はじめに
大黒天物産は、岡山から広がった食品のディスカウントストアです。ショッピングセンターに入る大きな店を「ラ・ムー」、単独で建てる店を「ディオ」の名前で出しています。来るのは、毎日の夕飯の材料を少しでも安く揃えたい家庭です。
店頭に並ぶのは、地域でいちばん安い値段を目指した日用の食品です。ほかに、中身を作り直しながら育ててきた自社開発の品と、産地から自前のトラックで冷やしたまま運んだ生鮮品があります。値上げが続くほど、こういう店の出番は増えます。
一方で、店を回すのは人とトラックです。どちらの費用も上がっています。安さで客を集める商売が、増えた費用をどこで吸収するのか。この決算は、その問いがそのまま数字に出た四半期でした。
売上は増えて、営業利益は3分の1に
2026年10月13日に出た、6月から8月までの第1四半期決算です。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 832億7,300万円 | 789億4,700万円 | +5.5% |
| 営業利益 | 5億8,200万円 | 16億7,300万円 | △65.2% |
| 経常利益 | 6億2,000万円 | 18億200万円 | △65.6% |
| 純利益 | 3億8,200万円 | 11億1,800万円 | △65.8% |
売上は伸びています。それでも営業利益は前年の3分の1ほどです。前年の同じ時期も営業利益は4割近く減っていましたから、夏の利益が2年続けて細っていることになります。
粗利の増加を、販管費の増加が10億円ほど上回った
短信の8ページ目、損益計算書を開くと、売上総利益はきちんと増えています。崩れたのはその下です。
| 項目 | 前年同期 | 今回 | 増えた額 |
|---|---|---|---|
| 売上総利益 | 181億8,000万円 | 195億4,000万円 | 約13億6,000万円 |
| 販売費及び一般管理費 | 165億700万円 | 189億5,700万円 | 約24億5,000万円 |
| 減価償却費(注記) | 20億5,200万円 | 24億7,000万円 | 約4億1,800万円 |
約の付いた額は、今回から前年同期を引いた私の引き算です。
粗利は13億6,000万円増えました。販管費はその倍近い24億5,000万円増えています。販管費の増えた24億5,000万円から、粗利の増えた13億6,000万円を引きます。残りは10億9,000万円で、これは営業利益の減った額とほぼ同じです。つまり減益の理由は、売れなかったことではなく、費用の伸びです。
販管費の内訳は、決算短信には載っていません。手がかりは注記の減価償却費だけです。減価償却費の増えた4億1,800万円は、新しい店や設備の分と考えるのが自然です。ただ、販管費の増えた24億5,000万円のうち6分の1ほどにとどまります。残りの20億円ほどがどこから来たのか。ここで引っかかりました。
長い借入が減って、短い借入が増えた
貸借対照表にも気になる動きがあります。借入の総額より、借り方の入れ替わりのほうです。
| 項目 | 5月末 | 8月末 |
|---|---|---|
| 短期借入金 | 145億8,300万円 | 174億9,500万円 |
| 長期借入金 | 215億1,900万円 | 195億6,700万円 |
長期が19億5,200万円減り、短期が29億1,200万円増えました。差し引きで9億6,000万円の増加です。同じ3か月で、支払利息は3,100万円から9,800万円へ増えています。営業外の費用が膨らんだ分だけ、経常利益も削られました。
ただ、前年の同じ時期にいくら借りていたかは、この短信には載っていません。利息が3倍を超えた理由を、借りた額に求めるのか金利に求めるのかは決められません。
この短信に、キャッシュ・フロー計算書が無かった
添付資料の最後まで行くと、注記に「四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成しておりません」とあります。第1四半期に作らない会社は珍しくありません。それでも、いつも最後に開く場所が空いているのは落ち着かない。
代わりに貸借対照表の増減を拾うと、輪郭は見えます。有形固定資産は14億4,400万円増えました。現金及び預金は3億7,500万円減っています。店を建てる費用を、利益だけでは賄えず借入で補った四半期、と私は受け取りました。
流動資産の「その他」も22億2,600万円減っています。何が減ったのかは、決算短信には書かれていません。
会社の説明は、費用が上がった話から始まる
4ページ目の説明文で、会社は物流費と、最低賃金の引き上げに伴う人件費を挙げています。そのうえで「極めて厳しい状況」と書いています。建築費が上がって出店の費用が増え、販管費に響いたことも自分で認めています。
対策として書かれているのは、物流センターから全量を送る形の店です。この四半期に出した4店のうち1店をこの形にして、出店と運営の費用を下げたとしています。中国地方と関西の2つのセンターの稼働を上げて費用を下げる、という説明もあります。
この説明は、方向としてはそのまま受け取ります。理由は、損益計算書の費用の増え方と食い違っていないからです。ただ、効果の大きさは決算短信には書かれていません。1店分の削減が、20億円を超える費用の増加に対してどれほどなのかは、この短信では測れません。
細かいことですが、説明文の結びには売上高と経常利益と純利益が並んでいるのに、営業利益の金額だけがありません。
9月から11月に、前年の2倍近くを置いている
通期予想に対する進み具合から並べます。
| 項目 | 第1四半期の実績 | 通期予想 | 進み具合 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 832億7,300万円 | 3,441億円 | 約24.2% |
| 営業利益 | 5億8,200万円 | 74億円 | 約7.9% |
| 純利益 | 3億8,200万円 | 47億円 | 約8.1% |
進み具合は私が割り算したものです。売上は4分の1の目安どおりで、利益は1割にも届いていません。通期予想の74億円から、第1四半期の5億8,200万円を引きます。残り9か月で稼ぐ計画は68億1,800万円です。前年の同じ9か月より9割近く多い額です。
もっと近い区切りで見ると、計画の形がはっきりします。表紙の上期予想は営業利益29億円、前年比0.4%減です。0.4%減は、前年の0.996倍ということです。29億円をこの0.996で割り戻すと、前年の上期はおよそ29億1,200万円になります。そこから前年の第1四半期16億7,300万円を引くと、前年の9月から11月はおよそ12億3,900万円でした。今年の上期予想29億円から、第1四半期の5億8,200万円を引きます。残る23億1,800万円を、今年は同じ3か月に置いています。
| 営業利益 | 6月〜8月 | 9月〜11月 | 上期累計 |
|---|---|---|---|
| 前年 実績 | 16億7,300万円 | 約12億3,900万円 | 約29億1,200万円 |
| 今年 | 5億8,200万円(実績) | 約23億1,800万円(予想) | 29億円(予想) |
前年に12億円余りだった秋の3か月で、今年はその2倍近くを稼ぐ計画です。
私はどう読んだか
この上期予想は、7月9日に出ています。第1四半期が始まって5週間ほどたった時期です。会社は6月の数字を手にしたうえで上期を前年並みと見込み、8月末まで見終えたあとも動かしていません。そして説明文では「概ね計画どおり」と書いています。
……いや、そういうことか。夏の弱さは最初から計画に入っていた。
私は、第1四半期の減益は会社の想定の内だった、という見方をしています。理由は、四半期の途中で出した予想を、四半期を終えても変えていないからです。出店の費用が先に立ち、利益があとから来る筋書きなのだと考えています。
それでも心配性なので、気になるのは秋のほうです。9月から11月に前年の2倍近くを稼ぐ根拠は、決算短信には書かれていません。表紙の欄には補足説明資料も説明会も「無」とあり、ほかに理由を探す手がかりを、私は持っていません。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
https://www.e-dkt.co.jp/ir/pdfs/library/tanshin_20261013.pdf
販管費が24億5,000万円増えた内訳、とくに人件費・物流費・出店費用がそれぞれいくらだったのかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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