はじめに
兵庫県に本社を置く建設会社です。事業は大きく2つあります。
1つは建設です。役所や企業から建物や施設の工事を請け負い、何か月、ものによっては年をまたいで施工します。もう1つは住宅です。子会社のセキスイハイム山陽が、家を建てたい家族に注文住宅や分譲地の家を売っています。このほかに小さな飲食の事業があり、賃貸用の不動産も持っています。
決算は12月締めです。今回の第3四半期は、1月から9月までの9か月分になります。建設の工事は年をまたぐものが多く、売上は工事の進捗に合わせて少しずつ計上されます。この会社の数字を追うときは、そこを頭に入れておく必要があります。
売上は増え、利益はそろって3割前後減りました
10月26日に出た第3四半期決算です。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 288億4,200万円 | 273億6,500万円 | +5.4% |
| 営業利益 | 14億5,800万円 | 20億7,100万円 | △29.6% |
| 経常利益 | 14億2,100万円 | 20億4,400万円 | △30.4% |
| 純利益 | 9億2,500万円 | 12億6,300万円 | △26.8% |
売上が増えたのに、利益はどれも大きく減っています。表だけを見ると、苦しい9か月に見えます。
この短信に、キャッシュ・フロー計算書は付いていませんでした
私はいつも、キャッシュ・フロー計算書まで行きます。今回は、添付資料の10ページに注記が1つあるだけでした。「四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成しておりません」。第3四半期は作成を省略できるので、珍しいことではありません。……ただ、そこに計算書が無かった。
代わりに、貸借対照表の期首と9月末を並べました。
| 2025年12月末 | 2026年9月末 | |
|---|---|---|
| 現金預金 | 27億9,459万円 | 31億7,969万円 |
| 受取手形・完成工事未収入金等 | 86億8,488万円 | 74億6,309万円 |
| 棚卸資産 | 86億4,711万円 | 75億1,704万円 |
| 借入金と社債の合計 | 約105億3,540万円 | 約75億9,984万円 |
約の付いた数字は、短期借入金、1年内返済予定の長期借入金、長期借入金、社債を私が足したものです。
工事代金の未収分と棚卸資産が、合わせて23億円あまり減りました。その現金で借入金を約29億円減らし、それでも現金預金は増えています。会社も「工事代金の回収による余剰資金を借入金の返済に充当した」と書いています。利益が減った9か月に、財務は締まっていました。
引っかかったのは、損益計算書の支払利息です。借入金を返しているのに、6,534万円から8,709万円へ増えています。会社は業界の説明の中で、金利上昇による資金調達コストの増加に触れています。
売上の増え方より、原価の増え方が大きかった
| 前年同期 | 今回 | |
|---|---|---|
| 売上高 | 273億6,500万円 | 288億4,200万円 |
| 売上原価 | 213億5,500万円 | 233億2,800万円 |
| 売上総利益 | 60億900万円 | 55億1,400万円 |
| 販売費及び一般管理費 | 39億3,800万円 | 40億5,600万円 |
| 営業利益 | 20億7,100万円 | 14億5,800万円 |
売上は14億7,700万円増えましたが、売上原価は19億7,300万円増えました。営業利益は6億1,300万円減っています。このうち販管費の増加は1億1,800万円で、残りの4億9,500万円は売上総利益の段階で消えています。利益が減った場所は、ほぼ原価です。
| 売上高 前年同期 | 売上高 今回 | 営業利益 前年同期 | 営業利益 今回 | |
|---|---|---|---|---|
| 建設 | 168億8,700万円 | 190億3,300万円 | 15億2,400万円 | 10億8,500万円 |
| 住宅 | 102億9,200万円 | 96億3,100万円 | 5億3,200万円 | 3億6,400万円 |
減益の大半は建設です。収益の分解情報を開くと、建設のうち工事の進捗に応じて計上する売上が、90億5,200万円から118億8,600万円へ増えていました。会社の言う「繰越工事の進捗」は、この数字に表れています。ここまではセグメント情報の数字です。
前の期までに受注した工事を、今年の資材と人件費で施工しています。売上は契約したときの値段で、原価は今の値段なので、粗利が薄くなった、と私は読みました。
前年同期は、営業利益が倍になった年でした
表紙の前年同期の欄には、その年の増減率も載っています。売上は34.7%増、営業利益は100.0%増でした。比べている相手は、利益がその前の年の倍になった9か月です。
そこで2年前まで割り戻しました。営業利益は、20億7,100万円を2.0で割って約10億3,600万円です。売上高は、273億6,500万円を1.347で割って約203億2,000万円になります。
| 1月〜9月 | 売上高 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|
| 2024年 | 約203億2,000万円 | 約10億3,600万円 | 約5.1% |
| 2025年 | 273億6,500万円 | 20億7,100万円 | 約7.6% |
| 2026年 | 288億4,200万円 | 14億5,800万円 | 約5.1% |
約の付いた数字は、表紙の増減率から私が割り戻し、割り算したものです。
……2年前と同じだ。売上は2年で4割ほど大きくなり、利益率は2年前の水準に戻っています。3割減という数字の重さは、前年が出来すぎだったことからも来ています。
会社が挙げた理由は、原価と人件費でした
会社は利益が減った理由として、工事原価の増加と、人事制度の改定で人件費が増えたことを挙げています。建設では資材価格の上昇にも触れています。住宅は、前年同期に新しい分譲地の引き渡しが多かった反動だと書いています。
説明の筋は、そのまま受け取ります。ただ、人件費がいくら増えたのかは、決算短信には書かれていません。販管費の増加が1億1,800万円にとどまる以上、増えた人件費の多くは、工事現場の分として原価に入っているはずです。
純利益の減り方が営業利益より小さいのは、賃貸用不動産を売った固定資産売却益が1億1,398万円あるからです。前年同期は3,794万円でした。貸借対照表でも、土地が95億3,090万円から89億938万円へ減っています。毎年出る利益ではないので、差し引いて考えます。
残りの3か月は、売上が最も大きく、利益率が最も低い予想です
営業利益の進捗率は81.0%で、9か月経った時点の目安の75%を上回っています。会社は「概ね想定の範囲内」として、予想を据え置きました。
| 1月〜6月 | 7月〜9月 | 10月〜12月(予想) | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 199億200万円 | 約89億4,000万円 | 約111億5,800万円 |
| 営業利益 | 9億4,400万円 | 約5億1,400万円 | 約3億4,200万円 |
| 営業利益率 | 約4.7% | 約5.7% | 約3.1% |
7月〜9月は第3四半期累計から中間期の数字を、10月〜12月は通期予想から第3四半期累計を引いた、私の引き算です。
10月〜12月の売上は、前年同期より4分の1以上多い見込みです。一方で営業利益は3割以上減る計算になり、利益率は1年で最も低くなります。
ただし、この予想は2月13日に出したまま変わっていません。10月〜12月の数字は、会社が新しく示した見込みではなく、2月に作った1年分の計画から9か月分を引いた残りです。7月〜9月の利益率が上期より高かったことは、まだ予想に入っていません。
私の見方
考え方は2つあります。資材と人件費で利益の出にくい会社になったのか。前年が出来すぎで、利益率が元に戻っただけなのか。
私は後者だと考えています。理由は、今年の9か月の利益率が2年前とほぼ同じで、7月〜9月だけを取り出すと上期より高くなっているからです。工事代金を回収して借入金を返し、自己資本比率も4割台半ばから半分近くまで上がりました。
心配性なので、悪い材料も1つ書いておきます。制度の改定で増えた人件費は、毎年続く費用です。資材の値段が落ち着いても、こちらは戻りません。10月〜12月の大きな売上を今の原価でこなして、どれだけ利益が残るのか。年が明けて通期の短信が出たら、確かめます。
出典:決算短信(会社発表)

人事制度の改定で増えた人件費の金額と、それが原価と販管費にどう分かれたのかは、読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


コメント