期比 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,600億円 | 2,740億6,400万円 | 48.9% | 2,859億3,600万円 | +2.0% |
| 営業利益 | 820億円 | 458億2,500万円 | 55.9% | 361億7,500万円 | △21.4% |
| 経常利益 | 885億円 | 503億500万円 | 56.8% | 381億9,500万円 | △24.0% |
| 純利益 | 656億円 | 371億5,100万円 | 56.6% | 284億4,900万円 | △22.8% |
進捗率と下期の額は、表紙の予想と上期の実績から私が割り算と引き算で出したものです。
361億7,500万円は前年の下期より21.4%少ない額です。0.786で割り戻すと、前年の下期の営業利益は約460億円です。そこから約98億円少ない額を、今年の下期に見込んでいることになります。売上のほうは2,859億3,600万円を1.02で割って、前年の下期が約2,803億円です。営業利益率に直すと、こう並びます。
| 営業利益率 | 上期 | 下期 |
|---|---|---|
| 前年 | 15.5% | 約16.4% |
| 今期 | 16.7% | 約12.7%(予想) |
約の付いた数字は、上の金額から私が割り算したものです。
……ここだけ急に低い。売上を伸ばしながら、利益率を前年の下期より4ポイント近く削る前提です。
経常利益と営業利益の差も、同じ向きの前提になっています。上期は503億500万円から458億2,500万円を引きます。差は44億8,000万円です。下期は381億9,500万円から361億7,500万円を引きます。差は20億2,000万円で、半分以下になります。受取利息を生む現金及び預金は、この半年で1割も減っていません。
5月の予想が慎重なまま残っている、と考えています
可能性は2つです。5月の予想が慎重なまま残っているのか、上期に無かった費用や為替の悪化を下期に見込んでいるのか。
私は前者の見方をしています。理由は、利益率をこれだけ削る事情が短信の説明文に見当たらず、並んでいるのは7月以降の米国の回復や国内の7月の価格改定など、下期にも残る話だからです。経常利益と営業利益の差が半分以下になる点も、同じ慎重さに見えます。
ただ心配性なので、悪い材料も2つ書き留めておきます。1つ目は建設仮勘定の425億6,100万円です。設備が動き始めれば減価償却費になり、その費用は上期ですでに85億2,300万円から95億7,400万円へ増えています。
2つ目は為替です。平均レートは前年より円安でも、為替換算調整勘定は3月末の597億8,100万円から567億7,300万円へ減りました。比べる相手が違うので矛盾ではありませんが、海外の資産の円換算額は3月末より目減りしています。営業利益の8割近くにあたる海外の利益も、円に直すときのレートに左右されます。
この先どうなるかは知りません。第3四半期の短信が出たら、利益率をまた割ってみます。
出典:決算短信(会社発表)
海外即席麺の売上のうち、米国とメキシコがそれぞれいくらなのかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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