はじめに
会社が持っている工場、研究所、物流倉庫。使わなくなったり、使い方を変えたくなったりしたそうした不動産について、売るか、貸すか、建て替えるかの相談に乗るのがこの会社です。相談相手は上場企業だけではありません。後継ぎの問題を抱えた中堅・中小企業もいます。大手の不動産会社が手間に見合わないと敬遠しがちな、小ぶりな物件が中心です。
仲介や助言で手数料をもらうだけでもありません。自分のお金で物件を買い、手を入れて売る仕事もしていて、いまはこちらが売上の大半を占めています。ほかに、地方銀行などが物件の情報を持ち寄る仕組みを月額で貸しています。不動産会社ですが、相手は住む人ではなく、工場の使い道に困っている経営者です。
売上は3倍近く、利益は2倍に届かず
10月15日に出た、2026年8月期の通期決算です。
| 今回(2026年8月期) | 前期(2025年8月期) | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 70億2,000万円 | 25億5,500万円 | +174.8% |
| 営業利益 | 11億4,400万円 | 6億1,200万円 | +86.7% |
| 経常利益 | 10億5,700万円 | 5億9,800万円 | +76.7% |
| 純利益 | 7億4,300万円 | 4億4,500万円 | +66.8% |
下の行ほど伸びが鈍くなっています。売上総利益18億1,600万円を売上で割ると4分の1ほどで、前期は4割を超えていました。物件を買って売る仕事では、売った値段がそのまま売上になり、買った値段が原価になります。この仕事が増えれば、率は下がります。
7月に出た第3四半期までの累計売上は31億3,500万円でした。70億2,000万円から引くと、6月から8月の3か月だけで38億8,500万円です。1年の売上の半分以上が、最後の四半期に入ったことになります。物件の売却は1件が大きいので、どの四半期に決まるかで数字が大きく動きます。
営業キャッシュ・フローの黒字は、在庫の物件が減った分
| 今回 | 前期 | |
|---|---|---|
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 14億6,016万円 | △3億8,218万円 |
| うち販売用不動産の増減 | 6億6,280万円 | △7億5,966万円 |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | △23億5,886万円 | △1億3,075万円 |
| うち有形固定資産の取得 | △23億302万円 | △1億1,030万円 |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | 22億9,504万円 | 18億8,970万円 |
| うち株式の発行による収入 | 24億5,763万円 | 7億3,526万円 |
(販売用不動産の行は、減るとプラス、増えると△です)
営業キャッシュ・フローは、前期の赤字から黒字に変わりました。利益に次いで効いているのは、販売用不動産が減った分です。前期は逆に物件を仕入れて在庫が増え、それが赤字の原因でした。
売るために買った物件は在庫にあたり、その出入りは営業活動に入ります。仕入れた年は赤字、売った年は黒字です。本業の稼ぐ力とは別に、物件をどれだけ抱えたかで振れる作りになっています。
一方、投資活動では有形固定資産の取得に23億302万円を払っています。短信の5ページ目には、賃貸用不動産の取得などで建物と土地が増えたとあります。売るための物件は減らし、貸すための物件を大きく増やした1年です。
販売用不動産の減り方が、二つの表で合わない
引っかかったのは、ここからです。
貸借対照表で販売用不動産を前期末と比べると、14億7,532万円から13億5,214万円へ動いています。減ったのは1億2,318万円だけです。キャッシュ・フロー計算書のほうでは6億6,280万円減っています。6億6,280万円から1億2,318万円を引きます。差は約5億4,000万円です。
……いや、これは変だ。お金を払わずに、5億円台の物件が在庫に入ってきたことになる。
有形固定資産を並べると、反対側に同じくらいの差が出てきます。取得に払ったのが23億302万円、減価償却費は無形資産の分も含めて8,056万円です。23億302万円から8,056万円を引きます。残る22億2,246万円は、増えていてよいはずです。しかし貸借対照表の増加は16億9,390万円でした。差は約5億2,900万円になります。
二つの差は、ほぼ同じ大きさです。貸すつもりで固定資産として買った物件のうち5億円台を、期中に販売用不動産へ移し、その年のうちに売った。そう考えると両方の差が説明できる、と私は読みました。この振り替えについての記載は、短信にも、説明会資料の私が読めた部分にも見当たりませんでした。
もしそうなら、その物件を買ったときのお金は投資活動の支出に入り、売ったときのお金は営業活動の収入に入ります。営業キャッシュ・フローの黒字には、その片側が混じっていることになります。
支払利息の増え方と、決算日のあとに決めた借入
損益計算書の営業外費用では、支払利息が前期の78万円から4,473万円に増えています。増資にかかった株式交付費3,333万円と、支払手数料1,747万円も加わりました。営業利益より経常利益の伸びが鈍いのは、この三つのためです。
短信の最後の注記「重要な後発事象」には、決算日のあとに決めた借入が並んでいます。
| 借入先 | 金額 | 短信に書かれた使い道 |
|---|---|---|
| 山梨中央銀行 | 11億4,600万円 | 販売用不動産の取得資金の一部 |
| 肥後銀行(連結子会社) | 3回で合計43億8,000万円 | 物流施設の開発資金 |
| 三菱UFJ銀行 | 31億8,000万円 | 販売用不動産の取得資金の一部 |
(三菱UFJ銀行からは、これとは別に32億円のつなぎ融資を受け、借り換えと同時に返す予定です)
期末の借入金は、短期・1年内返済・長期を足して約13億8,100万円です。決算日のあとに決めた借入は、それを大きく上回ります。三菱UFJ銀行の借入には条件が付いています。来期以降の各決算日に、連結純資産を今期の75%以上に保つこと。経常利益を2期続けて赤字にしないことです。
会社の説明は、売上の中身は受け取り、「回収」には留保を付けます
短信の4ページ目は、売上の理由として、物件の売却による売上計上、仲介とアドバイザリーの受注、システムの新規契約を挙げています。来期からは、続けて入る「ストック収入」と、案件ごとに入る「フロー収入」に分けて開示するそうです。今期をその分け方で切ると、フロー収入が9割を占めます。
説明会資料の数字では、売上は第2四半期に上方修正した計画を0.3%上回りました。同じ資料には、昨年秋の公募増資で集めた約24億円を全額投資し、回収した、とも書かれています。
売上の説明は、そのまま受け取ります。物件は実際に売れていて、代金も現金で入っています。「全額回収」には留保を付けます。理由は、貸借対照表に有形固定資産が20億1,480万円残っているからです。回収されたというより、現金が貸す物件の形に置き換わった部分が大きい、と私は受け取りました。
来期は売上110億円、その8割を物件の売却で
通期決算なので、今期の予想に対する進捗率はもうありません。代わりに来期の予想を並べます。
| 今期実績 | 来期予想 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 70億2,000万円 | 110億円 | +56.7% |
| 営業利益 | 11億4,400万円 | 22億円 | +92.2% |
| 経常利益 | 10億5,700万円 | 20億円 | +89.1% |
| 純利益 | 7億4,300万円 | 14億円 | +88.4% |
22億円を110億円で割ると、営業利益率を2割に戻す計画です。説明会資料の数字ですが、来期の売上のうち約8割を物件の買い取りと売却で見込んでいます。第1四半期の分として、契約済みと見込みを合わせて約55億円があるそうです。配当は30円から50円に増やす予想です。決算日のあとの借入が販売用不動産の取得に充てられるのは、この計画と合っています。
私はどう読んだか
伸びそのものは、物件が実際に売れた結果で、本物だと考えています。
ただ、営業キャッシュ・フローの黒字を、商売が安定して現金を生む形になった証拠とは受け取っていません。在庫の物件が減った年だから黒字に出た、という見方をしています。理由は、前期は仕入れて赤字、今期は売って黒字と、在庫の出入りだけで向きが変わっているからです。来期は物件を仕入れるための借入をすでに決めていて、在庫は増える方向にあります。
心配性なので、来期は利益の数字より先に、販売用不動産と借入金の残高を確かめます。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
有形固定資産と販売用不動産のあいだで、期中にいくら振り替えたのかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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