糸を紡いでいた会社が、いま何で食べているか
オーミケンシは繊維の会社です。綿を仕入れて糸を紡ぐところから始まりましたが、自社で原綿から糸を作る仕事はすでにやめています。いまの繊維部門は、素材の開発と、その素材を使った製品を売る商いが中心です。
ほかに事業が二つあります。持っている土地と建物を貸す不動産と、ソフトウェアの開発と販売です。食品もありましたが撤退しました。今回の決算からは報告の区分から外れ、その他にまとめられています。
糸を紡いでいた時代の工場用地が、いまは賃貸に回っている会社です。どの事業が何を稼いだのかを先に確かめたくなります。私はそこから追いました。
4月から6月の数字
10月22日に発表された第1四半期の決算です。対象は4月から6月の3か月です。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 6億2,100万円 | 7億200万円 | -11.4% |
| 営業利益 | 3,300万円 | △1,300万円 | — |
| 経常利益 | △1,700万円 | △8,100万円 | — |
| 純利益 | △4,700万円 | △1億100万円 | — |
売上は1割強減りました。それでも営業損益は赤字から黒字に変わり、経常損失と純損失も前年同期より小さくなっています。
引っかかったのは、売上が減っているのに利益が改善している点です。損益計算書をめくると、売上原価が4億1,900万円から3億1,700万円へ下がっていました。売上は8,100万円減っていますが、原価は1億200万円減っています。だから売上総利益は2億8,200万円から3億400万円へ増えました。
販売費及び一般管理費も2億9,600万円から2億7,100万円へ減っています。ここまでは損益計算書の数字です。
採算の合わない商いを落として、残した分の原価を下げた、と私は読みました。
営業利益3,300万円は、不動産の賃料で立っている
その3,300万円がどこから出てきたのか。事業ごとの表に進むと、話の形が変わりました。
| 部門 | 売上高(今回) | 売上高(前年同期) | 損益(今回) | 損益(前年同期) |
|---|---|---|---|---|
| 繊維 | 3億1,800万円 | 3億6,800万円 | △3,000万円 | △4,300万円 |
| 不動産 | 2億6,300万円 | 2億6,100万円 | 1億6,500万円 | 1億6,400万円 |
| その他 | 3,900万円 | 7,100万円 | △500万円 | △2,000万円 |
| 合計 | 6億2,100万円 | 7億200万円 | 1億2,800万円 | 1億100万円 |
| 調整額 | — | — | △9,500万円 | △1億1,400万円 |
| 損益計算書の額 | 6億2,100万円 | 7億200万円 | 3,300万円 | △1,300万円 |
不動産部門が1億6,500万円を稼いでいます。3部門の損益を足すと1億2,800万円です。そこから各部門に割り振っていない本社の費用など9,500万円を引くと、3,300万円になります。
繊維部門は3,000万円の赤字です。前年同期の4,300万円より幅は縮みましたが、黒字には届いていません。売上も1割以上減っています。
不動産は賃料の商売なので、売上に対して残る利益が大きくなります。額は前年同期とほぼ同じです。
不動産の1億6,500万円が1割でも欠ければ、営業損益はまた赤字に戻る勘定です。
稼いだ3,300万円を、支払利息5,700万円が追い越す
経常損益は1,700万円の赤字でした。営業では3,300万円の黒字です。間で何が起きたのか。営業外費用の内訳に、支払利息5,700万円がありました。前年同期は5,300万円です。
……営業で稼いだ分が、そのまま金利に出ていく。
貸借対照表を見ると、6月末の短期借入金が74億3,500万円、長期借入金が1億2,400万円です。これに対して純資産は13億8,200万円、自己資本比率は9.2%です。3月末は9.5%でしたから、わずかに下がりました。
資産の側は、総資産149億8,000万円のうち土地が125億8,000万円を占めます。その土地を貸して賃料を得る形です。ただ、同じ資産の上に70億円を超える借入金が乗っていて、金利が営業利益を上回っています。
現金及び預金は5億2,100万円から3億8,900万円へ減りました。差は1億3,200万円です。ここでキャッシュ・フロー計算書を開こうとしたのですが、今回の短信には載っていません。
注記には、作成していないと書かれています。出ている数字は減価償却費3,200万円だけです。第1四半期で作らない会社は珍しくありませんが、現金が1億円以上減った3か月について、どこから出ていったのかは短信では追えませんでした。
普通株は未定、A種優先株には16円74銭の予想がある
配当の欄で、もう一つ引っかかりました。
普通株式は、前期が年間0円で、今期の期末は未定です。配当金額が決まり次第開示する、と短信にあります。いっぽう、非上場のA種優先株式には、期末16円74銭という予想が置かれています。
優先株の配当は発行のときの条件で決まるので、普通株より先に数字が出るのは仕組みとしては分かります。それでも、普通株が未定のまま優先株にだけ予想が並ぶ表は、読んでいて落ち着きません。
会社の説明は「各部門において収益改善に取り組んでおります」まで
会社の説明は、添付資料の最初に置かれています。国内の景気については、雇用と所得の改善、インバウンド需要の拡大を挙げています。そのうえで物価上昇や金利、米国の通商政策、原材料価格の高さを並べ、先行きは不透明だとしています。
自社については「引続き各部門において収益改善に取り組んでおります」の一文です。部門ごとの記述も、売上高と損益の金額を並べたものに留まっています。
売上原価が1億200万円減った理由は、決算短信には書かれていません。採算の悪い取引を整理したのか、原材料の価格が下がったのか、撤退した事業の分が落ちたのか。どれでも説明は付きますが、私は採算の悪い取引を整理した分が大きいと考えています。理由は、同じ3か月で販売費及び一般管理費も減っているからです。
通期予想に、どこまで来ているか
通期の予想は、8月7日に公表したものから変更なしとしています。
| 項目 | 通期予想 | 第1四半期 | 残り9か月に必要な額 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 32億円 | 6億2,100万円 | 25億7,900万円 |
| 営業利益 | 2億8,000万円 | 3,300万円 | 2億4,700万円 |
| 経常利益 | 1億1,000万円 | △1,700万円 | 1億2,700万円 |
| 純利益 | 2億1,000万円 | △4,700万円 | 2億5,700万円 |
残り9か月の額は、通期予想から第1四半期を引いた私の計算です。
売上は2割弱まで来ています。3か月が過ぎた目安は4分の1ですから、少し届いていません。営業利益は1割強です。経常と純は赤字なので、進み具合では測れません。
残りの9か月で売上25億7,900万円が必要になります。前期の通期売上は28億9,100万円でした。ここから前年同期の7億200万円を引くと、前年の7月から3月は21億8,900万円です。25億7,900万円はこれより2割近く多い額です。1割強の減収で始まった期に、残りで積み増す形になっています。
予想の中に、つじつまの合わないところもあります。経常利益1億1,000万円に対して、純利益が2億1,000万円。経常より1億円多くなっています。普通は税金を引くので、純利益は経常より小さくなります。特別利益を見込んでいるのか、税金の扱いで何かあるのか。その理由も決算短信には書かれていません。
私はどう読んだか
私は、この決算を「赤字の幅が縮んだ」と受け取っています。構造が変わったとは考えていません。理由は、稼いでいる部門が不動産ひとつで、その賃料が前年同期とほとんど同じ額だからです。繊維は赤字が続いています。
原価が1億200万円下がったこと自体は評価します。売上が減った期に粗利が増えるのは、よい兆しだと思います。ただ、支払利息5,700万円が乗っている限り、営業利益が5,700万円を超えるまで経常は黒字になりません。今回は3,300万円でした。
上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
https://omikenshi.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2026/10/20261022_1.pdf
純利益の予想が経常利益を上回る理由は、読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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