塗料の原料から、半導体の回路を描く材料まで
大阪有機化学工業は、アクリル酸エステルという化学品を作っている会社です。名前は聞き慣れませんが、行き先は身近にあります。自動車の塗料、光学部品向けの粘着剤、紫外線で固めるインク。塗った膜の固まり方や、貼り付く強さを決める材料として、この会社の品が混ぜられています。
もう一つの柱は半導体です。ウェハーに回路を焼き付けるとき、表面には光で性質が変わる膜を塗ります。この膜をレジストと呼び、会社はその原料を作っています。最先端のEUVと呼ばれる露光向けも手がけています。買い手はレジストのメーカーで、その先に半導体工場があります。
ほかに、化粧品の原料と高純度の溶剤も扱っています。
9か月で、営業利益は6割増えました
10月9日に出た第3四半期決算です。2025年12月から2026年8月までの9か月の累計です。
| 今回(9か月) | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 322億9,300万円 | 266億9,900万円 | +21.0% |
| 営業利益 | 75億7,800万円 | 46億3,100万円 | +63.6% |
| 経常利益 | 78億9,300万円 | 48億4,400万円 | +62.9% |
| 純利益 | 53億2,500万円 | 34億3,500万円 | +55.0% |
売上が2割伸びたのに対して、利益の伸びはその3倍です。販管費は39億644万円から41億8,401万円への増加にとどまりました。増えた粗利が、ほぼそのまま営業利益に残っています。
3つの事業が、そろって利益を5割以上伸ばした
短信の後半には、事業ごとの数字があります。
| 事業 | 売上高 | 前年比 | 事業の利益 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 化成品 | 110億5,800万円 | +11.5% | 24億6,100万円 | +49.4% |
| 電子材料 | 155億7,000万円 | +27.0% | 36億800万円 | +71.2% |
| 機能化学品 | 56億6,300万円 | +25.2% | 15億7,700万円 | +78.1% |
いちばん大きいのは電子材料です。会社の説明では、主力のArFレジスト用原料と、EUVレジスト用原料の販売が大幅に増えました。表示材料は減っています。
引っかかったのは化成品のほうでした。売上は1割強しか増えていないのに、利益は5割増えています。会社はこれを「販売価格の適正化および製品構成の改善」と書いています。インク向けとメタクリル酸エステルの販売は横ばいでした。ここまでは短信の説明文に書いてあることです。
量が大きく増えていない中での5割増です。値上げと、利の薄い品を絞ったことで稼いだ分が大きい、と私は受け取りました。
純利益だけが前年を割る予想の、計算の中身
表紙の通期予想を並べると、営業利益は5割増、経常利益も5割近い増益です。ところが純利益だけが4.2%の減益になっています。9か月の純利益は5割以上増えているのに。……ここは変だ。
前の年と比べると、どこで差が付くのかが分かります。通期の純利益予想66億円を、増減率から割り戻します。減益の幅は4.2%です。66億円を0.958で割ると、前の期の通期の純利益はおよそ68億9,000万円になります。そこから前年の9か月の34億3,500万円を引くと、前年の9月から11月だけで約34億5,000万円を稼いでいたことになります。
| 9月〜11月の3か月 | 前年 実績 | 今年 会社予想 |
|---|---|---|
| 営業利益 | 約15億6,000万円 | 17億2,200万円 |
| 経常利益 | 約17億1,000万円 | 17億700万円 |
| 純利益 | 約34億5,000万円 | 12億7,500万円 |
約の付いた数字は、通期予想の増減率から割り戻した前の期の通期から、前年の9か月を引いた私の計算です。今年の列は、通期予想から今回の9か月を引いたものです。
前年のこの3か月は、経常利益が約17億円なのに、純利益がその2倍あります。税金を払ったあとの利益が、払う前より大きいわけです。経常利益より下のどこかで、大きな上乗せがあった計算になります。
今年の同じ3か月を、会社は営業利益で前年より1割多く、経常利益で前年並みと置いています。純利益の減り方は、この上乗せが今年は無いことでほぼ説明が付きます。前年の上乗せが何だったのかは、今回の決算短信には書かれていません。前の期の通期の短信を開けば分かるはずですが、まだ手を付けていません。
この短信に、キャッシュ・フロー計算書が無かった
いつものように添付資料の後ろまでめくると、キャッシュ・フロー計算書の場所は「作成しておりません」という注記でした。第3四半期は作らなくてよい決まりなので、手抜きではありません。代わりに、貸借対照表から現金の動きを追いました。
| 項目 | 2025年11月末 | 2026年8月末 |
|---|---|---|
| 現金及び預金 | 159億2,259万円 | 165億705万円 |
| 売掛金及び契約資産 | 115億7,978万円 | 128億1,450万円 |
| 仕掛品 | 21億1,944万円 | 29億481万円 |
| 未払法人税等 | 21億1,760万円 | 9億866万円 |
現金は5億8,400万円増えています。売掛金は12億3,400万円、仕掛品は7億8,500万円増えました。この2つを足すと、20億円ほどです。それだけのお金が、売上の回収待ちと作りかけの品に回っています。前期分の税金の支払いで、未払法人税等も12億円減りました。それでも手元の現金は増えています。
売上が2割伸びる会社で、売掛金が増えるのは珍しくありません。仕掛品は4割近く増えていて、売上より速いペースです。作りかけを積んだ理由は、短信には書かれていません。
減価償却費は20億2,189万円で、前年同期の22億2,668万円より少なくなりました。有形固定資産も9か月で11億9,800万円減っています。いまは設備にかけるお金が、償却で減る分に届いていない時期です。
酒田の新設備は、約100億円から約200億円へ
その設備の話が、短信の最後の「重要な後発事象」にありました。2025年12月に発表した酒田工場の半導体材料の新設備を、約100億円から約200億円に増やしています。着工は2027年、完成は2029年に、それぞれ1年ずれました。
理由は2つ書かれています。建設資材と設備機器の値段が高くなったこと。そして、需要の見込みを引き直して、生産能力と高純度化の設備を厚くしたこと。増えた100億円のうち、どれだけが値上がりで、どれだけが能力の上乗せなのかは、短信には分けて書かれていません。
払う力はあります。自己資本比率は80.6%です。借入金は2本合わせて9億円ほどで、手元の現金は165億円あります。ただ、200億円をどう賄うのかは、この短信には書かれていません。
会社はどう説明しているか
事業ごとの説明は具体的です。化成品は値段と品ぞろえ、電子材料はArFとEUVの原料、機能化学品は化粧品原料と高純度溶剤。事業ごとの利益の伸びと突き合わせても食い違いは無く、私はそのまま受け取っています。
一方で、通期予想をなぜ動かしたのかは、短信の中では「業績予想及び配当予想の修正に関するお知らせ」を参照するように、とだけあります。そのお知らせは、まだ開いていません。表紙には決算補足説明資料も「有」とあります。純利益の減益の理由は、そちらに書かれているのかもしれません。
通期予想に対して、どこまで来ているか
| 通期予想 | 9か月で | 進み具合 | 残り3か月に要る額 | |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 425億円 | 322億9,300万円 | 76.0% | 102億700万円 |
| 営業利益 | 93億円 | 75億7,800万円 | 81.5% | 17億2,200万円 |
| 経常利益 | 96億円 | 78億9,300万円 | 82.2% | 17億700万円 |
| 純利益 | 66億円 | 53億2,500万円 | 80.7% | 12億7,500万円 |
進み具合と残りの額は、表紙の予想から私が割り算と引き算で出したものです。
期間の4分の3が過ぎて、利益はどれも8割を超えています。残りの3か月に要る営業利益は、前年の同じ時期より1割ほど多い程度で、無理のある置き方ではありません。
予想は7月2日に一度修正されていて、今回が二度目です。修正前の数字は今回の短信に載っていないので、どれだけ動かしたのかまでは分かりません。配当は中間43円、期末50円の予想です。合わせると年93円になります。前期は75円でした。
私はどう読んだか
純利益の減益予想は、今年の稼ぐ力が落ちる話なのか、前年の上乗せが消える話なのか。この2つのどちらかです。
私は後者の見方をしています。理由は、残り3か月の営業利益と経常利益が、前年と同じかそれ以上に置かれているからです。本業の稼ぎが落ちる予想なら、まず営業利益に出ます。今回の予想で前年と差が付くのは、経常利益より下だけです。
心配性なので、気になる点は2つ残しています。仕掛品が売上より速く増えていること。そして、200億円の設備を前に、現金の出入りの全体がこの時期の短信では追えないことです。この先どうなるかは分かりません。
出典:決算短信(会社発表)
https://www.ooc.co.jp/ir/material/results/pdf/20261009.pdf
前の年の9月から11月に、純利益を経常利益の2倍まで押し上げたものが何だったのかは、読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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