味の素(2802)2027年3月期 第1四半期決算分析――最終利益だけ減る予想が腑に落ちない

味の素(2802)2027年3月期 第1四半期決算分析――最終利益だけ減る予想が腑に落ちない 決算を読む

味の素は、うま味調味料「味の素」の会社です。「ほんだし」「Cook Do」、「クノール」のカップスープ、「ブレンディ」のスティックコーヒー。台所の棚と会社の給湯室に、たいてい一つは入っています。海外でも風味調味料や即席麺を売っています。

この会社にはもう一つ顔があります。アミノ酸を発酵で作る技術から生まれた、半導体パッケージ用の層間絶縁材料です。半導体を基板に載せるとき、配線の層と層の間に挟む薄い膜で、この会社の製品が広く使われています。医薬品の原薬を受託で作る事業もあります。

食卓とデータセンターの両方に物を納めている会社、と思って読むと、この決算は分かりやすくなります。

事業利益は3割近く伸びた

8月6日に出た第1四半期の決算短信です。この会社はIFRSなので、経常利益の行がありません。代わりに「事業利益」という段階利益を自分で置いていて、表紙に載っているのはその数字です。

今回前年同期増減率
売上高4,121億500万円3,640億800万円+13.2%
事業利益601億1,600万円472億3,600万円+27.3%
税引前四半期利益549億9,400万円480億7,200万円+14.4%
親会社の所有者に帰属する四半期利益364億5,200万円322億1,800万円+13.1%

それだけ見れば文句のない四半期です。ただ、事業利益の伸びが下の行に降りてくるまでに半分になっています。そこが最初に引っかかりました。

稼ぎ頭は調味料ではなく電子材料

短信の4ページ目にセグメント別の表があります。事業利益だけ抜き出します。

事業利益今回前年同期前年同期比
調味料・食品410億4,400万円363億3,200万円113.0%
冷凍食品21億6,000万円28億1,200万円76.8%
ヘルスケア等251億7,100万円154億1,200万円163.3%

増えた128億円のうち、97億円がヘルスケア等です。中身は電子材料の大幅増収、と会社は書いています。AIやサーバー向けの高性能基板に使う材料です。調味料・食品の増分は、為替と数量です。

冷凍食品は違います。売上は伸びたのに、事業利益は前年の8割弱に落ちました。理由の欄には「全体で大幅減益」とだけあり、なぜかは決算短信には書かれていません。

事業利益と営業利益の間で、増益の幅が半分になった

損益計算書には、事業利益の下に「その他の営業収益」と「その他の営業費用」が挟まっています。会社が事業利益に含めないと決めている項目です。ここを通ったあとの営業利益は、493億8,000万円から558億9,500万円へ。割り算すると1.13倍です。事業利益は1.27倍でしたから、増えた分は半分ほどに縮んでいます。

今回前年同期
その他の営業収益18億4,100万円52億9,300万円
その他の営業費用△60億6,200万円△31億4,900万円

差し引きで60億円余り、前年より悪い方向に動いています。前年のキャッシュ・フロー計算書に子会社株式の売却による収入19億9,500万円があるので、前年の収益にはその売却益が入っていたのかもしれません。今年の費用の側は、短信の中に手がかりがありませんでした。

通期は、最終利益が減る置き方になっている

同じ8月6日に、会社は通期予想を引き上げました。売上は90億円の上乗せです。事業利益は50億円、親会社利益は35億円を上乗せしました。引き上げたあとの数字を、前期からの増減率で並べます。

通期予想金額前期比
売上高1兆7,320億円+9.4%
事業利益2,020億円+11.5%
親会社の所有者に帰属する当期利益1,235億円△8.3%

事業利益は1割増えて、最終利益は1割弱減る。……上方修正した数字がこれなのか。

事業利益と最終利益の間にあるのは、さっきのその他の営業収益・費用と、金融収支と、法人税です。このどこかで、+11.5%と△8.3%の幅が付いています。

第1四半期でその他の営業費用がすでに倍になっていました。通期ではその側に、もっと大きなものが置かれているはずです。それが何かは決算短信には書かれていません。表紙に「決算補足説明資料作成の有無:有」とあるので、そちらにあるのかもしれませんが、今回読んだのは短信だけです。

現金は増えたが、営業活動から入った分は減った

営業活動のキャッシュ・フローは184億900万円で、前年同期の304億1,900万円から4割減りました。税引前利益は増えているのに、です。減った原因は2つです。棚卸資産の増加が286億円で、前年は184億円でした。法人所得税の支払いは167億円で、前年は104億円でした。

一方で手元の現金は、期首の1,066億9,300万円から1,969億7,900万円へ増えています。増やしたのはコマーシャル・ペーパーの1,400億円です。この四半期に払ったのは、配当225億円と自社株買い193億円です。設備投資にも334億円を使っています。

前年の同じ時期も1,100億円のコマーシャル・ペーパーを出しているので、この季節に短期で借りるのは毎年のことのようです。有利子負債は6,237億円まで増えました。親会社所有者帰属持分比率は42.5%から39.9%に下がっています。

棚卸資産は3,186億3,200万円から3,497億4,700万円へ増えました。3か月で311億円の増加です。円安の進行で海外在庫の円換算が膨らんだ分も入っているはずです。ここまでは貸借対照表の数字です。営業CFから出ていった286億円は換算差額を除いた数字なので、実際に在庫が積み上がっている、と私は読みました。

会社はどう説明しているか

会社は短信の2ページ目で、上方修正の理由をはっきり書いています。AI、サーバー、ネットワークなど高性能基板向け電子材料の販売が好調で、上乗せはすべてヘルスケア等の分です。調味料・食品と冷凍食品は据え置き。前回の予想に入っていなかった中東情勢の緊迫化の影響を含めて見直した、ともあります。為替の前提は1ドル150円です。

ここは素直に受け取っています。中東の影響を織り込んだうえで上げているのだから、電子材料の勢いは相当なものです。ただ、冷凍食品の減益も、最終利益が減る通期の置き方も、短信の中では理由が語られていません。上げる理由は具体的なのに、下げる理由はありません。この釣り合いの悪さが、私には気になります。

通期予想に対して、どこまで来ているか

進捗率は売上が23.8%です。事業利益は29.8%、親会社利益は29.5%まで来ています。3か月で3割、と会社自身が4ページ目に書いています。

残りの9か月を前期と並べてみます。

第1四半期7月〜3月通期
事業利益 前期実績472億3,600万円約1,340億円約1,812億円
事業利益 今期予想601億1,600万円約1,419億円2,020億円
親会社利益 前期実績322億1,800万円約1,025億円約1,347億円
親会社利益 今期予想364億5,200万円約871億円1,235億円

約の付いた数字は私の計算です。前期の通期は、表紙の通期予想を前期比(事業利益+11.5%、親会社利益△8.3%)で割り戻しました。7月〜3月は、通期から第1四半期の実績を引いています。

表の7月〜3月の列を、前期実績と今期予想で見比べます。事業利益は、第1四半期が前年の1.27倍だったのに、残り9か月は前年より6%ほど増えるだけの置き方です。親会社利益に至っては、残り9か月で前年より15%ほど減ることになります。第1四半期の勢いが続かないと考えているのか、何か大きな費用を後ろに見込んでいるのか、どちらかです。

私はどう読んだか

電子材料が本物なのか、通期の減益予想が本物なのか。この2つは両立します。私は後者の重さのほうに気を取られています。理由は、第1四半期のその他の営業費用がすでに倍になっていて、それが通期予想に効いていると考えるのがいちばん素直だからです。本業の話は、疑っていません。上がるかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

https://data.swcms.net/file/ajinomoto-ir/dam/jcr:d77fb04b-348e-4918-80cf-557354c6ed39/140120260805509556.pdf

通期の最終利益が前期を下回る置き方の理由と、その他の営業費用60億円の中身は、決算短信からは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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