冨士ダイス(6167)第1四半期決算分析――上期予想930百万円の下に、通期予想840百万円が並んでいた

冨士ダイス(6167)第1四半期決算分析――上期予想930百万円の下に、通期予想840百万円が並んでいた 決算を読む

はじめに

冨士ダイスは、超硬合金でできた耐摩耗工具や金型を作っている会社です。超硬合金というのは、タングステンを主原料にした、とても硬くて摩耗しにくい金属のこと。何かを大量に、同じ形で、削れずに作り続けたい工場が、この会社の道具を買います。缶や電池の部品を打ち抜く金型、鋼管を引き抜く工具。作る側ではなく、「作るための道具」を作る側です。受注生産で、直接売る。取引先は製造業を中心に3000社ほどあるそうです。

この会社の泣きどころは、主原料のタングステンが中国からの輸入に大きく頼っていることです。今回の短信には、その心配が何度も出てきます。8月7日に出た第1四半期決算を読みました。

この決算で何が起きたか

項目今回前年同期増減率
売上高5,0514,125+22.4%
営業利益618175+252.4%
経常利益632164+284.0%
純利益442122+260.2%

(単位:百万円)

売上は2割強増え、営業利益は前年同期の3倍を超えました。営業利益率は前年同期の4.2%から12.2%へ。1ページ目だけ見れば、文句のつけようがない四半期です。ただ、同じ1ページ目に妙な並びがありました。

最初の表では分からなかったこと

上期予想より通期予想のほうが小さい

1ページ目の業績予想の欄です。第2四半期累計の営業利益予想が930百万円。その下の通期予想が840百万円。上期の予想より、通期の予想のほうが小さい。引き算すると下期の営業利益は90百万円のマイナスになりますが、これは私が引き算した数字で、会社が印字したのは930と840という並びだけです。

……いや、これは会社が自分で「下期は利益が出ない」と置いているということだ。

利益が3倍になった四半期の短信で、会社自身が続かない絵を描いている。ここに引っかかりました。理由は、めくっていくと出てきます。

「総平均法だから、まだ効いていない」

5ページ目に、この短信でいちばん大事な一文があります。タングステン価格は引き続き高い水準にあるが、原価計算に総平均法を採用しているため、当四半期の製造原価への影響は抑えられている、と会社が自分で書いています。

総平均法というのは、安いときに仕入れた在庫と高いときに仕入れた在庫を平均して原価にする方法です。つまり、高くなった原料の値段は、在庫が入れ替わるにつれて、これから原価に効いてくる。今期の利益率12.2%には、その重さがまだ乗っていません。上期930、通期840という予想の置き方は、この一文とつじつまが合っています。

現金が2,154百万円減り、在庫が積み上がった

貸借対照表です。現金及び預金は7,130百万円から4,975百万円へ減りました。3ヶ月で2,154百万円の減少です。一方で増えたのがこちらです。

項目前期末今回
原材料及び貯蔵品1,8452,848
仕掛品1,8982,575
商品及び製品245360

(単位:百万円)

会社の説明は「原材料価格高騰に伴う支出の増加」。高くなった原料を、現金を減らして倉庫に積んでいる形です。輸出規制で調達が不安定なら先に確保するのは分かります。ただ、この高い在庫が総平均法でこれから原価に流れ込む在庫でもある。第1四半期のキャッシュ・フロー計算書は作成されていないので、現金の減り方の内訳はこれ以上追えません。

経常利益の伸びには為替の追い風もある

損益計算書の営業外を見ると、前年同期は為替差損が25百万円あり、今回は逆に為替差益が4百万円。経常利益の増減率が営業利益より大きく見えるのは、この差の分です。大きな話ではありませんが、1ページ目の「+284.0%」だけ見ると気づきません。

会社はどう説明しているか

利益が増えた理由として会社が挙げているのは、価格転嫁が進んだこと、外注加工費・電力燃料費・修繕費などの費用が減ったこと、海外子会社の寄与です。中国では光学機器関連や半導体関連の素材販売が好調、休眠していたインド子会社も4月に再開したとあります。売上の内訳では、超硬素材が前年同期比58.8%増と目立ちますが、ここも「販売数量は減少したものの、価格転嫁が進んだ結果」と書かれています。数量ではなく、値段で伸びた売上です。

原料の調達不安に対しては、ダイジェット工業と省タングステン合金の販売で提携し、使用済み超硬工具を回収するリサイクル事業も始めた、と。守りの手はいくつも打っています。ただ、それが利益にいつ効くのかは、短信には書かれていませんでした。

通期予想に対して、どこまで来ているか

進捗率
売上高20.7%
営業利益73.6%
経常利益68.7%
純利益71.3%

1四半期の目安が4分の1のところ、営業利益はすでに7割強まで来ています。普通なら上振れ濃厚と読む数字ですが、この会社の場合は違います。予想自体が「下期はほぼ利益なし」という形で組まれているので、進捗73.6%は予定どおりの通過点です。なお、この予想は同じ8月7日に修正されたものです。

配当は年40円の予想です。予想の1株利益31.67円に対して、配当性向は126.3%。利益より多く配る計画です。自己資本比率は78.4%あるので今期すぐ困る話ではありませんが、下期の利益が予想どおり薄いなら、来期も同じ配当を続けられるかは別の問題になります。

私はどう読んだか

私は、この四半期の利益をそのまま伸ばして考えない側に寄せて読んでいます。理由は、会社自身がそう言っているからです。総平均法の一文、上期930に対する通期840という予想の置き方、高い原料を積み上げた貸借対照表。3つが全部同じ方向を向いています。むしろこの短信は、良い数字を出した四半期に「これは続きません」と自分で注釈を付けている、珍しく正直な短信だと思いました。価格転嫁が想定より進めば話は変わるので、私の読み違いかもしれません。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260807/140120260807515090.pdf

キャッシュ・フロー計算書が作成されていないため、現金2,154百万円の減少のうち在庫以外に何がいくら効いたのかは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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