ホテルや旅館が、自分のホームページで直接予約を取るための仕組みを作っている会社です。宿の公式サイトに「空室を探す」の枠があって、日付を入れると部屋と料金が出て、そのまま決済まで済む。あの裏側で動いているのが、この会社の予約エンジンです。泊まる側は名前を知らないまま使っています。
買っているのは宿のほうです。大手の予約サイトを通すと手数料を取られるので、公式サイトから直接取れる分を増やしたい。外国語の問い合わせに人を張り付けられないので、会話の自動応答も欲しい。台湾など海外にも同じものを持って出ています。
この会社の短信を開くのは初めてです。1ページ目は文句のつけようがない数字でした。引っかかったのは、貸借対照表のほうです。
この決算で何が起きたか
9月14日に出た第3四半期決算です。2025年11月から2026年7月までの9か月分になります。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高(営業収益) | 26億1,300万円 | 18億2,400万円 | +43.2% |
| 営業利益 | 7億5,800万円 | 3億2,400万円 | +133.7% |
| 経常利益 | 8億7,400万円 | 3億6,500万円 | +139.3% |
| 純利益 | 5億7,400万円 | 3億800万円 | +86.2% |
営業利益率は17.8%から29.0%へ上がりました。同じ日に通期予想も上方修正されています。ここまでが表紙です。
現金250億円のうち、230億円は宿泊客のお金
貸借対照表を開くと、現金及び預金が250億3,900万円あります。前期末が180億500万円ですから、9か月で70億円増えました。一方で純資産は23億4,800万円しかなく、自己資本比率は8.5%。最初は目を疑いました。
種明かしは負債の側にあります。預り金が230億7,400万円。前期末の164億1,400万円から66億6,000万円増えています。5ページ目に「tripla Bookにおける宿泊代金の預り金」と説明があります。宿泊客が払った代金を、宿に渡すまでの間この会社が預かっているものです。現金の増え方と預り金の増え方が、ほぼ同じ幅で並んでいます。
現金及び預金の250億3,900万円から、預り金の230億7,400万円を引きます。残るのは約19億6,500万円。これが預かり分を除いた手元の現金です。私の引き算です。自己資本比率8.5%は、他人のお金が資産と負債の両側に乗っているから低く見えているだけで、財務が痛んでいる数字ではないと受け取りました。
なお、この短信にキャッシュ・フロー計算書はありません。第3四半期では省略できる決まりなので珍しくはないのですが、この会社の現金の動きは預り金と一緒に見ないと意味を持ちません。今回はそこが見られませんでした。
預かった現金に、利息が付き始めている
経常利益が営業利益より多い理由がここです。経常利益8億7,400万円から営業利益7億5,800万円を引きます。約1億1,600万円で、ほぼ営業外収益の合計と重なります。
| 営業外収益 | 今回 | 前年同期 |
|---|---|---|
| 受取利息 | 6,614万円 | 2,095万円 |
| 為替差益 | 4,849万円 | 632万円 |
| 補助金収入 | ― | 1,401万円 |
| 合計 | 1億2,632万円 | 5,097万円 |
どこから付いた利息かは、短信には書かれていません。ただ、預金が9か月で70億円増え、日本銀行が6月に政策金利を上げたことは、会社自身が4ページ目に書いています。宿から預かった代金に利息が付いている、と私は読みました。
これは一時的な収入ではありません。預り金は取扱高が増える限り膨らみますし、金利が下がらない限り利息も付き続けます。ただ、自分の商売で稼いだ分でないことも確かです。為替差益のほうは円安次第で、来期も同じ額が入るとは限りません。
純利益の伸びが鈍い理由は、税金です
表を見返すと、経常利益が2.4倍なのに純利益は1.9倍です。間にあるのは税金でした。法人税等合計が5,593万円から3億204万円へ。税引前利益は8億7,803万円で、法人税等は3億204万円。割ると34%です。前年は税引前利益3億6,715万円に対して5,593万円。割ると15%でした。……いや、前年が軽すぎたのか。
前期末の利益剰余金は△8,109万円で、この会社はつい最近まで累積の赤字を抱えていました。繰延税金資産は1億6,734万円から8,089万円に減っています。過去の損失で税金を軽くできる分を使い切りつつあり、普通の税率に戻る途中にある、と受け取りました。
今期の利益剰余金は4億9,324万円のプラスに転じています。稼ぐ力が落ちたのではなく、税金が普通になっただけです。ただ、来期以降の純利益は、営業利益ほどは伸びない前提でいたほうがよさそうです。
売上は、取扱高より速く伸びています
4ページ目に、取扱高(GMV)が前年同期比30.3%増の1,563億400万円になったとあります。売上高の伸びは43.2%。扱う代金1万円あたりの取り分が増えていることになります。
9ページ目の追加情報には、決済の従量収益で「原価低減によるtake rateの改善」を目指し、そのためにオーストラリアに現地法人を作ると書いてあります。施設数も690増えて4,530になったので、施設ごとの月額固定の分も増えているはずです。どちらがどれだけ効いたかの内訳は、短信にはありません。
会社はどう説明しているか
宿の側は客室単価が上がる一方で人手が足りず、稼働できる客室を制限する施設もある。だから予約サイトへの手数料を減らして直販を増やし、省人化をデジタルで進める傾向が「構造的に強まっている」と説明しています。
一方で観光庁の統計を引き、この9か月の延べ宿泊者数は前年比96.2%、訪日外国人は91.7%だと自分から書いています。市場が伸びたから伸びた決算ではない、という点は、そのまま受け取っています。
上方修正の理由は、同じ日に出した「通期業績予想の修正に関するお知らせ」を参照するようにとあるだけで、短信には書かれていません。その資料を、私はまだ開いていません。
通期予想に対して、どこまで来ているか
| 通期予想 | 9か月の実績 | 進捗率 | 残り3か月に必要な額 | 残り3か月の前年比 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 36億800万円 | 26億1,300万円 | 約72.4% | 約9億9,500万円 | 約+32.9% |
| 営業利益 | 10億2,900万円 | 7億5,800万円 | 約73.7% | 約2億7,100万円 | 約+38.7% |
| 経常利益 | 11億7,100万円 | 8億7,400万円 | 約74.6% | 約2億9,700万円 | 約+35.9% |
| 純利益 | 7億6,600万円 | 5億7,400万円 | 約74.9% | 約1億9,200万円 | 約−0.7% |
約の付いた数字は私の計算です。進捗率は9か月の実績を通期予想で割ったもの、残り3か月に必要な額は通期予想から9か月の実績を引いたものです。前年比は、その額を前年の同じ3か月と比べています。
進捗はどの段階も4分の3にほぼ届いています。上方修正した直後で4分の3ですから、修正後の予想はいまの伸びに合わせた水準です。残り3か月の営業利益は前年の同じ時期より4割近く多い額が要りますが、ここまでの9か月が2.3倍ですから、無理な数字ではありません。
純利益だけは、残り3か月が前年並みです。営業利益が4割増えて純利益が横ばいになる理由は、短信には書かれていません。前年の第4四半期に税金が軽かった分が今年は無い、と私は考えています。確かめるには前期の通期短信を開く必要があります。
私はどう読んだか
良い決算だと考えています。理由は、営業利益率の上がり方が、営業外や一時的な収入ではなく、施設数と取扱高という本業の数字の伸びで説明できるからです。市場が縮む中でそれをやっています。
心配性なので下から見ます。気にしているのは、経常利益の上積みが預かった現金の利息と為替差益で、どちらも会社の腕とは別の場所で決まることです。もう一つ、230億円を預かる立場は、現金の管理を間違えると重い責任が来ます。預かった代金をどう管理しているかは、短信には書かれていません。
出典:決算短信(会社発表)
受取利息6,614万円が、預り金にあたる預金に付いたものなのかどうかは、短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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