はじめに
コンサルティングの会社です。ただ、外から助言して報告書を置いて帰る形とは違います。自社のコンサルタントを取引先へ出向させます。そして、その会社の新しい事業や改革の責任者として、中から動かします。頼むのは、改革を任せられる人が社内に足りない大企業の経営陣です。契約は年単位になりやすく、1社との付き合いが深く長くなります。
もう一つの柱がAIです。取引先と一緒に、仕事の一部をAIに任せる道具を作っています。たとえば製造業の調達部門向けのソフトです。部品の仕入れ値を分析して、値下げ交渉の筋書きまで出します。年内に持株会社へ移り、社名も変わります。
8月26日に出た2026年5月期の決算短信〔IFRS〕と有価証券報告書を読んで、前の記事を書きました。引っかかったのは、会社自身が来期の利益率を下げて予想している理由です。その理由が、決算短信にも有価証券報告書にも書かれていませんでした。説明会資料にあるのかもしれない、と残して終えていました。
売上は2割伸び、利益はわずかに減った
10月15日に出た第1四半期決算です。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 32億1,200万円 | 26億6,000万円 | +20.8% |
| 営業利益 | 9億2,300万円 | 9億5,200万円 | △3.1% |
| 経常利益 | — | — | — |
| 純利益 | 6億3,100万円 | 6億4,800万円 | △2.6% |
IFRSの短信なので、経常利益の欄はありません。純利益は、親会社の所有者に帰属する四半期利益です。
コンサルの利益は1割増えていた
1ページ目だけを見ると、伸びた売上を費用が食ったように見えます。事業ごとの表を開くと、減った場所がはっきり分かれていました。
| 前年同期 | 今回 | |
|---|---|---|
| コンサルティング事業 外部売上 | 25億7,510万円 | 31億3,409万円 |
| コンサルティング事業 利益 | 11億5,759万円 | 12億6,893万円 |
| AI事業 外部売上 | 8,503万円 | 7,831万円 |
| AI事業 利益 | 5,964万円 | 3,189万円 |
| 本社の費用など(調整額) | △2億6,446万円 | △3億7,754万円 |
| 営業利益 | 9億5,276万円 | 9億2,328万円 |
コンサルティング事業の利益は、1億1,100万円ほど増えています。減益の元は、どの事業にも振り分けない本社の費用と、AI事業です。本社の費用は1億1,300万円ほど増えて、コンサルの増益をほぼ打ち消しました。
AI事業は売上も利益も前年を下回っています。短信によると、大手の取引先と3つの道具を共同開発している最中です。まだ試作と要件を詰める段階だと書かれています。
採用の費用が4倍以上になっていた
損益計算書では、粗利が4億3,500万円ほど増えました。販売費及び一般管理費は、それより多い4億5,300万円ほど増えています。何で増えたのかは、短信には書かれていません。
理由は説明会資料にありました。そちらの数字ですが、採用にかかった費用が前年同期の4,300万円ほどから1億9,800万円ほどへ増えています。差は1億5,500万円です。幹部クラスのコンサルタントを、この3か月で6人増やしたとも書いてあります。
会社は、採用費が前年並みなら営業利益率は33.6%だったとしています。営業利益の9億2,300万円に、差の1億5,500万円を足します。合わせて10億7,800万円です。これを売上の32億1,200万円で割ると、確かにそのくらいになります。この利益額は、前年の9億5,200万円を上回ります。
それでも、前年の利益率には届きません。前年同期の利益率は、9億5,200万円を26億6,000万円で割った値です。これは33.6%より上です。コンサルティング事業の利益を外部への売上で割ると、前年同期の45.0%から40.5%へ下がっています。説明会資料によると、コンサルタントの平均年収は前期末の2,004万円から2,109万円へ上がりました。前の記事で「仕入れ値は横ばい」と書いたコンサルタントの給料が、この3か月で動き始めています。
現金の減り方は、税金と配当でほぼ説明がつく
この短信に、キャッシュ・フロー計算書はありません。第1四半期は作らなくてよい決まりで、この会社も作っていません。代わりに、貸借対照表の動きを拾いました。
| 項目 | 前期末からの動き |
|---|---|
| 現金及び現金同等物 | △8億6,608万円 |
| 未払法人所得税等 | △4億5,741万円 |
| その他の流動負債 | △4億7,785万円 |
| 営業債務及びその他の債務 | △1億3,927万円 |
| 配当(持分変動計算書) | △4億5,911万円 |
前の期の税金と配当を足すと、9億円を超える現金が出ています。前の期に稼いだ分の後払いで、毎年この時期に来る支払いです。その他の流動負債も大きく減っていますが、中身は短信には書かれていません。自己資本比率にあたる持分比率が71.0%に上がったのは、この支払いで負債と資産が一緒に縮んだためです。
会社はどう説明しているか
短信4ページ目は、コンサルティング事業について、売上も利益も「順調に推移しました」と書いています。事業ごとの数字はその通りです。ただ、全社の営業利益が減った理由は、短信の説明文には出てきません。
説明会資料には、もう一つ説明があります。前の期の第4四半期に、大口の顧客の業績が急に変わって売上が落ちた、というものです。説明会資料の数字では、その3か月の営業利益は6億7,600万円、利益率は24.5%でした。今回はそこから持ち直した、というのが会社の説明です。
前の記事は通期の数字しか追っておらず、この落ち込みに気づいていませんでした。顧客の入れ替わりの速さが心配だと書きましたが、その心配はすでに一度起きていたことになります。
採用費の説明は、そのまま受け取ります。理由は、本社の費用とコンサルの利益の動きが、その説明と食い違わないからです。ただし平均年収の上昇は、採用費とは別の話です。採用をやめても残ります。
通期予想に対して、どこまで来ているか
予想は7月15日に出したものから変えていません。
| 通期予想 | 第1四半期 | 進み具合 | 残り9か月 | 前年の残り9か月 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 161億円 | 32億1,200万円 | 約20% | 約128億8,800万円 | 約88億5,200万円 |
| 営業利益 | 48億3,000万円 | 9億2,300万円 | 約19% | 約39億700万円 | 約30億5,100万円 |
約の付いた数字は、通期予想と前の期の実績(売上高115億1,200万円、IFRSの営業利益40億300万円)から、私が第1四半期を引いたり割ったりしたものです。
前年は、第1四半期で通期の売上の4分の1近くを稼いでいました。今年は2割で、前年より遅い位置です。表の右の2列を比べると、残り9か月の売上は、前年の同じ期間より4割半ば多い計算になります。この3か月の伸びは2割でした。
前の記事の宿題の答えは、説明会資料の予想のページにありました。「R&Dなどへの投資を実行しない場合は営業利益56億円(利益率35%)を見込む」。上期の業績を見ながら、投資の時期と規模を決めるとも書いてあります。……ここに書いてあったのか。
56億円と、予想の48億3,000万円を比べます。差は7億7,000万円です。35%は前の期の実績とほぼ同じ水準なので、今期の予想で利益率が下がる理由は、この投資でまるごと説明がつきます。前の記事で私は、増えた人がすぐ売上にならない時期の費用ではないかと想像しました。会社が挙げたのは研究開発などへの投資で、通期については私の読みが外れていました。7月の説明会資料に同じ一文があったのかは、確かめていません。
私はどう読んだか
この減益は2通りに受け取れます。採用を前倒しした一時の費用なのか。コンサルタント1人にかかる費用が上がって、利益率が下がり始めたのか。
私は前者の見方をしています。理由は、採用費を前年並みに戻すと利益額は前年を上回り、コンサルの利益も1割増えているからです。伸びた売上は、きちんと利益になっています。
心配性なので、後者も頭の片隅に置いておきます。平均年収の上昇は、売上が追いつかなければ残る費用です。通期予想は残り9か月の売上を4割半ば伸ばす前提で、研究開発に回すかどうかは上期の結果で決めるといいます。次の3か月が、その分かれ目になります。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)/2027年5月期 第1四半期決算説明会資料

前の期の第4四半期に業績が急に変わった大口の顧客がどこなのかは、短信からも説明会資料からも読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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