眼鏡のレンズと、半導体の原版の土台を作る会社
HOYAは、ひとつの会社の中に、性格のまったく違う商売を2つ抱えています。
1つは、人の目と体に使うものです。眼鏡のレンズ、コンタクトレンズ、内視鏡、白内障の手術で目に入れるレンズがここに入ります。買うのは眼鏡店や病院で、使うのは街の普通の人です。子どもの近視が進むのを抑える眼鏡レンズも、この事業の商品です。
もう1つは、私たちが直接手に取ることのないものです。半導体の回路を焼き付けるときに使う原版の、そのまた土台になるガラス板。それから、データセンターのハードディスクに入っているガラスの円盤です。買い手は半導体の工場とディスクのメーカーです。写真をクラウドに預けるたびに、どこかでこの会社の部材が回っている、という距離の商売です。
売上は16%増、営業利益は3割増の四半期
7月31日に出た、4月から6月の決算です。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,557億4,200万円 | 2,204億600万円 | +16.0% |
| 営業利益 | 826億2,600万円 | 635億5,900万円 | +30.0% |
| 経常利益 | — | — | — |
| 純利益 | 657億9,100万円 | 518億4,000万円 | +26.9% |
国際会計基準の会社なので、経常利益の欄はありません。売上より利益のほうがずっと大きく伸びた、というのが表紙から分かることです。
3割増益の一部は、前の年の減損の裏返しでした
表紙の下のほうに、「通常の営業活動からの利益」という会社独自の物差しが載っています。営業利益から、為替の損益や減損のような一度きりのものを外した数字です。こちらは823億6,700万円で、前年同期から24.4%の増加でした。
3割と2割4分の差の大半は、前年同期の営業費用に入っていた減損損失19億1,000万円です。前の年の利益がそのぶん低く出ていたので、今年の伸びが大きく見えています。
この四半期から、新しい会計基準(IFRS第18号)を前倒しで使い始めたことも添えておきます。営業利益の中身が組み替わったので、前の年の短信の営業利益とは、そのまま並べられません。
利益の3分の2を、売上4割の事業が稼いでいます
セグメントの表まで行くと、儲けの偏りがはっきりします。
| 事業 | 売上 | 前年比 | 事業の利益 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| ライフケア | 1,547億8,800万円 | +12.8% | 299億8,400万円 | +23.6% |
| 情報・通信 | 1,009億5,400万円 | +22.7% | 556億1,500万円 | +27.8% |
出典は短信のセグメント情報(添付資料20ページ)。事業の利益は「通常の営業活動からの利益」です。
情報・通信は売上の4割ほどですが、2つの事業の利益の合計855億9,900万円のうち、556億1,500万円を稼いでいます。3分の2近くです。これは私の割り算です。1,009億5,400万円の売上に対して利益が556億1,500万円ですから、売った額の半分以上が利益として残る事業で、それがいちばん速く伸びました。全体の利益の伸びが売上の伸びを大きく超えたのは、この組み合わせのためです。
短信の説明文には「関税」が出てきません
ここで引っかかりました。
会社は決算説明会の書き起こしを公開しています。そこでCFOが、ライフケアにも情報・通信にも「米国関税の還付」という一度きりの上乗せが入っている、と話しています。還付を除いた利益率は、ライフケアで「19%を若干下回る水準」、情報・通信で「54%台」だそうです。説明会の書き起こしにある数字です。
ところが短信を最後まで追っても、「関税」という言葉は一度も出てきません。添付資料2〜3ページの事業ごとの説明は、需要の増加と、値の張る製品の比率で増益を説明しています。還付の金額そのものは、短信にも説明会の書き起こしにも書かれていませんでした。
もう一つ気になったのは、還付がどの欄に入っているかです。会社はさっきの物差しを「非経常的な要因を含まない基礎的な収益力を評価する指標」と説明しています(添付資料18ページ)。一方で、ライフケアの「その他の非経常的損益」は100万円しかありません。還付がこちらに入っていれば、もっと大きな額になるはずです。還付は、一度きりのものを外したはずの物差しの内側に入っている、と私は受け取りました。……外すための物差しなのに、中に入っている。
伸びの中には、為替の分も入っています。説明会の書き起こしでは、為替の影響を除いた売上の伸びは7%でした。短信の中でも、内視鏡は「円安の進行により増収」で「現地通貨ベースでは減収」と書かれています。
現金が減ったのは、株主へ払ったからでした
| 前年の4〜6月 | 今年の4〜6月 | |
|---|---|---|
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 572億2,700万円 | 700億円 |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | △117億3,800万円 | △71億600万円 |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | △389億5,700万円 | △882億4,100万円 |
| うち配当金の支払い | △393億2,500万円 | △569億1,200万円 |
| うち自己株式の取得 | △100万円 | △280億5,200万円 |
出典は短信のキャッシュ・フロー計算書(添付資料13〜14ページ)。
法人税の支払いが337億6,800万円に増えても、営業キャッシュ・フローは前年より増えました。利益に現金の裏付けがあります。
配当は569億1,200万円、自社株買いは280億5,200万円でした。2つを足すと、849億6,400万円です。営業で入った700億円より多く払ったことになります。そのため手元の現金は、期首の5,740億9,200万円から5,554億9,400万円に減りました。
後発事象の欄には、上限2,000億円の自社株買いが載っています。期間は8月3日から2027年3月24日までで、買った株は消却する予定です。手元の現金5,554億9,400万円に対して、3分の1ほどの大きさです。
会社は需要と品ぞろえで説明しています
短信の説明文では、マスクブランクスは「EUV向け先端品の開発活動等」で需要が増え、値の張る品の比率も伸びたとしています。ハードディスク用のガラスは、データセンターの記憶装置の需要増です。この説明は、情報・通信の利益が売上より速く伸びた数字と合っていて、私はそのまま受け取ります。留保は、関税の還付に触れていない一点だけです。
会社の心配も短信に書いてあります。情報・通信の製品の多くは中間の部材なので、最後の製品の景気で伸びが左右されます。海外の売上が大きく為替の影響も受けるので、長い期間の予想は難しい、とあります(添付資料5ページ)。利益の3分の2を稼ぐ事業について、会社自身がそう書いています。
説明会では、内視鏡事業の譲渡を含めた検討を始めたことも話されています。短信の後発事象の欄にある項目は、自社株買いの1件です。同じ日に出た適時開示は、この記事では読んでいません。
通期の予想は、第3四半期まで出てきません
この会社は、第1四半期のときに上期の予想だけを出し、通期の予想は第3四半期の発表のときに出します。通期の数字は、短信の予想の欄が空いたままです。
上期の予想から4〜6月を引くと、7〜9月の見込みが分かります。
| 4〜6月 | 7〜9月 | 上期累計 | |
|---|---|---|---|
| 売上 前年 | 2,204億600万円 | 約2,344億9,300万円 | 4,548億9,900万円 |
| 売上 今年 | 2,557億4,200万円 | 約2,652億5,800万円 | 5,210億円(予想) |
| 営業利益 前年 | 635億5,900万円 | 約681億8,500万円 | 1,317億4,400万円 |
| 営業利益 今年 | 826億2,600万円 | 約823億7,400万円 | 1,650億円(予想) |
約の付いた7〜9月の数字は、上期累計から4〜6月を引いた私の引き算です。
7〜9月の売上は4〜6月より95億円ほど多く見込んでいるのに、営業利益はほぼ同じです。説明会では、上期の予想に還付の反動を織り込んだと話しています。前年の同じ3か月と比べれば、それでも2割増の見込みです。
私はどう読んだか
私は、還付と円安を差し引いても、情報・通信の伸びは本物だという見方をしています。理由は、説明会の話では還付を除いても利益率が1ポイントほどしか下がらず、営業キャッシュ・フローも増えているからです。
心配なのは、利益の3分の2が、半導体とデータセンター向けの部材に乗っていることです。減価償却費は160億800万円で、前年から3割近く増えました。説明会では、本格的に増えるのは来年度以降だと話しています。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260731/140120260730504068.pdf
関税の還付がいくらだったのかは、短信からも説明会の書き起こしからも読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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