はじめに
ディスコは、半導体を切ったり削ったり磨いたりする機械を作っている会社です。チップは円盤状のシリコンウェーハの上にまとめて作り込まれ、最後に一つひとつへ切り分けられます。その切り分けと、ウェーハを薄く削る工程で使われる装置が、この会社の主力です。世界で首位。
もう一本の柱が、装置に取り付けるダイヤモンドの砥石で、こちらは消耗品にあたります。買い手は半導体メーカーで、いまは生成AI向けのチップや、HBMと呼ばれる積み重ね式のメモリを作る顧客が中心です。
ディスコの決算は、8月に一度読んでいます。7月に出た第1四半期の短信で、進捗率の分母が通期ではなく中間期だったという話を書きました(前の記事)。あのとき確かめられなかったのが、キャッシュ・フロー計算書と、利益率の上がった理由が為替なのかどうかでした。
この決算で何が起きたか
10月22日に出た中間決算です。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,570億5,800万円 | 1,945億3,700万円 | +32.1% |
| 営業利益 | 1,166億3,900万円 | 788億7,100万円 | +47.9% |
| 経常利益 | 1,144億3,700万円 | 794億6,500万円 | +44.0% |
| 純利益 | 803億6,600万円 | 559億1,300万円 | +43.7% |
営業利益率は45.4%。前年同期は40.5%でした。
キャッシュ・フロー計算書が出てきて、前受金が298億円増えていた
中間期なので、今回は7ページ目にキャッシュ・フロー計算書が付いています。前回は無かったので、まずここを開きました。
| 営業CFの主な中身 | 前年同期 | 今回 |
|---|---|---|
| 税金等調整前中間純利益 | 785億7,100万円 | 1,137億5,300万円 |
| 契約負債の増減 | 103億8,400万円 | 298億7,200万円 |
| 棚卸資産の増減 | 7億5,900万円 | △194億9,600万円 |
| 仕入債務の増減 | △81億3,800万円 | 90億1,100万円 |
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 396億8,300万円 | 1,117億800万円 |
営業キャッシュ・フローは1,117億800万円で、純利益803億6,600万円を上回っています。押し上げている最大の項目が、契約負債の増加298億7,200万円です。契約負債は、ざっくり言えば前受金。装置を納める前に顧客から受け取ったお金です。
前回は貸借対照表の残高を引き算するしかありませんでした。利益に現金がついてきているか、という宿題は、これで解けました。
現金3,424億円のうち1,400億円は、定期預金へ動いていた
引っかかったのはここです。5ページ目の貸借対照表で、現金及び預金は3,424億1,100万円。ところが計算書の末尾にある現金及び現金同等物の残高は2,006億2,700万円です。差額は1,417億8,400万円です。これだけの額が、計算書のほうには出てきません。
投資キャッシュ・フローを見ると、定期預金の増減が418億4,400万円の支出になっています。……出てこない分は、ここだ。満期が3か月を超える定期預金は現金同等物に含めないので、計算書の末尾には残りません。前年同期のこの欄は空でした。
前の記事の最後に、受取利息が増えた理由は読み取れなかったと書きました。6ページ目の営業外収益では、受取利息が前年同期の4,700万円から8億4,600万円へ増えています。手元の現金を定期預金に移したことと繋がっているのだろう、と考えました。ただし短信は、その2つを結びつけていません。
為替は、粗利で足して営業外で引いている
4ページ目で、会社は増益の理由の先頭に為替を置いています。前回と同じ並びです。一方、6ページ目の営業外費用には為替差損31億100万円が立っています。前年同期は為替差益2,100万円でした。差損31億100万円とこの差益を足すと31億2,200万円です。営業外では、それだけ向きが変わったことになります。
営業利益の増えた額は、1,166億3,900万円から788億7,100万円を引いた分です。377億6,800万円になります。31億円はその1割に届きません。それでも、同じ為替が上では足し算に、下では引き算に出ていることは覚えておきたい。
4ページ目には、10月から12月の想定為替レートが1ドル151円と書かれています。前回読んだ短信では7月から9月を159円と置いていました。8円ぶん円高の方向です。
ドイツで建物を壊すことにして、6億3,600万円を落とした
8ページ目の注記に、減損損失6億3,600万円があります。ドイツの子会社で既存の建物を取り壊して新棟を建てる決定をしたため、帳簿価額をゼロまで落としたという説明です。
金額は小さいのですが、前年同期の特別損失にも建物解体費用8億1,700万円が入っていました。壊して建て直す工事が、決算のたびに顔を出しています。説明会資料のほうには、今年度の設備投資の見通しが約330億円で、羽田の研究開発拠点の建て替えと広島の新工場を含むと書かれています。
会社はどう説明しているか
4ページ目の説明文です。生成AIの需要拡大でデータセンタ向けの投資が続き、先端ロジックやHBMなどの高性能半導体向けの需要が高水準で推移した。売上が増えたのは機械装置の検収が進んだため。損益は為替の影響と高付加価値製品の増加でGP率(粗利率)が上がり、人件費や研究開発費の増加を吸収した、と。
同じページに、上期の出荷額が2,845億8,400万円で前年同期比37.2%増と書いてあります。売上の32.1%増より速い。出荷が先に走っていて、売上はそれを検収で追いかけている形です。
通期予想に対して、どこまで来ているか
通期予想は、今回も出ていません。表紙に載っているのは4月から12月までの9か月累計の予想です。前回は4月から9月まででした。3か月ぶん先へ延びただけです。需要予測が難しいため1四半期先までしか開示しない、というのが会社の説明です。
| 項目 | 上期実績 | 4〜12月予想 | 残り3か月 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,570億5,800万円 | 3,895億円 | 約1,324億4,200万円 |
| 営業利益 | 1,166億3,900万円 | 1,747億円 | 約580億6,100万円 |
| 純利益 | 803億6,600万円 | 1,219億円 | 約415億3,400万円 |
約の付いた数字は、9か月予想から上期実績を引いた私の引き算です。売上の2,570億5,800万円は、9か月予想3,895億円の3分の2ほどです。ただ分母が9か月なのだから、中間期でここまで進むのは普通の進み方です。決算サイトの進捗率の欄だけ見ると、ここで読み間違えます。
会社は4月から12月の出荷額を4,342億円としています。上期の2,845億8,400万円を引くと、残り3か月でおよそ1,496億円の出荷を見込んでいることになります。上期の勢いを、そのまま延長した置き方です。
中間配当は186円で、前年の129円から増えました。期末は未定です。未定とした理由は、短信には書かれていません。
私はどう読んだか
良い決算だと考えています。理由は営業キャッシュ・フローです。1,117億800万円が入ってきました。顧客が実際にお金を先に払っているほうが、説明文の言葉よりも重いと思います。
留保は在庫です。原材料は591億9,600万円から696億6,900万円へ膨らんでいます。出荷が伸び続けているあいだは前向きな仕込みで、会社も工場の繁忙が続いていると書いています。ただ、この水準の需要が緩んだとき、原材料は在庫として残ります。心配性なので、次の短信ではここを先に見ます。
為替は、増益の主役ではないという見方をしています。理由は、営業外で返している額が、営業利益の増えた分の1割にも届かないからです。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
https://www.disco.co.jp/jp/ir/library/doc/fr/fr20261022.pdf
現金及び預金3,424億1,100万円のうち、満期が3か月を超える定期預金がいくらなのかは、決算短信にも説明会資料にも書かれていませんでした。計算書から外れた1,417億8,400万円が丸ごとそれなのか、それとも一部だけなのか。そこが分かりません。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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