はじめに
ダイトは、薬の中身をつくる会社です。錠剤や粉薬のうち、効き目のもとになる成分を「原薬」と呼びます。この会社は原薬を作って売るほか、それを錠剤の形に仕上げる仕事も、ほかの製薬会社から請け負っています。
主な取引先は、ジェネリック医薬品のメーカーと、ドラッグストアに並ぶ一般用医薬品のメーカーです。薬局で受け取る薬の箱に別の社名が載っていても、中身はこの会社の工場で作られていることがあります。患者がダイトという名前を目にすることは、まずありません。
売上も営業利益も減り、純利益だけが前年並み
10月14日に出た、2027年5月期の第1四半期決算です。対象は6月から8月までの3か月です。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 118億9,400万円 | 130億1,100万円 | −8.6% |
| 営業利益 | 7億1,200万円 | 9億9,800万円 | −28.7% |
| 経常利益 | 8億800万円 | 10億5,200万円 | −23.2% |
| 純利益 | 7億円 | 6億9,600万円 | +0.6% |
売上は1割近く、営業利益は3割近く減りました。それなのに、純利益は前年とほとんど変わりません。最初に引っかかったのはここでした。
純利益を支えた、投資有価証券の売却益1億4,500万円
損益計算書を下までたどると、営業利益と純利益のあいだに、前年には小さかった項目が並んでいます。
| 前年同期 | 今回 | |
|---|---|---|
| 営業利益 | 9億9,800万円 | 7億1,200万円 |
| 投資有価証券売却益 | 3,200万円 | 1億4,500万円 |
| 補助金収入 | ― | 9,600万円 |
| 固定資産圧縮損 | ― | 8,600万円 |
| 法人税等合計 | 3億7,700万円 | 2億4,500万円 |
| 純利益 | 6億9,600万円 | 7億円 |
いちばん大きいのは、投資有価証券売却益の1億4,500万円です。持っていた株式などを売って出た利益で、医薬品の商売から生まれたものではありません。
税金も軽くなっています。法人税等の合計は、3億7,700万円から2億4,500万円へ減りました。税引前の利益はわずかに減っただけなので、税金の減り方のほうがずっと大きいことになります。
ここまでは損益計算書の数字です。本業で落ちた分を、株式の売却益と軽い税負担で埋めた、と私は読みました。
補助金の9,600万円は、ほぼ同じ額で消えています
特別利益にはもう一つ、補助金収入9,600万円があります。これも純利益を押し上げたように見えます。
ただ、特別損失の側に固定資産圧縮損8,600万円が立っています。補助金で設備を買ったとき、受け取った額の分だけ設備の帳簿価額を下げる処理です。補助金とたいてい対で出てきます。決算短信は2つを結び付けて説明していません。ただ、同じ3か月に並んでいるので、私は対のものとして受け取りました。
補助金の9,600万円から、圧縮損の8,600万円を引きます。差し引きで残るのは1,000万円です。……ほとんど残っていない。純利益を支えたのは補助金ではなく、売却益と税金のほうです。
売上が減った3か月に、作りかけの品物が12億円増えた
貸借対照表に移ると、もう一つ気になる動きがありました。売上が減ったのに、作りかけの品物と原料が積み上がっています。
| 2026年5月末 | 2026年8月末 | |
|---|---|---|
| 売掛金 | 127億9,200万円 | 106億3,600万円 |
| 電子記録債権 | 61億3,400万円 | 49億3,800万円 |
| 仕掛品 | 53億600万円 | 65億3,300万円 |
| 原材料及び貯蔵品 | 51億8,400万円 | 59億7,500万円 |
| 商品及び製品 | 59億4,900万円 | 57億4,800万円 |
| 現金及び預金 | 9億5,400万円 | 16億8,700万円 |
仕掛品は12億2,700万円、原材料及び貯蔵品は7億9,000万円増えました。一方で、売掛金は21億5,500万円、電子記録債権は11億9,500万円減っています。2つを合わせると、33億5,000万円の減少です。回収した代金の一部が、作りかけの在庫と原料に回った形です。
いつもなら、ここでキャッシュ・フロー計算書を開きます。ところが9ページ目の注記に、第1四半期のキャッシュ・フロー計算書は作成していない、とあります。お金の出入りを項目ごとに確かめることは、今回はできません。
分かるのは、現金が7億円あまり増えたことです。その間に自己株式が6億500万円増え、長期借入金は6億5,300万円減りました。貸借対照表から言えるのは、ここまでです。
会社は、販売の減少と評価減と円安を挙げています
短信の4ページ目で、会社は減益の理由を3つ挙げています。売上の減少、棚卸資産の評価減の増加、円安による原材料費の上昇です。売上の中身も書かれています。
| 今回 | 前年同期比 | |
|---|---|---|
| 原薬 | 53億6,700万円 | −10.8% |
| 製剤 | 64億9,600万円 | −6.4% |
| 健康食品他 | 3,000万円 | −38.9% |
原薬では、一般用医薬品向けの咳止めと、ジェネリック向けの消炎鎮痛剤が減りました。製剤では医療用の受託製造が増えたものの、ジェネリックと一般用の製品が減っています。受託がどれだけ伸びたのかは、決算短信には書かれていません。
円安の説明は、そのまま受け取れます。理由は、営業外に為替差益4,400万円が出ているからです。前年同期は為替差損4,000万円でした。同じ円安が、原料の仕入れでは費用を押し上げ、営業外では利益を生んでいます。向きがそろっています。
引っかかるのは評価減のほうです。評価減が増えたのは、持っている在庫の一部が帳簿の値段では売れないと、会社側が判断したということです。その同じ3か月に、仕掛品は12億円以上増えています。評価減の金額は、決算短信には書かれていません。
残り9か月で、営業利益を前年より4分の1ほど増やす置き方
通期の予想は、7月10日に出したものから変わっていません。
| 第1四半期 | 通期予想 | 進み具合 | 残り9か月に要る額 | |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 118億9,400万円 | 540億円 | 約22% | 約421億600万円 |
| 営業利益 | 7億1,200万円 | 40億円 | 約18% | 約32億8,800万円 |
| 純利益 | 7億円 | 30億円 | 約23% | 約23億円 |
約の付いた数字は、表紙の通期予想と第1四半期の実績から、私が引き算と割り算で出したものです。
1年のうち3か月が過ぎたので、4分の1進んでいれば予定どおりです。営業利益の進み具合は、2割にも届いていません。前年の通期の実績から第1四半期の分を引くと、前年の残り9か月の額が出ます。それと比べると、売上で1割強、営業利益で4分の1ほどの上積みが要る、というのが私の計算です。
なぜ据え置いたのかは、決算短信には書かれていません。表紙に「決算補足説明資料作成の有無:有」とあります。そちらに理由があるのかもしれませんが、まだ開いていません。
私はどう読んだか
この四半期の姿は、純利益の横ばいではなく、営業利益の3割近い減益のほうだと考えています。理由は、純利益を支えた株式の売却益と税金の軽さが、毎四半期くり返すものではないからです。
心配性なので、在庫も気になっています。仕掛品の増加は、残り9か月の売上に向けた仕込みとして説明が付きます。予想を据え置いたこととも、つじつまは合います。ただ、同じ3か月に評価減が増えています。仕込みと売れ残りの割合は、決算短信には書かれていません。
自己資本比率は73.2%あり、財務の土台は厚い会社です。上がるかは知りません。第2四半期で、この仕掛品が売上に変わったかどうかを確かめます。
出典:決算短信(会社発表)
棚卸資産の評価減がいくらだったのか、増えた仕掛品がどの製品に向けたものなのかは、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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