はじめに
首都圏で分譲マンションを建てている建設会社です。福岡にも出ています。
仕事の取り方が、入札を待つ建設会社とは逆です。まず自分でマンションに向いた土地を探して押さえます。それを分譲会社に「この土地に、こういう建物を」と持ち込み、建築もそのまま請け負います。土地探しから完成までを、一続きで引き受けるやり方です。
マンションを買う人が、この会社の名前を目にすることは多くありません。客は分譲会社で、売り出すときの看板も分譲会社のものだからです。それでも、住む人が毎日過ごすのはこの会社が建てた建物です。ほかに、押さえた土地や建物を自分で売る不動産の商売も持っています。
本業は増益、最後の利益は減益
2026年10月15日に出た、第1四半期(6月から8月)の決算です。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 71億8,800万円 | 74億2,100万円 | −3.1% |
| 営業利益 | 4億7,000万円 | 4億3,000万円 | +9.2% |
| 経常利益 | 4億1,300万円 | 4億2,700万円 | −3.3% |
| 純利益 | 2億6,900万円 | 2億8,300万円 | −4.8% |
本業の利益は1割近く増えたのに、その下の段で減っています。差が開いたのは、営業利益と経常利益のあいだです。
支払利息が、前年の4倍近くになっている
損益計算書の営業外の欄に、理由がありました。
| 営業外の項目 | 前年同期 | 今回 |
|---|---|---|
| 支払利息 | 1,696万円 | 6,337万円 |
| 受取保険金 | 1,021万円 | ― |
| 営業外収益合計 | 1,352万円 | 753万円 |
| 営業外費用合計 | 1,717万円 | 6,466万円 |
支払利息は1,696万円から6,337万円へ増えています。前年の4倍近くです。営業利益は4億3,000万円から4億7,000万円へ伸びました。伸びた額は4,000万円ほどです。利息の増えた分は6,337万円から1,696万円を引いた額で、その伸びを上回ります。前年に入っていた保険金も、今回は欄が空いています。
引っかかったのはここです。利息がこれだけ増えるには、借りているお金もそれだけ増えているはずです。
借りたお金は、仕掛かりの土地と現金になっていた
この短信には、キャッシュ・フロー計算書が付いていません。第1四半期は作らなくてよいことになっていて、短信の11ページ目の注記にも「作成しておりません」とあります。お金の動きは、貸借対照表の前期末との差で追います。
| 前期末(5月31日) | 第1四半期末(8月31日) | |
|---|---|---|
| 仕掛販売用不動産 | 170億6,636万円 | 204億7,328万円 |
| 現金及び預金 | 26億2,462万円 | 56億7,526万円 |
| 短期借入金 | 18億4,400万円 | 48億4,400万円 |
| 長期借入金 | 81億2,031万円 | 129億5,223万円 |
| 自己資本比率 | 34.5% | 28.6% |
長期で48億3,191万円、短期で30億円。合わせて78億円あまりを3か月で借り増しています。行き先の大きいほうは仕掛販売用不動産で、34億円増えました。これから建てる、あるいは売る予定の土地や建物です。
……いや、これは利息の話というより、土地の話だ。土地を先に押さえて持ち込むやり方なら、仕事を増やすほど、先に出ていくお金が膨らみます。
現金のほうも30億円増えていて、短期で借りた額とほぼ同じです。何に使う予定の現金なのかは、短信には書かれていません。
減価償却費は3か月で330万円です。工場や機械にお金が寝ているのではなく、大半が土地と工事の中にある会社だと分かります。
注記には、8月10日に中央日本土地建物へ自己株式60万株を割り当て、資本業務提携を結んだともあります。提携の中身は短信には書かれていません。株を出して自己資本は増えましたが、借入の伸びのほうが速く、自己資本比率は3割を切りました。
減った売上の中で、粗利は増えていた
営業利益が伸びた中身も、事業ごとに確かめておきます。今回の増益は、売上が増えたからではありません。
| 事業 | 前年同期 | 今回 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 建設 売上 | 57億2,622万円 | 60億1,050万円 | +5.0% |
| 建設 利益 | 6億5,706万円 | 6億9,296万円 | +5.5% |
| 不動産 売上 | 16億4,520万円 | 10億7,214万円 | −34.8% |
| 不動産 利益 | 7,641万円 | 9,147万円 | +19.7% |
不動産の売上が3割以上減り、全体の売上を押し下げました。それでも会社全体の粗利は、8億645万円から9億5,352万円へ増えています。ここまでは損益計算書と事業別の表の数字です。
建設は量も利益も伸び、不動産は売った量が減っても利幅の厚いものが残った、と私は読みました。販管費は1億円ほど増えましたが、その内訳は短信には書かれていません。
受注は「順調」、利息には触れていない
会社の説明文は、首都圏のマンションの着工も供給も減っている、という話から始まります。そのうえで、引き合いは活況で、自社のシェアにも伸びる余地があると書いています。だから当面の受注は確保できる、という説明です。
裏付けとして挙げているのが受注です。この3か月で受注は2件、受注高は206億1,144万円、受注残高は428億1,482万円。年間の受注計画350億円に向けて「順調」としています。2件で計画の半分を超えているので、この言葉は数字と合っています。
一方で、短信の説明文は景気の先行きの心配に「金利の上昇」を挙げながら、自社の利息が増えたことには触れていません。借入を増やした理由も、短信には書かれていません。表紙に「決算補足説明資料作成の有無:有」とあるので、そちらに書いてあるのかもしれませんが、私はまだ読んでいません。受注の話はそのまま受け取り、利息の話は留保します。
前年も、第1四半期の進みは遅かった
| 通期予想 | 第1四半期 | 進み具合 | 前年同期の進み具合 | |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 440億円 | 71億8,800万円 | 16.3% | 約20.4% |
| 営業利益 | 35億円 | 4億7,000万円 | 13.4% | 約14.8% |
約の付いた数字は、前年の第1四半期を前期の通期実績(売上高364億1,700万円、営業利益28億9,600万円)で割った、私の計算です。
3か月なら4分の1が目安ですが、営業利益は7分の1ほどです。ただ前年の同じ時期も同じくらいで、この会社の第1四半期は、もともと進みが遅い形です。それでも残り9か月で稼ぐ必要があるのは、30億3,000万円です。35億円から4億7,000万円を引いた額です。前年の残り9か月は28億9,600万円から4億3,000万円を引いた額なので、それより2割強多い計算です。
予想を前期の実績と並べると、会社が営業外の持ち出しを大きく見込んでいたことが分かります。営業利益35億円から経常利益30億円を引きます。残る5億円が持ち出しです。前期は28億9,600万円と26億8,900万円でした。差は2億700万円です。2倍以上の見積もりを7月15日に出し、今回も変えていません。
今回の3か月の持ち出しは、5,700万円です。4億7,000万円から4億1,300万円を引いた額です。4倍しても2億3,000万円ほどです。予想の5億円の内側にあります。
私はどう読んだか
利息の増え方は、予想を崩す話なのか、予想の内なのか。このどちらかだと思います。
私は後者の見方をしています。理由は、7月15日に出た予想が営業外の持ち出しを前期の2倍以上と置いていて、今回の3か月はその内側に収まっているからです。借りたお金の行き先も、土地と現金という説明の付く場所にあります。
心配性なので、悪いほうも書いておきます。借入の多くが四半期の途中で増えたのなら、次の3か月の利息はもっと大きくなるはずです。会社自身が先行きの心配に金利の上昇を挙げている以上、ここは毎回確かめます。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)

借入を3か月で78億円あまり増やした理由と、積み上がった現金の使い道は、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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