医師が開くサイトから、病室の患者衣まで
エムスリーは、医師向けの情報サイト「m3.com」を運営している会社です。医師は薬や治療の情報を得るためにサイトを開き、製薬会社はその医師たちに自社の薬を知ってもらうためにお金を払います。
買収で事業を増やしてきました。今は治験の支援、医師や薬剤師の転職支援、クリニックの電子カルテ、入院患者向けのサポートセットまで手がけ、海外にも広げています。
売上は増え、純利益は減った半年
11月4日に出た、4月から9月までの中間決算です。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1,818億5,300万円 | 1,708億8,500万円 | +6.4% |
| 営業利益 | 363億3,500万円 | 359億9,200万円 | +1.0% |
| 経常利益 | 短信に項目なし | 短信に項目なし | — |
| 純利益 | 199億9,700万円 | 227億1,100万円 | △11.9% |
IFRSの会社なので、短信に経常利益の項目はありません。営業利益のわずかな増益の中身に引っかかりました。
この短信に、キャッシュ・フロー計算書が無かった
私は短信を開くと、キャッシュ・フロー計算書から探します。今回は添付資料の目次に載っていませんでした。
念のため10ページを開くと、そこはセグメント情報です。説明会資料にも見当たりません。
分かるのは貸借対照表の差までです。現金及び現金同等物は半年で98億2,400万円減りました。のれんと無形資産は合わせて370億円以上増えていて、添付資料4ページは新規連結子会社の取得等を理由に挙げています。
買収に資金を使ったのだろうとは思います。ただ、この半年に事業でいくら現金を稼いだのかは分かりません。
表紙の注記によると、未定の配当予想は「今後の資金需要動向とキャッシュ・フローの状況」を勘案して決めるそうです。その判断材料を、この短信では確かめられません。……これは歯がゆいな。半期報告書の提出予定日は11月13日なので、そこで確かめます。
売上総利益から販管費を引くと、12億円減っていた
現金を追えないので、損益計算書を上から引き算しました。
| 今回 | 前年同期 | 増減 | |
|---|---|---|---|
| 売上総利益 | 894億6,100万円 | 859億9,100万円 | 約+34億7,000万円 |
| 販売費及び一般管理費 | △571億700万円 | △524億1,900万円 | 約△46億8,800万円 |
| 売上総利益から販管費を引いた利益 | 約323億5,400万円 | 約335億7,200万円 | 約△12億1,800万円 |
| 持分法による投資損益 | 19億5,500万円 | 15億7,900万円 | 約+3億7,600万円 |
| その他の収益 | 26億7,300万円 | 9億2,300万円 | 約+17億5,000万円 |
| その他の費用 | △6億4,600万円 | △8,200万円 | 約△5億6,400万円 |
| 営業利益 | 363億3,500万円 | 359億9,200万円 | +3億4,300万円 |
約の付いた数字は、短信の損益計算書から私が引き算したものです。四捨五入の関係で、合計は100万円ずれます。
売上総利益から販管費を引いた利益は、12億1,800万円減っています。それでも営業利益は3億4,300万円増えました。差を埋めた中でいちばん大きいのは、17億5,000万円増えたその他の収益です。
増益が大きい3事業には、短信が条件を付けていた
| セグメント | 今回の利益 | 前年同期の利益 | 増減 |
|---|---|---|---|
| メディカルプラットフォーム(m3.comなど) | 184億8,700万円 | 178億7,000万円 | +6億1,700万円 |
| エビデンスソリューション(治験支援など) | 19億7,300万円 | 23億3,100万円 | △3億5,800万円 |
| キャリアソリューション(人材) | 44億3,800万円 | 43億4,300万円 | +9,500万円 |
| サイトソリューション(医療機関の運営支援など) | 9億3,000万円 | 16億9,400万円 | △7億6,400万円 |
| ペイシェントソリューション(患者サポート) | 20億1,100万円 | 10億5,400万円 | +9億5,600万円 |
| 海外 | 98億5,400万円 | 89億2,500万円 | +9億2,900万円 |
| その他エマージング事業群 | 3億400万円 | 5億7,800万円 | △2億7,400万円 |
| 調整額 | △16億6,100万円 | △8億400万円 | 約△8億5,700万円 |
調整額の増減だけは短信の表に載っていないので、私が引き算しました。
増益額が大きい3事業の理由を、添付資料3〜4ページで確かめました。短信には、どれも事業の伸びだけで増えたとは書かれていません。
ペイシェントソリューションの理由には、利用者の増加に加えて、投資関連の一過性利益と患者衣の会計上の取扱いの変更が並びます。
メディカルプラットフォームの説明文には、医療現場のDX化支援の伸長とともに「減損損失の戻入」があります。利益率の高い製薬マーケティング支援事業の売上は前年同期比で減少した、とも書かれています。ここがいちばん重いと受け取りました。
海外は、短信が前年同期比の円安を増収の理由の一つに挙げています。
その他の収益の内訳も、戻入と一過性利益の金額も、短信にも説明会資料にも書かれていません。戻入と一過性利益がその他の収益の増加の中心だと私は読みました。
減益の側で大きいサイトソリューションは、ホスピス事業の診療報酬改定に伴う単価低下と、新規開設に向けた先行投資費用が理由です。
純利益の1割減は、税金の話でした
税引前利益は366億8,100万円から366億2,000万円へ、ほぼ同じです。変わったのは法人所得税費用で、113億6,100万円から139億9,700万円へ増えました。
なぜ増えたのかは、短信には書かれていません。説明会資料の脚注に、海外子会社による配当に伴う一過性の税金費用、とあります。
金額は分かりませんが、この説明はそのまま受け取ります。理由は、配当に伴う税金なら、商売の良し悪しとは別の話だからです。
会社は「第2四半期で増収増益に転換」と説明している
これは短信ではなく、説明会資料の書き方です。同じ資料は、製薬向けの受注残が第2四半期末で前年比14%増と示しています。
受注が改善しているのは認めます。ただ、受注残はまだ売上になっていない数字です。上期の製薬向けの売上が減ったことは、短信に書かれた結果です。
説明会資料はメディカルプラットフォームの第2四半期の増益について、先行投資の発生タイミングと収益ミックス改善等を理由に挙げています。その欄に減損損失の戻入の言葉はありません。
「発生タイミング」は、費用が後ろへずれた可能性も含む言葉だと私は受け取りました。
通期予想は変えず、下期に重い数字が残った
| 通期予想 | 上期の実績 | 進捗率 | 下期に必要な額 | |
|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 4,000億円 | 1,818億5,300万円 | 約45.5% | 約2,181億4,700万円 |
| 営業利益 | 800億円 | 363億3,500万円 | 約45.4% | 約436億6,500万円 |
| 純利益 | 530億円 | 199億9,700万円 | 約37.7% | 約330億300万円 |
約の付いた数字は、表紙の通期予想と上期の実績から私が計算したものです。
上期の営業利益は363億3,500万円、8月6日に出た第1四半期は180億7,700万円でした。上期から第1四半期を引くと、第2四半期は182億5,800万円です。下期の必要額を2で割ると、1四半期あたり約218億円になります。第2四半期より2割ほど多い水準を、2回続ける計算です。
前期通期の営業利益735億4,700万円から前年の上期を引くと、前年の下期は375億5,500万円でした。今年の下期に必要な額は、これより16%ほど多いことになります。
子会社のワイズマンは7月に連結が始まったので、下期は半年分の業績が入ります。寄与額は短信に書かれていません。
説明会資料の図では、上期の売上収益の期初予想1,920億円に約100億円届いていませんが、短信の注記は業績予想の修正を「無」としています。
増益は額面より弱い、という見方をしています
今回の上期を、悪い決算だとは考えていません。売上は増え、親会社所有者帰属持分比率は61.8%あります。純利益の減少も重く受け取っていません。
それでも、営業増益は額面より弱いという見方をしています。理由は、売上総利益から販管費を引いた利益が減り、その差を埋めたのがその他の収益の増加だからです。
費用の増加は買収と先行投資によるもので、受注が売上になれば利益は戻る、という考え方もできます。心配性の私は、利益率の高い製薬向けの売上が減ったことを先に気にします。
下期に1四半期あたり218億円の営業利益が出るのか、次の決算で確かめます。この先どうなるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
その他の収益が増えた内訳と、通期予想の下期の前提は読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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