はじめに
さいか屋は、神奈川県の藤沢、横須賀、川崎に店を構える百貨店です。お中元やお歳暮を選び、夕方に総菜を買って帰り、催事場の物産展をのぞく。地元の人に、そういう使われ方をしてきた店です。
ここ数年は、売場の一部を外の企業に貸す形に切り替えてきました。横須賀店にはボウリングやゲームの大型店が入り、藤沢店にはドラッグストアが入っています。自分で品物を仕入れて売る百貨店の顔と、床を貸して家賃を受け取る大家の顔。その両方を、同じ建物の中で持っている会社です。
この期には、健康食品の会社などを相手に新しい株を発行しました。そして期が終わったあと、東証から上場廃止の決定を受けています。今回は、そういう節目の決算です。
売上は前の年並みで、営業利益だけが増えた
10月15日に出た、2026年8月期の通期決算です。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 45億9,100万円 | 46億3,200万円 | −0.9% |
| 営業利益 | 1億2,400万円 | 1億1,400万円 | +8.6% |
| 経常利益 | 1億600万円 | 1億3,500万円 | −21.8% |
| 純利益 | 8,500万円 | 1億1,000万円 | −22.5% |
売上はほぼ横ばいです。営業利益は増えましたが、その下の経常利益と純利益は2割ほど減っています。増えたのは営業利益の1行だけなので、その中身を短信の後ろのほうで探しました。
増えた営業利益は、百貨店ではなく本社から出ていました
添付資料の11ページと12ページに、事業ごとの利益があります。そこでは、百貨店事業の利益は前の年より減っていました。営業利益を増やしたのは、どの事業にも割り振っていない本社の費用が減ったことです。
| 前期 | 今期 | |
|---|---|---|
| 百貨店事業の利益 | 6億6,603万円 | 6億2,604万円 |
| 不動産事業の利益 | △261万円 | 314万円 |
| 本社の費用(どの事業にも割り振らない分) | △5億4,865万円 | △5億459万円 |
| 営業利益 | 1億1,477万円 | 1億2,459万円 |
百貨店事業の利益は約4,000万円減り、本社の費用は約4,400万円減りました。これに、不動産事業が赤字から黒字に変わった分が加わります。差し引きで、営業利益は約1,000万円増えたことになります。表の数字どうしの引き算です。
損益計算書でも同じことが分かります。
| 前期 | 今期 | |
|---|---|---|
| 売上総利益 | 22億9,519万円 | 21億8,984万円 |
| 販売費及び一般管理費 | 21億8,041万円 | 20億6,525万円 |
粗利は約1億円減りましたが、経費はそれより大きく減っています。給料、地代家賃、その他の経費が、そろって前の年を下回りました。稼ぐ力が増したというより、出ていくお金を絞った1年です。
店ごとに並べると、横須賀だけが減っています
| 店 | 前期 | 今期 | 前年対比 |
|---|---|---|---|
| 藤沢店 | 17億3,238万円 | 17億5,955万円 | 101.6% |
| 横須賀店 | 12億5,433万円 | 11億7,783万円 | 93.9% |
| 川崎店 | 7億1,786万円 | 7億2,307万円 | 100.7% |
| テナント及び手数料収入 | 9億2,939万円 | 9億3,219万円 | — |
横須賀店には5月28日にボウリングの大型店が開業し、会社は入店客数が増えたと書いています。それでも年間の売上は前の年の94%ほどでした。開業は期末の3か月前なので、1年分の数字にはまだほとんど効いていないのだと思います。
テナントからの収入も、ほぼ前の年と同じです。床を貸した成果は、売上ではなくキャッシュ・フロー計算書のほうに出ていました。預り敷金及び保証金が1億2,124万円増えています。新しく入った店から預かったお金だと、私は受け取りました。
経常利益の7割は、固定資産受贈益でした
いちばん引っかかったのは、営業外収益の中の1行です。固定資産受贈益が7,414万円あり、前の年にも7,922万円ありました。
損益計算書の経常利益は1億607万円です。そこから7,414万円を引くと、約3,200万円しか残りません。経常利益の7割ほどがこの1行から来ている、というのが私の割り算です。
……ほとんど、もらった資産で黒字になっている。
固定資産受贈益は、設備などを無償で受け取ったときに立つ利益で、お金は入ってきません。何を誰から受け取ったのかは、決算短信には書かれていません。
一方で、営業外費用の支払利息は7,461万円から1億803万円へ増えました。受贈益が無ければ、営業利益の大半が利息で消える形です。短信に載っている指標でも、利息の何倍を営業で稼いだかは6.0倍から2.8倍に落ちています。
借入金のほぼ全部が、1年以内に返す区分にあります
貸借対照表では、1年内返済予定の長期借入金が85億3,090万円あります。1年を超えて返す長期借入金は1,623万円だけです。期末の現金は9億4,488万円でした。
ただ、前の年の末にも80億590万円がこの区分にありました。継続企業の前提に関する注記は「該当事項はありません」です。毎年、返済の期限を延ばしながら続けている借り方だと私は考えています。驚く数字ではありますが、今期に急に生まれた話ではありません。
増資のお金は、建物と土地に向かいました
| 前期 | 今期 | |
|---|---|---|
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 4億1,024万円 | 3億3,832万円 |
| 有形固定資産の取得による支出 | △4億9,934万円 | △11億2,833万円 |
| 新株の発行による収入 | — | 6億5,216万円 |
| 自己株式の購入による支出 | △3万5,000円 | △1億7,417万円 |
| 現金の期末残高 | 14億3,425万円 | 9億4,488万円 |
営業で稼いだ現金を大きく超える額を、建物と土地に使っています。期首と期末の差で、土地が約3億8,700万円、建物が約6億5,400万円増えました。何を買ったのかは、短信の説明文からは分かりません。
同じ期に、新株で集めたお金の一部で自己株式も取得しています。集めて、買い戻す。その順番の理由として、会社は「機動的な資本政策の遂行及び株主還元の拡充」と書いています。
会社はどう説明しているか
4期続けて黒字になったことを、短信は「V字回復を達成」と書いています。資本金と資本剰余金を取り崩して、積み上がった欠損を埋めました。そのうえで、今期末に5円の配当を出すとしています。黒字が続いたことは、数字のとおりです。
ただ、その5円の原資には資本剰余金が含まれていると、短信の表紙に注記があります。今期の利益だけから出した配当ではありません。表紙には、決算補足説明資料も説明会も「無」とあるので、会社の言葉はこの短信が全部です。
来期の予想は、出していません
2026年9月16日に、東証から上場廃止の決定の通知を受けたと書かれています。上場維持基準の一つを満たせなかったためです。そのうえで、投資家への情報開示の必要性が低くなるとして、2027年8月期の業績予想を載せていません。
来期について数字で分かるのは、重要な後発事象の1つだけです。藤沢市と共同で運営していた会社の清算が9月9日に終わり、3,993万円の特別利益を見込んでいます。ほかには、中期経営計画の柱として新規テナントの誘致、飲食フロアの強化、川崎地区の立て直しが言葉で挙がっているだけです。
私はどう読んだか
受け取り方は2通りあると思います。テナントの導入が効き始めた入口の決算なのか。百貨店そのものはまだ縮んでいて、黒字を本社の節約と受贈益が支えているのか。
私は後者だと考えています。理由は、百貨店事業の利益が減り、経常利益の7割を現金の伴わない受贈益が占めているからです。新しい店からの預り金は増えていますが、効いてくるのは来期以降です。その来期の数字を、会社は示していません。
心配性なので、借入金の区分より先に、受贈益の中身が気になっています。
出典:決算短信(会社発表)
固定資産受贈益7,414万円が、何を誰から受け取ったものなのかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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