はじめに
結婚指輪と婚約指輪を売る会社です。アイプリモとラザールダイヤモンドという二つの看板を持っていて、店は駅前のビルの上のほうにあることが多い。普段そこを通っても目に入りません。目に入るのは、結婚が決まったときです。
お客さんは、人生で一度か二度しかこの店に来ません。つまりこの商売は、常連で回りません。その年に結婚する組がどれだけいて、そのうち何組が来店して、ひと組がいくら使うか。売上はこの掛け算で決まります。
指輪は注文を受けてから作ります。店で決めて代金を払い、受け取るのは何週間か先です。だから会社の手元には、まだ渡していない指輪の代金が、常に預かり金として残っています。
売り場は国内と、台湾、中国本土、香港、シンガポール、マレーシア。日本で磨いた売り方をそのまま持っていく形で、海外の店を増やしてきた会社です。
三つとも、過去でいちばん大きい数字になりました
2026年10月15日に出た、2026年8月期の通期決算です。
| 項目 | 今回 | 前期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 315億7,100万円 | 280億200万円 | +12.7% |
| 営業利益 | 39億300万円 | 31億3,200万円 | +24.6% |
| 税引前利益 | 34億6,000万円 | 27億3,200万円 | +26.6% |
| 当期利益 | 23億9,500万円 | 17億8,600万円 | +34.1% |
国際会計基準を使っているので、経常利益の行はありません。代わりに税引前利益を並べています。短信4ページに、2025年3月に出した三か年計画の目標を一年前倒しで達成した、と書いてあります。
営業利益が7億7,000万円増えて、本業の稼ぎは5億4,000万円
損益計算書(短信9ページ)を上から順に引いていきます。売上総利益は191億5,600万円でした。そこから販売費及び一般管理費152億9,400万円を引くと、38億6,100万円になります。前期は売上総利益が180億6,400万円です。販管費は147億4,300万円で、引くと33億2,100万円になります。差は5億4,000万円、1割6分ほどの増加です。
ところが営業利益は、31億3,200万円から39億300万円へ増えています。増えた額は7億7,000万円です。5億4,000万円と7億7,000万円。この2億3,000万円の差はどこから来たのか。損益計算書で両者の間にあるのは、その他の収益とその他の費用の2行だけです。
見ると、その他の費用が3億3,100万円から1億1,400万円へ下がっていました。減った額は2億1,700万円です。その他の収益は1億4,300万円から1億5,600万円へ増えています。こちらは1,300万円の増加です。足して2億3,000万円、ちょうど差が埋まります。
その他の費用の中身は、キャッシュ・フロー計算書(短信12ページ)の減損損失の行から見当がつきます。2億4,800万円から1億700万円へ下がっていました。その差は1億4,100万円です。店や設備の価値を切り下げた損が、前期より少なかったということです。
海外の利益が、売上の伸びより速く増えています
セグメントの表(短信14・15ページ)で引っかかりました。
| 売上(前期) | 売上(今期) | 利益(前期) | 利益(今期) | |
|---|---|---|---|---|
| 国内 | 175億4,200万円 | 202億3,400万円 | 24億9,100万円 | 29億1,600万円 |
| 海外 | 104億6,000万円 | 113億3,600万円 | 6億4,100万円 | 9億8,600万円 |
海外の売上は8億7,600万円増えて、利益は3億4,500万円増えています。……いや、これは速すぎる。
同じ表の下のほうに、減損損失の行がありました。国内は5,600万円から6,200万円でほぼ横ばい。海外は1億9,200万円から4,500万円へ下がっていました。差は1億4,700万円です。海外の利益が増えた3億4,500万円のうち、4割強が減損の減りでした。
海外で、台湾だけが減りました
同じ短信の16ページに、地域ごとの売上が載っています。
| 地域 | 前期 | 今期 |
|---|---|---|
| 日本 | 175億4,200万円 | 202億3,400万円 |
| 台湾 | 40億3,000万円 | 38億200万円 |
| 中国本土 | 42億7,800万円 | 52億3,600万円 |
| その他 | 21億5,000万円 | 22億9,700万円 |
台湾が2億2,800万円減っています。海外で減ったのはここだけです。説明会資料には、台湾の婚姻組数が減った影響だと書かれていました。
結婚指輪は、結婚する人しか買いません。当たり前のことですが、決算の表の上に金額として並ぶと、やはり重いものがあります。国内は客単価を上げて組数の問題を飲み込みましたが、台湾では飲み込みきれなかった、という一行です。
預かり金の増え方が落ちています
税引前利益は7億2,700万円増えました。ところが営業活動によるキャッシュ・フローは、47億500万円から47億4,900万円です。増えたのは4,400万円しかありません。
いちばん効いているのは契約負債です。前期は6億8,700万円増えたのに、今期は2億7,400万円しか増えていません。差し引き4億1,300万円ぶん、現金の入り方が前期より鈍かったことになります。
契約負債は、注文を受けて代金を預かったけれど、まだ指輪を渡していない分です。残高そのものは36億200万円から40億4,100万円へ増えているので、注文が細っているわけではありません。増え方が前期より緩んだ、というところまでが短信から言えることです。
会社はどう説明しているか
粗利が伸びなかった理由を、会社は短信4ページではっきり書いています。プラチナなどの貴金属価格の高騰です。売上は12.7%増えました。一方で売上原価は、99億3,700万円から124億1,500万円へ増えています。伸び率は24.9%です。売上総利益を売上収益で割ると、64.5%から60.7%へ下がります。差は3.8ポイントです。これは私の割り算です。
対策も書かれていました。国内外で商品価格を段階的に見直したことと、ラザールダイヤモンドのダイヤモンド調達権を取得して中間マージンを削ったこと。この二つで、粗利率は第3四半期を底に回復に転じたとしています。説明会資料によれば、第3四半期の57.5%に対し、第4四半期は62.1%まで戻りました。
ここは素直に受け取ります。理由は、価格の見直しも調達の付け替えも、翌四半期で消える種類の手ではないからです。
ただ、金額の裏づけが一つ足りません。短信のキャッシュ・フロー計算書を見ると、無形資産の取得による支出が2億7,300万円から11億6,500万円へ増えています。調達権の対価が含まれているのかどうかは、短信にも説明会資料にも書かれていません。
来期に置いた数字
通期決算なので、進み具合ではなく、次に会社が置いた数字を見ます。
| 項目 | 2026年8月期 実績 | 2027年8月期 予想 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 315億7,100万円 | 348億円 | +10.2% |
| 営業利益 | 39億300万円 | 48億円 | +23.0% |
| 当期利益 | 23億9,500万円 | 29億円 | +21.1% |
予想の48億円から、今期の39億300万円を引きます。差は8億9,700万円です。これだけ営業利益を増やす計画になります。今期に増えた7億7,000万円より、1億円以上大きい。
そして今期の7億7,000万円には、損が減ったぶんの2億3,000万円が入っていました。減損損失はもう1億700万円まで下がっているので、来期に同じ規模の押し上げは出てきません。8億9,700万円のほとんどを、粗利と販管費の側で作ることになります。
配当は120円から131円へ。配当性向は43.9%から40.6%へ下がりますが、方針の4割以上は保っています。
私はどう読んだか
私は、これを「売上が伸びた年」として受け取っています。利益の率が良くなった年ではありません。
理由は、二つの利益率で上がり方が違うからです。営業利益率は11.2%から12.4%へ上がりました。上がり幅は1.2ポイントです。売上から原価と販管費だけを引いた段階の利益率のほうは、11.9%から12.2%です。上がり幅は0.3ポイントしかありません。差の0.9ポイントは、損が減ったぶんです。原価は売上の倍の速さで増えていて、それを増収が飲み込んだ、というのが今期の形だと考えています。
第4四半期に粗利率が戻ったことは、短信にも説明会資料にも書かれているとおりで、ここは疑っていません。来期の数字が成り立つかどうかは、その戻りが通年で続くかにかかっています。私が次に見るのは、2027年8月期の第1四半期の売上原価です。
出典:決算短信(会社発表)

のれんが13億5,200万円増えた理由は、短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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