はじめに
蛇口の会社です。台所の流し、洗面台、浴室のシャワーなど、水が出てくる金具を作っています。
家を建てたりリフォームしたりするとき、施主が工務店と一緒にカタログで選ぶあの部品です。家庭向けのほかに、ホテルや飲食店に入る見た目にこだわった製品も手がけています。客室の洗面台や、店のカウンターの水栓がそれにあたります。
工場は岐阜と大阪にあります。事業は水栓金具の1本だけで、短信もセグメントを分けていません。
蛇口は壊れるまで替えないものなので、新築とリフォームの数がそのまま商売の土台になります。
売上は増え、利益は半分になった
10月26日に出た中間決算です。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 144億4,100万円 | 140億2,700万円 | +2.9% |
| 営業利益 | 3億3,300万円 | 6億6,700万円 | △50.1% |
| 経常利益 | 2億8,300万円 | 6億9,500万円 | △59.2% |
| 純利益 | 1億7,500万円 | 4億4,000万円 | △60.3% |
売上は少し増えています。それなのに、営業利益は前年の半分になりました。
利益を削ったのは、ほとんど売上原価
損益計算書を開くと、利益の減り方の中身が分かります。
| 前年同期 | 今回 | |
|---|---|---|
| 売上高 | 140億2,789万円 | 144億4,159万円 |
| 売上原価 | 97億3,095万円 | 104億853万円 |
| 売上総利益 | 42億9,693万円 | 40億3,305万円 |
| 販売費及び一般管理費 | 36億2,950万円 | 36億9,978万円 |
| 粗利率 | 約30.6% | 約27.9% |
粗利率は、売上総利益を売上高で割って私が出したものです。
売上は4億1,370万円増えました。ところが売上原価は6億7,758万円増えています。売上の増加より原価の増加のほうが大きく、粗利は2億6,388万円減りました。
営業利益の減少は3億3,416万円です。このうち2億6,388万円が粗利の減少で、残りの7,028万円が販管費の増加です。足すと、ちょうど営業利益の減少額になります。
経費を使いすぎたのではありません。売るたびに残るお金が薄くなった、というのが今回の決算の中心です。
原価が重くなった理由は、決算短信には書かれていません。値上げが追いつかなかったのか、材料費が上がったのか、売れた製品の組み合わせが変わったのか。ここがいちばん引っかかったところです。
在庫が11億円増え、その多くはまだ払っていない
貸借対照表では、在庫の動きが目立ちます。
| 棚卸資産 | 3月末 | 9月末 |
|---|---|---|
| 商品及び製品 | 28億9,874万円 | 37億5,722万円 |
| 仕掛品 | 5億2,814万円 | 6億1,301万円 |
| 原材料及び貯蔵品 | 25億3,714万円 | 27億3,368万円 |
キャッシュ・フロー計算書に載っている在庫の増加は、11億2,026万円です。いちばん増えたのは、出来上がった製品でした。
ただし、在庫の積み増し自体はこの会社の上期によくある動きです。前年の上期も7億4,907万円増えていました。後で触れるとおり、この会社の利益は下期に寄るので、売る前に作り置く動きと考えれば説明が付きます。今年はその幅が前年より大きくなっています。
営業キャッシュ・フローは3億9,711万円のプラスでした。……ただ、内訳を分けると印象が変わる。
買掛金が増えたことで、6億3,504万円のプラスが入っています。前年の上期はここが8億7,557万円のマイナスでした。営業キャッシュ・フローの3億9,711万円から、この6億3,504万円を引いてみます。結果は約2億3,793万円のマイナスです。仕入れの支払いを先に延ばした分がなければ、営業キャッシュ・フローは赤字だったことになります。
買掛金は払わずに済むお金ではありません。仕入れた在庫の支払いは、下期に出ていきます。
借入と利息が増えた
現金及び預金は、3月末の18億4,560万円から9月末の16億9,660万円へ減りました。短期借入金は23億5,000万円から27億6,000万円へ増えています。
営業外費用でも、同じ方向の動きが出ています。
| 営業外の項目 | 前年同期 | 今回 |
|---|---|---|
| 支払利息 | 884万円 | 1,980万円 |
| 手形売却損 | 425万円 | 1,294万円 |
| 為替差損益 | 2,468万円の差益 | 3,383万円の差損 |
支払利息は前年の2倍を超えました。手形売却損は3倍です。電子記録債権も3月末から3億9,435万円減っています。受け取る予定のお金を、期日前に割り引いて現金に換える量が増えた、と私は読みました。
経常利益が営業利益より大きく減ったのは、この三つが重なったためです。どれも金額は小さいですが、利息と手形売却損には、資金を借入と前倒しの回収でまかなった形が出ています。
会社の説明は、この短信には載っていない
この短信には、業績についての会社自身の説明文がありません。目次は財務諸表と注記だけで、セグメント情報も単一事業として省略されています。
通期予想は修正されており、理由は同日に出た「業績予想と実績の差異及び通期連結業績予想の修正に関するお知らせ」を参照するよう書かれています。表紙には「決算補足説明資料作成の有無:有」ともあります。私はどちらもまだ開いていません。原価が重くなった理由について、私に言えるのは「決算短信には書かれていない」までです。
下期は売上が前年並み、利益は3割余り少ない前提
| 通期予想(修正後) | 上期実績 | 進捗率 | 下期に必要な額 | |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 295億円 | 144億4,100万円 | 約49% | 150億5,900万円 |
| 営業利益 | 11億円 | 3億3,300万円 | 約30% | 7億6,700万円 |
| 純利益 | 6億5,000万円 | 1億7,500万円 | 約27% | 4億7,500万円 |
進捗率は私が割った数字です。下期に必要な額は、通期予想から上期実績を引いて出しました。
営業利益の進捗率は3割ほどですが、この会社は下期に利益が出る形です。前年と並べると、会社が何を見込んでいるかがはっきりします。
修正後の営業利益予想11億円は、前期比△39.9%です。前期から39.9%減らした残りの割合は0.601です。11億円をこの0.601で割ると、前期の通期営業利益は約18億3,000万円です。そこから前年の上期の6億6,700万円を引くと、前年の下期は約11億6,300万円になります。同じように売上高も割り戻すと、前年の下期は約150億800万円です。
つまり会社は、下期の売上は前年とほぼ同じで、営業利益は3割余り少ないと見込んでいます。上期の粗利の薄さが下期も続く前提です。これは私の引き算です。
配当予想は年間75円で、修正はありません。予想1株利益141.99円に対して、半分ほどを配当に回す計算になります。
私はどう読んだか
在庫と粗利、どちらを重く受け取るか。この決算の読み方は、そこで分かれます。
私は、在庫より粗利の目減りのほうが重いと考えています。理由は、在庫の積み増しは前年の上期にも起きていて、下期に売る分の準備と考えれば筋が通るからです。一方で粗利率の低下は、会社自身が下期も続くと見込んでいます。売上をほぼ変えずに利益を下げた予想が、その証拠です。
心配性なので、買掛金で支えた営業キャッシュ・フローと、増えた借入は頭の片隅に置いておきます。下期に在庫が売れて買掛金を払い終えたとき、現金がどこまで戻るか。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)

売上原価が売上より大きく増えた理由と、修正前の通期予想がいくらだったかは、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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