関東に住んでいる人なら、店の名前のほうが先に浮かぶ会社です。東京の街中で業務用スーパー「肉のハナマサ」を、郊外の商業施設やロードサイドで「ジャパンミート」を開いている、食品スーパーの持株会社です。売り物の中心は肉で、飲食店の人が朝の仕入れに来る店と、家族が週末に来る店の両方を持っています。ほかに青果の仲卸、米屋、焼肉店、「肉フェス」の会社がぶら下がっています。
私は肉を買う側の人間です。ハナマサの大袋はうちの冷凍庫に入り切らないので、買ったことはありません。それはさておき、この短信で引っかかったのは今期の減益ではなく、来期の営業利益の置き方でした。順に見ていきます。
この決算で何が起きたか
9月11日に出た、2026年7月期の通期決算です。売上は伸びて、利益は三段とも減りました。
| 今回 | 前年 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,985億4,000万円 | 1,862億700万円 | +6.6% |
| 営業利益 | 90億2,600万円 | 100億4,800万円 | −10.2% |
| 経常利益 | 91億8,300万円 | 101億4,400万円 | −9.5% |
| 純利益 | 49億5,800万円 | 64億5,700万円 | −23.2% |
純利益の減り幅が大きいのは、あとで書く減損のせいです。
粗利率が落ちた年に、営業キャッシュ・フローは3割増えている
売上総利益は534億4,000万円から556億6,600万円へ増えました。伸びは4.2%しかありません。売上の伸びより遅い。会社は売上総利益率が前年比で0.7%下がったと書いています。
一方で販売費及び一般管理費は32億4,800万円増え、伸びは7.5%です。粗利は売上より遅く増え、経費は売上より速く増えた。営業利益が減った理由は、この二つで説明が付きます。
それなのに、営業キャッシュ・フローは3割以上増えています。利益が減った年に現金が増えている。……いや、これは中身を見ないと分からない。
| 前年 | 今回 | |
|---|---|---|
| 税金等調整前当期純利益 | 98億6,600万円 | 81億1,200万円 |
| 減損損失(足し戻し) | 2億7,700万円 | 13億1,100万円 |
| 減価償却費 | 25億3,400万円 | 28億600万円 |
| 棚卸資産の増加 | △22億900万円 | △10億9,000万円 |
| 法人税等の支払額 | △40億7,900万円 | △35億200万円 |
| 営業キャッシュ・フロー | 66億4,100万円 | 87億6,200万円 |
キャッシュ・フロー計算書から、動きの大きい行だけ抜きました。減損は現金が出ていかない費用なので、そのまま足し戻されます。今年は前年より10億円以上多く戻ってきました。在庫の積み増しが前年の半分で済み、法人税の支払いも減っています。稼ぐ力が増えたのではなく、出ていく現金が減った年です。
減損13億1,100万円と補償金3億7,800万円は、短信に中身が無い
特別損失の減損は、前年の2億7,700万円から13億1,100万円へ増えました。セグメント別の注記を見ると、うち12億3,000万円がスーパーマーケット事業です。
この年は「ジャパンミート卸売市場」を郡山、安行、鎌ケ谷に、「肉のハナマサPLUS」を大阪に開き、店舗数は116になりました。店を4つ増やした年に、既存のどこかの店の価値を12億円分落としています。どの店なのかは、決算短信には書かれていません。
反対側に、特別利益として受取補償金3億7,800万円があります。前年にはなかった項目で、何に対する補償なのかも短信には書かれていません。これがなければ、純利益の減り幅はもう一段大きかったことになります。
来期の増益19億7,400万円は、増える売上の粗利とほぼ同じ額
ここが今夜いちばん引っかかった所です。会社は来期の営業利益を110億円と置いています。今期の90億2,600万円からの増益幅は19億7,400万円です。率にして21.9%になります。売上の伸びは3.5%、金額にして69億6,000万円です。
増える売上に今の粗利率を掛けてみます。売上総利益556億6,600万円を売上1,985億4,000万円で割ります。粗利率は約28%です。69億6,000万円にその28%を掛けます。約19億5,000万円になります。営業利益の増加分19億7,400万円と、ほぼ同じ額です。
つまりこの予想は、増えた売上の粗利をそっくり営業利益に落とす形になっています。販売費及び一般管理費が1円も増えない、という置き方に近い。今期は経費が32億円増えた会社です。
計算の外に出る道は一つあります。粗利率が0.7%分戻ることです。ただ、価格転嫁で粗利率を戻すのか、経費を抑えるのか、短信の見通しの節にはどちらも書かれていません。
会社はどう説明しているか
短信の4ページ目に、減益の理由が書いてあります。仕入れ価格が上がるなかで、競合と業界の動きを見ながら「時間をかけて慎重に価格転嫁を進めている」。そのため売上総利益率が0.7%下がった、という説明です。値上げを急いで客を失うより、利益率を削って客を残すほうを選んだ、と受け取りました。
来期については、既存店売上高を前期比101.6%として、今期の4店と来期に開く1店の寄与を乗せています。買上点数を増やす「異常値販売」と、生鮮の専門性を追求した売場作りを続ける、とも書いてあります。売上の置き方は控えめで、筋が通っています。利益の置き方だけが、売上の説明から飛んでいます。
来期の表と、決まったこと
通期決算なので、進み具合はありません。代わりに来期の表を載せます。
| 2026年7月期 実績 | 2027年7月期 予想 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,985億4,000万円 | 2,055億円 | +3.5% |
| 営業利益 | 90億2,600万円 | 110億円 | +21.9% |
| 経常利益 | 91億8,300万円 | 111億円 | +20.9% |
| 純利益 | 49億5,800万円 | 66億6,000万円 | +34.3% |
純利益の34.3%増は、13億円の減損が来期に繰り返されなければ自然に出てくる数字です。驚くのは営業利益の行だけです。
配当は年25円で決まり、来期の予想は26円です。それから、この短信の最後の頁に後発事象があります。9月11日の取締役会で、上限194万株、総額20億円までの自己株式取得を決めています。期間は来年7月末まで。前期に36億6,600万円分を買って消却したのに続く二度目です。
私はどう読んだか
来期の営業利益2割増を、私は疑っています。理由は、今期の減益が仕入れ価格の上昇を店が飲んだ結果だからです。それが来期に解消する材料は、短信に書かれていません。経費を止めるか粗利率を戻すかのどちらかが要ります。どちらが起きるのか、起きるとしていつからか、それは決算補足説明資料に書いてあるのかもしれません。私はまだ読んでいません。
財務は痛んでいません。自己資本比率は64.1%、現金及び預金は202億3,900万円あります。減益の年に20億円の自己株式取得を決められるのは、その厚みがあるからです。ただ、財務の厚みは利益率を戻してくれません。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
減損12億3,000万円がどの店のものか、受取補償金3億7,800万円が何の補償かは、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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