エムティジェネックス(9820)2027年3月期 第1四半期決算分析――下期の減収減益予想が気になる

エムティジェネックス(9820)2027年3月期 第1四半期決算分析――下期の減収減益予想が気になる 決算を読む

オフィスビルの中身を入れ替える会社です。テナントが入れ替わるとき、古くなった照明や配電の設備を更新するとき、内装と電気の工事をまとめて請け負います。森トラストのグループ会社で、都心の大型ビルを持つオーナーが主な相手です。

柱はもう一つ、駐車場の運営です。時間貸しの駐車場を受託していて、こちらは工事のような波がなく、毎月の売上を積んでいく商売です。ほかにビルの保守や保険代理もありますが、大きさでいえば工事と駐車場の二本立てです。

つまり、ビルが建ったあとの「手入れ」で食べている会社です。ビルが古くなるほど、テナントが動くほど仕事が出る。そこが、この四半期の読み方に関わってきます。

売上が倍になり、営業利益は4倍になりました

8月7日に出た第1四半期決算です。表は決算短信の表紙から写しました。

今回前年同期増減率
売上高20億5,600万円9億7,600万円+110.6%
営業利益2億6,100万円6,600万円+294.2%
経常利益2億7,000万円7,500万円+259.4%
純利益1億6,300万円4,100万円+297.8%

ここまでは表紙の数字です。倍になった売上がどこから来て、なぜ利益がそれ以上に増えたのかは、表紙には書いてありません。

増えた売上は、ほぼ一つの事業から出ています

セグメントの表は短信の7ページにあります。4つの事業のうち、動いたのはリニューアル事業だけでした。売上は前年の3億1,523万円から13億5,359万円へ伸びました。セグメント利益は1,438万円から2億779万円です。説明文には「大規模オフィスの内装工事及び電気設備工事が好調に推移した」とあります。大きな案件が入った四半期だ、と受け取りました。

残りの3つは静かです。駐車場は4%ほど、保守管理は1割ほどの増収で、保険代理だけが1割強の減です。

粗利率は下がっているのに、営業利益率が上がった理由

損益計算書は短信の5ページです。売上総利益4億2,323万円を売上20億5,659万円で割ると、粗利率はおよそ2割です。前年同期は23%ほどでしたから、粗利率だけを取り出せば下がっています。

ところが販売費及び一般管理費は1億6,200万円で、前年の1億5,831万円からほとんど動いていません。売上が倍になっても、本社の人件費や家賃は倍になっていないわけです。……いや、これは当たり前か。工事は現場の原価がかさむだけで、本社の人は増えません。

粗利率が下がった分より、販管費が増えなかった分のほうがずっと大きかったことになります。それが、営業利益率が6.8%から12.7%へ上がった中身です。営業外や特別利益の助けはありません。

現金は増えましたが、工事の代金はまだ入っていません

貸借対照表は短信の3ページからです。引っかかったのは、受取手形、売掛金及び契約資産が7億5,067万円増えていることでした。「進行基準の適用による工事の進捗に伴い」と説明があります。売上は立ったが請求も入金もまだ、という額がこれだけあるわけです。反対側では工事未払金が5億1,880万円増えています。下請けへの支払いもまだ、ということです。

大型工事の途中でこうなるのは珍しくありません。ただ、第1四半期はキャッシュ・フロー計算書を作っていないので、本業で現金がいくら動いたのかは短信からは分かりません。

現金及び預金は19億9,387万円から35億6,142万円になりました。差は15億6,755万円です。ただし、その隣で関係会社短期貸付金が20億円から5億円に減っています。減った額は15億円です。差し引き6,755万円が貸付以外で増えた分、というのが私の引き算です。配当4,305万円もこの3か月に払っていますから、工事の利益は帳簿の上にあって、現金にはまだなっていない、と考えています。

3月末は、現金19億9,387万円に対して関係会社への貸付が20億円でした。それを解約して現金に戻した理由も説明文にあります。「M&A費用確保のため」です。

18億4,400万円で、電気工事の会社を子会社にしました

短信の8ページ、重要な後発事象の欄です。7月31日に株式会社ネクストの全株式を取得しました。事業は電気工事業。株式の取得価額が17億7,100万円、アドバイザリー費用などが概算で7,300万円です。合わせて18億4,400万円になります。

6月末の現金35億6,142万円からこれを払うと、残りは17億1,742万円ほどです。3月末の現金より少し少ないくらいで、無理のない支払い方です。

引っかかったのは日付です。株式を取得したのは7月31日ですが、企業結合日は「2026年9月30日(みなし取得日)」と書かれています。私の理解では、ネクストの売上と利益が連結の損益計算書に入るのは10月からです。のれんの額も「現時点では確定しておりません」とあります。

7,300万円の取得費用は、日本基準では費用として損益計算書に載ります。取得した会社の稼ぎが入る前に、費用のほうが先に来る順番です。会社側は今期への影響を「現在精査中」として、予想を動かしていません。

会社はどう説明しているか

説明文は短信の2ページです。リニューアル事業は「大規模オフィスの内装工事及び電気設備工事が好調」、駐車場は「周辺物件における工事が継続していることに伴い、工事関係車両による時間貸駐車場の稼働が好調」。二つの柱が同じ工事でつながっている、と読めます。

心配事も書いています。「労務費・資材価格について上昇傾向が続いていることや労働者不足の深刻化」。粗利率が2割に下がった話と、この一文はつながっていると考えています。

大規模オフィスの工事がどれだけの規模で、いつまで続くのかは、短信には書かれていません。決算補足説明資料は「無」、説明会も「無」と表紙にあります。

通期予想に対して、どこまで来ているか

営業利益の進捗率は38%で、3か月で4分の1という目安を超えています。第1四半期の営業利益を、表紙の通期予想6億8,600万円で割った数字です。それでも予想は据え置きでした。据え置いた予想を上期と下期に分けてみると、置き方が見えてきます。

営業利益第1四半期7〜9月下期
前年 実績6,600万円約1億400万円約2億9,400万円
今年 会社予想2億6,100万円(実績)1億9,100万円2億3,400万円
売上高第1四半期7〜9月下期
前年 実績9億7,600万円約11億2,500万円約26億1,200万円
今年 会社予想20億5,600万円(実績)17億4,400万円23億円

約の付いた数字は、私の計算です。表紙には上期の増減率が営業利益+165.8%、売上+80.8%とあります。通期は営業利益+47.9%、売上+29.4%です。この率で今年の予想を割り戻すと、前年の上期と通期が出ます。そこから前年の第1四半期と上期を引いたものです。今年の7〜9月と下期は、上期予想と通期予想から第1四半期と上期を引きました。

7〜9月までは、今の勢いが続く置き方です。ところが下期になると、売上も営業利益も前年を下回ります。大型の工事が9月までで一段落する、という前提だと受け取りました。そしてこの表には、10月から連結に入るネクストの分が乗っていません。

私はどう読んだか

第1四半期の跳ね方は、一つの大きな工事が作ったものだと考えています。理由は、伸びたのがリニューアル事業だけで、粗利率はむしろ下がり、会社自身が下期を前年より小さく置いているからです。

心配性なので、先に悪い材料を並べます。粗利率が2割に落ちたところへ、労務費と資材の上昇を明記していること。売掛金と契約資産が7億円あまり膨らんでいて、現金に変わるのはこれからであること。そして純資産45億2,046万円の会社が18億4,400万円の支出をして、のれんがまだ決まっていないことです。

それでも、この決算は良いほうだと私は読みました。営業利益率が上がった理由は販管費が増えなかったという地味なものです。子会社化の資金も借入ではなく、グループに貸していた自分の現金です。上がるかは知りません。ただ、据え置かれた予想が「取得分は抜き、下期は縮む」という前提で作られていることは、表紙だけでは分かりませんでした。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260807/140120260807514865.pdf

大規模オフィスの工事がどの物件で、いつまで続くのかは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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