回転と音と振動を測る会社
小野測器は、ものが回る速さや、ものが出す音や揺れを測る機械を作っている会社です。エンジンやモーターが毎分何回転しているか。車の中にどんな音が響いているか。自動車メーカーの開発部門は、新しい車を世に出す前にこうしたことを確かめます。そのときに使う道具です。
もう一つの柱は、お客さんの注文に合わせて作る大きな試験装置です。エンジンや駆動系を据え付けて実際に回し、排ガスや燃費が認証の基準を満たすかを試す設備です。納めたあとの点検や、試験そのものを請け負う仕事もあります。
短信によると、最近は半導体の工場やデータセンターからも、音や振動を測る道具の注文が続いています。買うのは、作ったものが設計どおりに動くかを確かめなければならない技術者たちです。
1月から9月は、前年の赤字から黒字に
2026年10月26日に発表された第3四半期決算です。1月から9月までの累計を前年と並べます。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 106億4,700万円 | 89億2,900万円 | +19.2% |
| 営業利益 | 2億2,600万円 | △2億2,700万円 | — |
| 経常利益 | 2億7,900万円 | △1億7,500万円 | — |
| 純利益 | 1億5,000万円 | △2億4,600万円 | — |
売上は2割近く増えました。前年は赤字だった利益が、どの段階でも黒字に変わっています。表紙だけなら、文句の付けにくい決算です。
7月から9月の3か月は、営業赤字が広がっている
累計の黒字を四半期ごとにほどくと、形が変わります。短信の最後にある参考資料に、四半期ごとの営業損益が載っています。
| 営業損益 | 1〜3月 | 4〜6月 | 7〜9月 | 10〜12月 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年 | 3億3,000万円 | △4億1,000万円 | △1億4,700万円 | 8億1,600万円 |
| 2026年 | 4億2,300万円 | 9,400万円 | △2億9,100万円 | 約8億7,400万円 |
事業ごとの数字を足した合計です。約の付いた数字は、通期予想の11億円から1〜9月の2億2,600万円を引いた私の引き算です。
7月から9月は、2億9,100万円の営業赤字でした。前年同期は1億4,700万円の赤字でしたから、赤字の幅はほぼ倍になっています。
ただ、夏が赤字なのはこの会社のいつもの形です。会社自身も説明文の中で、例年この時期までの累計は季節の特性で営業損失になりがちだと書いています。前年は4月から9月まで赤字が続き、10月から12月の8億1,600万円で1年を取り戻していました。
引っかかったのは、その10月から12月です。
前年より少ない売上で、前年より多い利益
会社予想どおりに着地するなら、残り3か月に何が要るのか。通期予想から1〜9月の実績を引いて、前年同期と並べました。
| 10〜12月 | 売上高 | 営業利益 |
|---|---|---|
| 2025年 実績 | 46億9,900万円 | 8億1,600万円 |
| 2026年 必要な額 | 約43億5,300万円 | 約8億7,400万円 |
約の付いた数字は、通期予想から1〜9月の実績を引いたものです。
売上は、前年同期より1割弱少なくて足ります。そのかわり、営業利益は前年を5,800万円上回らなければなりません。8億7,400万円を43億5,300万円で割ると、売上のおよそ2割を営業利益として残す計算です。前年は8億1,600万円を46億9,900万円で割って、2割に届いていませんでした。
……売上が減るのに、利益率だけ上がる。何か理由があるはずだ。
その理由は、決算短信には書かれていません。表紙に「決算補足説明資料作成の有無:有」とあるので、補足資料に説明があるのかもしれません。私はまだそちらを開いていません。
注文は、納期の長い大型装置に移っている
手がかりは、試験装置の事業の説明文にありました。お客さんの注文が、装置の改造や業務の請け負いから、ハイブリッド車向けを中心とした設備の本格的な入れ替えへ移っている、と会社は書いています。需要が納期の長い大型装置へ移ったことで、売上の構成と、売上を計上する時期に影響が出ているとも書いています。
貸借対照表と参考資料も、同じ向きに動いています。
| 2025年12月末 | 2026年9月末 | |
|---|---|---|
| 受注残高 | 90億5,000万円 | 105億5,800万円 |
| 仕掛品 | 15億5,000万円 | 17億4,100万円 |
作りかけの品物が増え、まだ売上にしていない注文は年初より15億円ほど積み上がりました。7月から9月の売上は、前年同期を上回っています。それでも赤字は広がりました。ここまでは短信の数字です。
大きな装置が完成前で売上にならず、人件費や経費だけが先に出ていった3か月だった、と私は受け取りました。
現金が増えた理由は、売掛金の回収だけではない
1〜9月の営業キャッシュ・フローは22億8,300万円の収入で、前年の4億8,300万円から大きく増えました。いちばん大きいのは売掛金の回収です。ただ、前年と並べると話が少し変わります。
| 営業CFの主な中身 | 2025年1〜9月 | 2026年1〜9月 |
|---|---|---|
| 税金等調整前の損益 | △1億7,900万円 | 2億8,000万円 |
| 売上債権の減少 | 18億900万円 | 17億2,300万円 |
| 棚卸資産の増加 | △5億7,100万円 | △3億2,000万円 |
| 法人税等の支払額 | △4億7,500万円 | △3,500万円 |
| 営業CF | 4億8,300万円 | 22億8,300万円 |
売掛金の回収は、前年もほぼ同じ規模でした。年末に売上が集まる会社なので、12月末に残った売掛金を年明けに回収するのは毎年のことです。前年との差を作ったのは、損益が赤字から黒字に変わったことと、税金の支払いが4億円以上少なかったことです。
営業CFから売上債権の減少分を引くと、前年はマイナス、今年はプラスです。これも私の引き算です。
会社は「季節の形」と「受注残」で説明している
会社の説明はこうです。原価や人件費、販売管理費は増えたが、前年同期比では増収増益になった。受注は順調で、売上のもとになる受注残も一定量を確保している。だから1月29日に出した通期予想は変えない。中東情勢による原材料価格の上昇も、いまのところ影響は限られていると判断しています。
季節の形については、前年の四半期の数字で確かめられたので、そのまま受け取ります。留保をつけたいのは「一定量を確保」という言い方のほうです。受注残のうち、12月までに売上になる予定がいくらなのかは、決算短信には書かれていません。納期の長い装置が増えたと会社自身が書いている以上、受注残の一部は来年以降の売上になるはずです。
測定器の事業も、1〜9月ではまだ3,100万円の営業赤字です。
通期予想に対して、利益はまだ2割前後
| 通期予想 | 1〜9月 | 進捗率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 150億円 | 106億4,700万円 | 71.0% |
| 営業利益 | 11億円 | 2億2,600万円 | 20.5% |
| 経常利益 | 12億円 | 2億7,900万円 | 23.2% |
| 純利益 | 8億円 | 1億5,000万円 | 18.8% |
売上は7割まで来ていて、4分の3の手前です。利益は2割前後にとどまっています。前年は10月から12月だけで1年分の黒字を作った会社なので、この低さそのものは驚くことではありません。問題は、先に書いた「少ない売上で多い利益」という組み立てのほうです。
配当は年30円の予想で、前の期の22円から増やす計画を変えていません。
私はどう読んだか
私は、会社の予想の組み立てを受け入れる見方をしています。理由は、利益の大半を10月から12月に計上する形が前年にも前々年にもあり、どちらの年もその3か月は8億円台の営業利益だったからです。今年は、受注残も仕掛品もそのときより積み上がっています。
ただ、心配性なので下振れのほうも見ておきます。売上の2割を利益で残すのは、前年同期より一段高い水準です。大型装置で売上の構成が変わったと会社は書いていますが、それが利益率を高める方向なのか低める方向なのかは、短信の文章からは分かりません。
11月12日には、監査法人のレビュー報告書を付けた短信が改めて出る予定です。数字が変わるとは考えていませんが、そちらも開きます。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)

10月から12月に売上になる予定の受注残がいくらあるのかは、読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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