コメ兵ホールディングス(2780)決算分析――営業利益は約3倍、ただしキャッシュ・フロー計算書は「作っていない」

8月13日に決算を発表したコメ兵ホールディングス(2780)――営業利益は約3倍、ただしキャッシュ・フロー計算書は「作っていない」 決算を読む

はじめに

コメ兵ホールディングスは、中古のブランド品を買い取って売る会社です。名古屋が本拠で、傘下に「コメ兵」や「ブランドオフ」を持っています。

使わなくなったバッグや時計を店に持ち込む人がいて、それを別の誰かが定価より安く買う。会社はその間に立って、買い取る値段と売る値段の差で稼ぎます。つまりこの商売では、仕入とは「個人からの買取」のことで、在庫とは「まだ売れていないバッグや時計」のことです。ここを頭に置いておくと、あとで貸借対照表を読むときに効いてきます。

店で個人に売るだけでなく、業者向けのオークションで法人にまとめて売る経路も持っています。ブランド品のほかに、タイヤ・ホイールの事業と不動産賃貸も少しありますが、体の大半はブランド品のほうです。

この決算で何が起きたか

項目今回前年同期増減率
売上高65,82046,120+42.7%
営業利益3,533883+299.8%
経常利益3,334652+411.2%
純利益2,081353+489.0%

(単位:百万円)

売上が4割増えて、利益は3倍から6倍近くまで跳ねています。ただし前年同期の営業利益率は1.9%と、そもそも薄かった。薄いところからの倍率なので、倍率そのものに驚く必要はありません。見るべきは率で、今回は5.4%まで戻しています。

最初の表では分からなかったこと

キャッシュ・フロー計算書が、無い

添付資料の最後のほうまでめくって、引っかかりました。10ページ目に相当する注記に、こう書いてあります。「当第1四半期連結累計期間に係る四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成しておりません」。

制度上、第1四半期はこれで許されています。責める話ではありません。ただ、この決算に限っては、いちばん確かめたいのが現金の動きでした。理由は次の項です。

在庫と短期借入が、同時に膨らんでいる

貸借対照表を並べます。3ヶ月での動きです。

項目前期末今回
棚卸資産50,04654,083
短期借入金48,12853,511
現金及び預金19,79020,224

(単位:百万円)

在庫が4,036百万円増え、短期借入金が5,383百万円増えています(どちらも短信の財政状態の説明に印字されている数字です)。現金はほぼ横ばい。つまりこの四半期、借りた金で買い取り、それがまだ在庫として積み上がっている──そう読める形です。

……いや、これを悪い形と決めつけるのは早い。この商売は在庫が商品そのものなので、売上を4割伸ばすなら仕入も膨らむのが自然です。ただ、それが健全な膨らみ方なのかどうかは、キャッシュ・フロー計算書があれば営業CFの中身で見当がつきます。今回はそれが無い。だから保留するしかない、というのが正直なところです。

なお、支払利息は前年同期の128百万円から208百万円に増えています。借りて仕入れる型の商売の、借りる側のコストも一緒に増えている。ここは損益計算書の営業外費用の欄にありました。

稼いだのは、ほぼ一つの事業

セグメント別では、ブランド・ファッション事業の売上が64,269百万円(前年同期比43.6%増)、営業利益が3,379百万円。全体の営業利益3,533百万円のほとんどがここです。タイヤ・ホイール事業は売上こそ増えましたが、営業利益は27百万円で3割ほど減っています。この会社を読むことは、実質的にブランド・ファッション事業を読むことだと分かります。

会社はどう説明しているか

会社は4ページ目で、個人買取の拡大を起点に小売・法人販売がともに伸び、ブランド・ファッション事業は四半期として過去最高の売上高だったと説明しています。追い風としては、株高による高額品の需要、インバウンド需要の継続、金の価格が高い水準で続いたことによる売却需要を挙げています。

面白かったのは、個人買取で増えた金地金や時計については「法人販売を効率的に活用し、早期のキャッシュ化とリスク回避を両立」したという一文です。会社自身が、在庫を長く抱えないように意識して動いていると書いている。上で私が保留した「在庫の膨らみ方」への、会社側からの部分的な答えとも読めます。答えの裏付けになる計算書が無いのが惜しいのですが。

利益面については、売上総利益の増加が販管費の増加を上回ったと説明しています。損益計算書で確かめると、売上総利益は9,841から14,382百万円へ、販管費は8,958から10,849百万円へ。たしかに粗利の伸びのほうが大きい。ここは印字どおりです。

通期予想に対して、どこまで来ているか

通期予想は据え置きです。進み具合はこうなっています。

項目通期予想進捗率
売上高252,00026.1%
営業利益10,80032.7%
純利益5,85035.6%

(単位:百万円。目安は25%)

営業利益は3分の1近くまで来ています。ここから先は私が引き算した数字ですが、この予想を前提にすると、残り9ヶ月の営業利益は前年の同じ9ヶ月より1割強少なくて済む計算になります。つまり会社は、この第1四半期の勢いが続かない前提で予想を置いたままにしている。慎重なのか、追い風が第1四半期に偏る理由を知っているのか、短信からは読み分けられません。

私はどう読んだか

読み方は2つあります。買取から販売までの回し方が変わって利益率が戻った、と読むか。追い風(株高、インバウンド、金の価格)が全部同時に吹いた四半期だった、と読むか。

私は後者に寄せて読んでいます。理由は、会社自身が挙げた好調の理由がどれも外部環境で、しかも通期予想を上げていないからです。自分の力で変わった部分があるなら、会社はもう少し強気に置くのではないか。読み違えかもしれません。利益率1.9%から5.4%への改善のうち、どこまでが自力なのかは、追い風が弱まった四半期を見ないと分からない。次の四半期の宿題にします。

出典:決算短信(会社発表)

https://komehyohds.com/ir/upload_file/m005-m005_01/J_2027_1Qtanshin.pdf

増えた在庫4,036百万円の中身が、すぐ売れる金地金なのか、寝る可能性のあるバッグや時計なのかは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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