ディスコ(6146)第1四半期決算分析――進捗率47%の分母は、通期ではなく中間期だった

ディスコ(6146)第1四半期決算分析――進捗率47%の分母は、通期ではなく中間期だった 決算を読む

はじめに

ディスコは、半導体を「切る・削る・磨く」機械の会社です。半導体チップは、円盤状のシリコンウェーハの上に何百個もまとめて作られたあと、一つひとつに切り分けられます。その切り分けや、ウェーハを薄く削る工程で使われる装置を作っているのがこの会社で、世界首位です。もう一本の柱が、装置に取り付けるダイヤモンドの砥石。これは消耗品なので、顧客の工場が動いている限り売れ続けます。装置と消耗品の二本柱、という商売の形です。

買っているのは半導体メーカーです。いまで言えば、生成AI向けのデータセンタに入るチップや、HBMと呼ばれる積層メモリを作っている会社が、この装置なしにはチップを切り出せません。7月23日に出た、2027年3月期の第1四半期決算です。

この決算で何が起きたか

項目今回前年同期増減率
売上高114,30889,914+27.1%
営業利益49,03334,480+42.2%
経常利益48,44133,999+42.5%
純利益34,22123,767+44.0%

(単位:百万円)

売上が3割近く増えて、利益はそれ以上に伸びました。営業利益率は42.9%。前年同期が38.3%ですから、もともと高かったものがさらに上がっています。1ページ目だけ見れば、文句のつけようがない決算です。

最初の表では分からなかったこと

進捗率の分母は中間期

まずここです。この会社、通期予想を出していません。5ページ目に理由が書いてあります。半導体・電子部品業界は顧客の投資意欲が短期間で激しく変動して需要予測が困難なため、業績予想は「1四半期先までの開示」としている、と。今回開示されたのは4〜9月、つまり中間期までの予想です。

だから、売上の進捗率47.1%という数字を見て「この時期の目安25%を大きく超えている」と読むと間違えます。分母が中間期なのだから、第1四半期で半分近くまで来ているのは、むしろ普通の進み方です。決算サイトの進捗率の欄だけ見ると、ここを踏みます。

契約負債が3ヶ月で229億円増えた

6ページ目の貸借対照表で引っかかったのがここです。契約負債が、前期末の50,006百万円から72,970百万円へ増えています。差の229億円ほどは私が引き算した数字です。契約負債は、ざっくり言えば前受金。装置を納める前に顧客から受け取ったお金です。これが3ヶ月で1.4倍以上に積み上がっている。注文が先行して入っている、という読み方が素直だと思います。

出荷より売上のほうが速い

5ページ目の事業実績を見ると、出荷額は1,359億6百万円で前年同期比22.3%増。売上の27.1%増より低い。会社自身が「機械装置の検収が進捗したことなどにより」売上が増えたと書いています。つまり今期の売上の一部は、過去に出荷済みだったものの検収が進んだ分です。また、商品及び製品の在庫は39,022百万円から47,814百万円へ増えています。出荷したが検収前のもの、これから出荷するもの。どちらが多いのかは、決算短信には書かれていません。

キャッシュ・フロー計算書がない

8ページ目の注記に「当第1四半期連結累計期間に係る四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成しておりません」とあります。第1四半期では作成しない会社は珍しくないので、それ自体を責める話ではありません。ただ、私の読み方の起点はキャッシュ・フロー計算書なので、今回は現金の裏づけを確認できていません。現金及び預金の残高は283,892百万円で、前期末からほぼ横ばいでした。分かるのはそこまでです。

細かい話をひとつ

7ページ目で、受取利息が前年同期の10百万円から345百万円に増えています。……これは何だ。金額は小さいですが、桁が2つ違う。理由は決算短信には書かれていません。逆に、前年同期に560百万円あった助成金収入は今回ゼロです。営業外は差し引きで少し軽くなっています。

会社はどう説明しているか

増益の理由として会社が5ページ目に書いたのは、「為替の影響と高付加価値製品の増加などによりGP率が上昇したことで、人件費や研究開発費など販売管理費の増加を吸収して増益となりました」という一文です。

理由の先頭にあるのは為替です。高付加価値製品より前に。並び順にどこまで意味を持たせるかは読み手次第ですが、42.9%という利益率のうち何割かは、自社の力ではなく円安が作ったものだと会社自身が言っている、と私は受け取りました。7〜9月の想定為替レートは1ドル159円と置かれています。ここが動けば、利益率も動きます。

通期予想に対して、どこまで来ているか

繰り返しになりますが、通期予想はありません。あるのは中間期予想だけです。

項目中間期予想第1四半期実績
売上高242,800114,308
営業利益104,90049,033
純利益73,80034,221

(単位:百万円)

売上も利益も、半分近くまで来ています。第2四半期に必要な売上は、私の引き算で128,492百万円。第1四半期の実績より1割強多い額です。会社は4〜9月の出荷額を2,769億円と自ら置いており、第1四半期の1,359億円を引くと、残りもほぼ同じ水準の出荷を見込んでいることになります。下期がどうなるかは、会社も出していないし、私にも分かりません。出していない、ということ自体がこの会社の情報開示の形です。

私はどう読んだか

良い決算に寄せて読んでいます。理由は契約負債です。前受けが3ヶ月で229億円積み上がるのは、話や雰囲気ではなく、顧客が実際にお金を先に払っているという事実だからです。生成AI向けの需要が高水準だという会社の説明と、貸借対照表の動きが一致しています。

ただし留保が2つ。利益率の上昇は、会社の書き方に従えば為替が先頭に来ること。そして、キャッシュ・フロー計算書がないため、この利益に現金がついてきているかを今回は確かめられなかったこと。私は心配性なので、確認できなかったものは確認できなかったと書いておきます。良い数字の並ぶ決算ほど、確かめられなかった場所を覚えておきたい。読み違いかもしれませんが、それが私のやり方です。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260723/140120260721597094.pdf

受取利息が10百万円から345百万円に増えた理由は、決算短信からは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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