知らない番号から電話がかかってきて、出るべきか迷ったことがある人は多いと思います。トビラシステムズは、その迷いを機械に肩代わりさせる会社です。詐欺に使われた番号や、しつこい営業の番号を集めた名簿を持っています。かかってきた瞬間に照らし合わせ、鳴る前に止めたり、画面に警告を出したりします。
ただ、この名簿を一人ひとりが買うわけではありません。買っているのは携帯電話の会社やケーブルテレビの会社、銀行で、利用者にはサービスの一部として届きます。だから使っている本人に、この会社の名前を知る機会はほとんどありません。
もう一つ、会社の電話向けの商売があります。お店や事務所にかかってくる迷惑電話や、カスタマーハラスメントの電話を録音して番号で振り分ける装置と、電話交換機そのものをクラウドに置き換えるサービスです。こちらは会社が自分の財布で買うもので、いま伸びているのはこの側です。
9月10日に出た、2026年10月期の第3四半期決算を読みました。
増収なのに、営業利益は前年に並んだままです
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 26億3,600万円 | 20億7,400万円 | +27.1% |
| 営業利益 | 7億5,500万円 | 7億5,900万円 | △0.6% |
| 経常利益 | 7億7,100万円 | 7億6,300万円 | +1.0% |
| 純利益 | 5億1,600万円 | 5億1,600万円 | +0.1% |
売上は3割近く増えて、営業利益は前年と400万円しか違いません。1ページ目に載っているのはここまでです。増えた売上がどこへ行ったのかは、決算短信の1ページ目にあるこの表には書かれていません。
増えた利益と、増えた費用が、同じ大きさでした
答えは10ページ目のセグメント情報にありました。事業ごとの利益と、どの事業にも配られていない全社費用を並べると、こうなります。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| セキュリティ事業 売上 | 14億9,700万円 | 14億3,800万円 | +4.1% |
| セキュリティ事業 利益 | 10億2,400万円 | 10億4,100万円 | △1.6% |
| ソリューション事業 売上 | 11億3,900万円 | 6億3,600万円 | +79.0% |
| ソリューション事業 利益 | 3億2,100万円 | 1億3,300万円 | +141.3% |
| 全社費用 | 5億9,000万円 | 4億1,500万円 | +42.2% |
2つの事業の利益を足すと、前年は11億7,400万円、今年は13億4,500万円です。増えたのは1億7,100万円です。一方の全社費用は、4億1,500万円から5億9,000万円へ増えました。増えた額は1億7,500万円です。足したものと引いたものがほぼ同じ大きさで、差し引きが営業利益の400万円減です。ここまでは短信の数字を並べただけの引き算です。
引っかかったのは、伸びた事業の利益を、事業に属さない費用がまるごと食べているという形です。全社費用の中身について短信は「主に報告セグメントに帰属しない販売費及び一般管理費」としか書いていません。4ページ目に「採用を中心とした人的投資」とあるので、人件費が中心だろうと私は受け取りました。
伸びた側の中身も見ておきます。ソリューション事業の売上には、月々の契約から入るストック収益と、装置を納めたときに一括で立つフロー収益があります。ストック収益は3億5,300万円から6億1,400万円へ。フロー収益は2億8,200万円から5億2,400万円へ。装置が売れただけではなく、月々入る側もほぼ倍になっています。
商品及び製品が、9か月で6倍になっています
貸借対照表で目が止まった行があります。商品及び製品が、前期末の3,919万円から2億3,537万円になっていました。割ると6倍です。この会社の商品とは、事務所の電話に付ける装置のことだと思われます。売上に対して大きな額ではありませんが、増え方が急です。
同じ表で、契約負債も22億1,600万円から31億2,400万円へ増えています。増えた額は9億800万円です。契約負債は先にお金をもらって、まだサービスを提供していない分です。現金及び預金は5億6,500万円増え、借入は減っています。借りて増やしたのではないので、増えた現金の出どころはこの前受けだと考えるのが自然です。
装置の在庫を積んでいることと、前受けが9億円増えたこと。この2つが同じ商売から出ているのか、どちらが誰の分なのかは、短信には書かれていません。第3四半期なのでキャッシュ・フロー計算書も作られておらず、現金の動きを項目ごとに追えませんでした。
……いや、在庫のほうは、もう少し考えたい。装置を売る商売で在庫が6倍になったなら、売る当てがあって仕入れたのか、売れ残ったのかのどちらかです。同じ短信の5ページ目に「トビラフォンBizシリーズの販売台数は当第3四半期会計期間において過去最高を更新」とあるので、私は前者だと考えています。ただ、それは会社の説明と在庫の数字を私がつないだ話で、短信がそう書いているわけではありません。
もう一つ、投資その他の資産が4億4,800万円増えています。7月に電話交換機の会社と資本業務提携を結んだと4ページ目にあるので、その出資分が入っているのかもしれません。これも短信には金額の内訳がありません。
会社はどう説明しているか
会社の説明で目立つのは、外の環境の話です。特殊詐欺の被害額が前年の1.5倍になっていること、政府が迷惑電話対策の無償化を通信会社に求めていること、警察庁が推奨する無料アプリが100日で100万件配られたこと。それに、ケーブルテレビの電話でも迷惑電話ブロックが無料になったことです。
利益が横ばいの理由については、中期経営計画の2年目として、採用と新規事業に投資を続けている、という書き方です。売上が2割伸びて営業利益が1割以上減る通期予想は、昨年12月に出した時点からそういう形でした。今回の横ばいは、予定どおりの投資の値段だと私は受け取っています。
留保を付けたいのは無償化のほうです。利用者が無料で使えるようになるのは会社の追い風だと書かれていますが、その料金を誰が払うのかは説明されていません。セキュリティ事業の売上は4.1%しか増えておらず、利益は少し減っています。一部の通信会社とは価格を引き上げて契約を更改したとあるので、払い手が値上げを受け入れているのも事実です。この2つをどう合わせて読むかが、私にはまだ決めきれません。
残り3か月に、会社が置いている営業利益は3,000万円です
通期予想は昨年12月のまま動いていません。売上の進捗は78.3%で、9か月分の目安である75%を少し超えています。営業利益の進捗は96.2%です。これは私が表紙の予想で割った数字です。
| 営業利益 | 第3四半期まで | 8月〜10月 | 通期 |
|---|---|---|---|
| 前年 実績 | 7億5,900万円 | 約1億4,000万円 | 約8億9,900万円 |
| 今年 | 7億5,500万円(実績) | 約3,000万円 | 7億8,500万円(会社予想) |
約の付いた数字は、通期予想の増減率△12.7%から私が割り戻したものです。7億8,500万円を0.873で割ると、前年の通期は約8億9,900万円です。そこから第3四半期までの7億5,900万円を引くと、前年の8月から10月は約1億4,000万円の黒字だったことになります。今年の同じ3か月を、会社は約3,000万円と置いています。売上は7億3,000万円が必要で、これは前年並みです。
売上を前年並みに出して、利益だけが5分の1になる3か月です。そう置いた理由は短信に書かれていません。表紙に「決算補足説明資料作成の有無:有」とあるので、そちらに書かれているのかもしれませんが、私は読んでいません。
私はどう読んだか
第4四半期の3,000万円は、昨年12月の予想が古いまま残っているのか、本当に大きな費用が来るのか。この2つのどちらかだと思います。
私は前者の見方をしています。理由は、在庫を6倍に積み、装置の販売台数が過去最高と書いている会社が、その直後の3か月で利益をほぼ消す予定を立てているとは考えにくいからです。予想を上げなかったのは、投資の額が読めないからだろうと受け取っています。
それでも、心配性なので2つ残しておきます。全社費用の4割増が来期も続くなら、事業の利益がいくら伸びても手元に残らない形が続くこと。そして無料で配られるサービスの料金を、最後に誰が払うのかが、短信の中では見えないことです。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)

商品及び製品が2億3,537万円まで増えた理由と、それがどの商売の在庫なのかは、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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