スーパーの菓子棚と、街のケーキ屋の会社
不二家は、スーパーやコンビニの菓子棚と、街のケーキ屋の両方にいる会社です。棚に並ぶのは「ミルキー」「カントリーマアム」「ホームパイ」。家族で分けて食べる大袋が主力で、週末のかごに何となく入れておくような商品です。
街のほうは不二家洋菓子店で、誕生日やクリスマスのケーキを選びに行く店です。ファミリー向けのレストランもあります。飲み物ではネクターが知られていて、最近は静岡の工場で詰めた天然水も販売を始めました。
事業は、お菓子と飲み物の「製菓事業」と、ケーキと食事の「洋菓子事業」の2本です。売上の大半は製菓事業で、洋菓子事業は前年も今年も赤字です。
売上は増えて、営業損益は赤字に
10月26日に出た、2026年1月から9月までの9か月分の決算です。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 876億5,900万円 | 839億6,800万円 | +4.4% |
| 営業利益 | △1億1,300万円 | 10億6,900万円 | — |
| 経常利益 | 7億5,000万円 | 18億9,800万円 | △60.5% |
| 純利益 | 5,600万円 | 9億700万円 | △93.7% |
売上は増えたのに、利益は4行とも減りました。営業損益は赤字に転じています。
売上の増えた額より、原価の増えた額のほうが大きい
| 前年同期 | 今回 | |
|---|---|---|
| 売上高 | 839億6,800万円 | 876億5,900万円 |
| 売上原価 | 566億3,700万円 | 612億3,900万円 |
| 売上総利益 | 273億3,100万円 | 264億2,000万円 |
| 販売費及び一般管理費 | 262億6,200万円 | 265億3,300万円 |
損益計算書を開いて、最初に引っかかったのはここです。売上は、今回の876億5,900万円から前年同期の839億6,800万円を引きます。増えた額は36億9,100万円です。原価も同じように、612億3,900万円から566億3,700万円を引きます。こちらは46億200万円増えています。
増えた売上を、原価の増え方が上回りました。その差が売上総利益の減少、9億1,100万円です。販管費はほとんど増えていないので、営業損益の赤字はこの粗利の減り方でほぼ説明が付きます。
伸びている製菓事業で、利益が2割以上減った
| 売上 前年同期 | 売上 今回 | 損益 前年同期 | 損益 今回 | |
|---|---|---|---|---|
| 洋菓子事業 | 222億300万円 | 212億3,000万円 | △14億7,700万円 | △12億9,900万円 |
| 製菓事業 | 590億4,600万円 | 637億1,500万円 | 57億2,100万円 | 44億2,300万円 |
売上は外部顧客への売上高、損益はセグメント損益です。
製菓事業は、売上が1割近く伸びました。それなのに利益は12億9,800万円減っています。会社全体の売上総利益の減り方より大きい額です。
反対に洋菓子事業は、売上が減ったのに赤字が縮んでいます。工場で効率のよいラインに生産を集め、人の配置を見直した成果だ、と会社は説明しています。
比べるうえで一つ断りがあります。2025年7月に一部の子会社が洋菓子から菓子へ業態を変えました。そのため、この子会社の1〜6月分は、前年は洋菓子事業に、今年は製菓事業に入っています。製菓事業の伸びの一部はこの移し替えですが、その額は短信には書かれていません。
天然水の工場が、売上にも費用にも出ている
飲料の売上は30億5,800万円から44億2,600万円へ、4割以上伸びました。富士裾野工場で作る天然水の販売を始めたことが理由です。静岡の出身なので、裾野という地名には少し反応してしまいます。
同じ工場は、費用の側にも出てきます。製菓事業の減益の理由として、会社はカカオ豆や油脂の価格上昇と並べて、グミと天然水の新しい設備の減価償却費を挙げています。
その減価償却費は、添付資料の10ページにありました。前年同期の40億5,200万円が、今年は49億2,500万円です。引くと8億7,300万円の増加になります。ただし会社全体の数字で、事業ごとの内訳は短信に載っていません。
この短信に、キャッシュ・フロー計算書は無かった
その10ページは、本来ならキャッシュ・フロー計算書が載る場所です。あったのは、第3四半期のキャッシュ・フロー計算書は作成していないという注記と、さっきの減価償却費だけでした。……ここで行き止まりか。
しかたがないので、貸借対照表の昨年12月末と今年9月末を並べました。
| 2025年12月末 | 2026年9月末 | |
|---|---|---|
| 現金及び預金 | 123億1,800万円 | 104億6,800万円 |
| 売掛金 | 195億8,000万円 | 126億8,700万円 |
| 商品及び製品 | 46億3,000万円 | 61億8,500万円 |
| 原材料及び貯蔵品 | 46億7,600万円 | 62億4,200万円 |
現金は18億5,000万円減りました。売掛金の大きな減少は、12月末が年末の売上を回収する前の時点だからだと考えています。
気になるのは在庫で、製品も原材料も15億円あまりずつ増えています。冬のチョコレートやクリスマスに向けて積む分もあるはずです。ただ、前年の9月末の在庫はこの短信に載っていないので、例年より多いのかどうかは比べられません。
経常利益の半分以上は、補助金収入でした
| 前年同期 | 今回 | |
|---|---|---|
| 補助金収入 | ― | 4億5,500万円 |
| 持分法による投資利益 | 7億5,800万円 | 4億7,800万円 |
| 支払利息 | 7,000万円 | 2億1,400万円 |
営業損益が赤字なのに経常利益が残ったのは、営業外収益のおかげです。中でも補助金収入4億5,500万円は、前年同期には無かった科目です。経常利益7億5,000万円からこれを引くと、2億9,500万円になります。何の補助金なのかは、決算短信には書かれていません。
支払利息は3倍になりました。借入金の合計は12月末とほぼ同じ額なので、借りた額ではなく金利のほうが動いたのだと受け取りました。
7月から9月に、計画を大きく下回った
会社は、7月から9月の売上が計画を大きく下回ったと説明しています。理由に挙げているのは、記録的な長雨と豪雨、熊本の震災、値上げを背景にした消費者の節約です。カントリーマアムやホームパイの大袋も、値上げの影響で売上計画を大きく下回ったとしています。
この3か月だけを取り出すと、話がはっきりします。
| 1〜6月 | 7〜9月 | 1〜9月 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 594億1,000万円 | 約282億4,900万円 | 876億5,900万円 |
| 営業利益 | 2億9,700万円 | 約△4億1,000万円 | △1億1,300万円 |
| 経常利益 | 4億5,800万円 | 約2億9,200万円 | 7億5,000万円 |
約の付いた数字は、9か月の数字から、7月28日に出た上期の数字を私が引いたものです。
6月までは黒字だった営業利益が、この3か月で4億円あまりの赤字になっています。天候と震災の説明は、そのまま受け取ります。雨の日に洋菓子店へ来る人が減るのは分かりやすい話です。
大袋の菓子は事情が違います。会社自身が、天気ではなく値上げの影響だと書いています。対策として主力10品のパッケージの色数を減らすなど、原価を下げる手を続けるとしています。
通期予想に対して、どこまで来ているか
| 通期予想 | 9か月の実績 | 進捗率 | 残り3か月に必要な額 | |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,230億円 | 876億5,900万円 | 71.3% | 353億4,100万円 |
| 営業利益 | 16億円 | △1億1,300万円 | △7.1% | 17億1,300万円 |
| 経常利益 | 22億円 | 7億5,000万円 | 34.1% | 14億5,000万円 |
| 純利益 | 8億5,000万円 | 5,600万円 | 6.6% | 7億9,400万円 |
進捗率と必要な額は、表紙に載っている予想から私が割り算と引き算をしたものです。
会社はこの決算と同じ日に、通期予想を修正しています。修正前の数字は短信には載っておらず、別に出た修正のお知らせを私はまだ開いていません。表紙には、決算補足説明資料は「無」とあります。
売上は、10〜12月に前年の10〜12月とほぼ同じ額を見込んでいる計算です。重いのは営業利益で、この3か月に17億1,300万円が必要です。前年は9か月かけて10億6,900万円でした。それを上回る額を、3か月で稼ぐ計算になります。
配当は年30円のままです。予想1株利益が32円98銭なので、利益の9割ほどを配当に回す計画になります。
私はどう読んだか
減益の中心は新しい設備の減価償却で、天然水やグミが売れていけば吸収できる。これが一つの見方です。もう一つは、主力の大袋菓子が値上げを受け入れてもらえていない、という見方です。
私は後者だと考えています。理由は、減価償却費は年の初めから毎月ほぼ同じように乗る費用なのに、営業利益が崩れたのは7〜9月の3か月だからです。費用が急に増えたのではなく、売れる量のほうが変わったのだと思います。
在庫の増え方も、この考えと食い違いません。ただ前年の9月末と比べられない以上、裏付けにはなりません。
上がるかは知りません。10〜12月で17億円を稼ぐ前提に、冬の菓子とクリスマスケーキの季節がどれだけ入っているのか。2月の通期決算で確かめるつもりです。
出典:決算短信(会社発表)

補助金収入4億5,500万円が何の補助金で、来期以降も入るものなのかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


コメント