ENEOSホールディングス(5020)2027年3月期 第1四半期決算分析――9か月ゼロの予想が気になる

ENEOSホールディングス(5020)2027年3月期 第1四半期決算分析――据え置きが腑に落ちない 決算を読む

はじめに

海外から原油を船で運んできて、製油所でガソリン、灯油、軽油、ジェット燃料に分け、街のサービスステーションや運送会社、航空会社に届ける会社です。国内で給油する人の半分ほどは、どこかでこの会社の燃料に触れています。

原油からは燃料だけでなく、ペットボトルや合成繊維のもとになる化学品も取り出します。合成ゴム、電気、道路の舗装まで手がけています。私にとっては、決算期になると手が冷える2月に、灯油を買いに行く先の会社でもあります。

8月7日に出た第1四半期決算です。表紙の数字が大きすぎて、逆に読む気が失せる種類の決算でしたが、10ページ目まで行くと別の話が出てきました。

この決算で何が起きたか

今回前年同期増減率
売上高3兆4,078億3,100万円2兆8,699億7,400万円+18.7%
営業利益4,825億9,600万円502億9,900万円+859.5%
税引前利益4,776億5,900万円443億9,300万円+976.0%
純利益4,149億8,100万円△145億1,600万円

この会社はIFRSなので経常利益の行がなく、代わりに税引前利益を置きました。純利益の4,150億円という数字は、あとでもう一度出てきます。

4,826億円のうち、1,952億円は在庫の値段の話

短信の2ページ目に「在庫影響を除いた利益相当額」という行があります。原油は買ってから売れるまでに時間がかかるので、その間に値段が上がると、安く仕入れた分が売上原価に残って会計上の利益が膨らみます。値段が下がると逆に減ります。

内訳は4ページ目にあります。石油製品ほかセグメントの営業利益4,066億円のうち、在庫影響による利益が1,952億円です。この1,952億円を除いた営業利益相当額は2,114億円です。それでも前年より1,250億円多い、と会社は書いています。

セグメントで並べると、値段の話を除いても稼ぎ方が広がっています。

営業利益今回前年同期
石油製品ほか4,066億円16億円
石油・天然ガス開発271億円155億円
機能材117億円53億円
電気27億円80億円
再生可能エネルギー3億円3億円
その他352億円208億円

機能材はブタジエンの値上がり、その他は金属価格の上昇とAI向けの需要だと4ページと5ページにあります。ここまでは、良い決算の中身の話です。

引っかかったのは、原油の値段の動き方のほうです。4ページ目によると、ドバイ原油は期初の109ドルから120ドルまで上がり、期末は68ドルで終わっています。在庫影響の1,952億円は、上がった期間に出た利益です。そして四半期の最後の日、原油は期中平均の96ドルより28ドル安いところにいました。

利益と同じくらい、在庫が積み上がっている

7ページ目の貸借対照表で、棚卸資産が3か月で1兆5,578億円から2兆1,366億円へ増えています。増えた額は5,788億円です。この四半期の営業利益4,826億円より大きい額が、在庫として残っている計算です。

その結果が、13ページ目のキャッシュ・フロー計算書に出ています。税引前利益は4,777億円あるのに、営業活動によるキャッシュ・フローは586億円です。前年同期は1,824億円でした。減った理由の筆頭は、棚卸資産の増加5,755億円です。

現金は期首の8,773億円から4,701億円へ減りました。減った額は4,072億円です。社債と借入金の返済に1,588億円、配当と自己株式の取得で770億円ほど使いましたが、前から決まっていた支出です。……いや、在庫の増え方のほうが、どう考えても大きい。

在庫が増えた理由は、4ページ目にあります。会社は「国内向けの安定供給を優先したことに伴い輸出数量が減少した」と書き、国家備蓄の活用、調達先の多角化、市場からの緊急調達をしていると続けています。ホルムズ海峡が封鎖され、中東のプロジェクトでは原油の生産が止まったとも5ページ目にあります。

ここまでは、短信に書いてある事実です。高い値段のときに、普段より多く、急いで買った、と私は受け取りました。安定供給の会社としては正しい行動だと考えます。

会社はどう説明しているか

会社が自分の言葉で書いているのは、大きく3つです。原油が高い水準で推移して在庫影響の利益が出たこと。パラキシレンとベンゼンの利ざやが、中東情勢による原料不足で良くなったこと。そして石油製品の販売数量が、国内需要の構造的な減少と輸出の減少で、前年より9.6%減ったことです。

利益が出た理由については、そのまま受け取ります。留保を付けるのは、この状況が続くのか、という点です。会社自身が「中東情勢の緊迫化を背景に原油供給を巡る不確実性が高まっており、当社の原油調達環境にも影響が生じています」と書いています。利ざやが良くなった理由も、在庫の利益が出た理由も、どちらも中東で物が足りなくなったことから来ています。同じことを、心配事として挙げているわけです。

通期予想に対して、どこまで来ているか

ここが、この短信でいちばん腑に落ちない場所です。会社は5月14日に出した通期予想を据え置きました。

通期予想第1四半期残り9か月
営業利益6,100億円4,826億円約1,274億円
純利益4,150億円4,150億円約0円
在庫影響を除いた利益相当額5,900億円2,874億円約3,026億円

約の付いた数字は、通期予想から第1四半期を引いた私の引き算です。純利益の行を見てください。通期4,150億円に対して、3か月で4,150億円です。残りの9か月を、会社はゼロと置いたままにしています。

もう一つ、在庫影響の行と営業利益の行を並べると、この置き方の意味が見えてきます。営業利益6,100億円から、在庫影響を除いた5,900億円を引きます。1年間の在庫影響を200億円と見込んでいたことになります。ところが第1四半期だけで1,952億円出ました。予想どおりに着地するなら、残りの9か月で1,952億円から200億円を引いた分の、在庫影響の損失が出る、という置き方です。1,752億円ほどです。

しかも16ページ目に、JX金属の公開買付けに応募した分で、中間期にその他の収益を約833億円計上する見込みだと書いてあります。この会社のその他の収益は営業利益の中に入ります。残り9か月の営業利益1,274億円から833億円を引きます。本業と在庫影響を合わせて441億円ほどしか残らない計算になります。

5月に出した予想が、8月の時点でここまでずれたのに、なぜ動かさなかったのか。その理由は、決算短信には書かれていません。

私はどう読んだか

読み方は2つあると考えています。予想が古いままなのか、会社が9か月分の在庫影響の損失を本気で見込んでいるのか。

私は後者の見方をしています。理由は、期末の原油が68ドルで、期中平均の96ドルよりはっきり下にあるからです。その値段で売っていくことになる在庫が、2兆1,366億円あります。上がるときに1,952億円出たものは、下がるときには同じ道を戻ります。会社は8月7日の時点でそれを知っていて、それでも4,150億円を消さなかったのだと受け取りました。

それが正しいなら、表紙の増減率のほとんどは、原油の値段が通り過ぎた跡です。値段の話を除いた2,874億円が、この会社が3か月で稼いだ本当の大きさだと思っています。上がるかは知りません。私が数えているのは、次の短信で棚卸資産の行がいくつになっているかです。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260807/140120260805510351.pdf

棚卸資産が3か月で5,788億円増えたうち、値段が上がった分と量を多く買った分がそれぞれいくらなのかは、読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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