泥水を回して分ける機械と、輸入した化学品を売る仕事
巴工業は、デカンター型遠心分離機を作っている会社です。横に寝かせた筒を高速で回し、固形物と液体を重さの違いで分ける装置です。下水処理場で汚泥から水を絞る、食品工場で搾りかすを取り除く、化学工場で結晶を取り出す、といった場面で使われます。
買うのは自治体、民間の工場、海外のプラントです。据え付けの工事や、納めたあとの部品交換と修理も同じ事業に入っています。
もう一つの柱が、化学品の販売です。海外のメーカーから樹脂や添加剤、建材や半導体の材料を仕入れて、国内の工場に売る商社の仕事です。売上では、こちらのほうがずっと大きくなっています。
この決算で何が起きたか
9月14日に出た第3四半期の短信です。2025年11月から2026年7月までの9か月分が載っています。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 468億500万円 | 464億600万円 | +0.9% |
| 営業利益 | 47億1,300万円 | 48億600万円 | −1.9% |
| 経常利益 | 48億4,100万円 | 48億5,400万円 | −0.3% |
| 純利益 | 35億2,400万円 | 33億5,800万円 | +5.0% |
営業利益は減り、純利益だけが増えています。向きが逆のときは、その差がどこから来たのかを損益計算書の下のほうで確かめることにしています。
純利益の増加は、清算した中国の子会社から出てきた
8ページ目の損益計算書、特別利益の行に、為替換算調整勘定取崩益2億9,600万円があります。前年には無かった項目です。4ページ目によると、中国で合成樹脂の着色と加工をしていた深センの子会社を清算したものです。海外の子会社を長く持つと、円に直したときの差が純資産に溜まり、畳んだときにまとめて損益へ出てきます。営業とは関係のない、一度きりの利益です。
同じ行に、政策保有株式の売却益5,400万円もあります。2つを足すと3億5,000万円です。純利益の増え幅は、35億2,400万円から33億5,800万円を引いた分です。差は1億6,600万円ですから、この2つが無ければ純利益も減っていました。ここまでは損益計算書の数字です。
営業利益が減った中身も同じページにあります。売上総利益は前年から3億円ほど増えました。一方で販管費は71億4,500万円から75億4,100万円へ増えています。差は3億9,600万円です。粗利の伸びを、人件費を中心とする経費の伸びが上回った形です。
機械事業で、装置と工事が止まっている
減益の主な出どころは、10ページ目のセグメント情報で見当が付きます。化学品の販売は営業利益29億1,400万円で前年から増え、機械の製造販売は17億9,800万円で1割減っています。
引っかかったのは、4ページ目にある機械事業の品目別の表でした。
| 装置・工事の売上 | 前年同期 | 今回 |
|---|---|---|
| 官需 | 10億5,300万円 | 11億5,600万円 |
| 民需 | 6億2,300万円 | 7,300万円 |
| 海外 | 2億6,900万円 | 0円 |
国内の民間向けが9か月で7,300万円、海外向けはゼロです。機械本体と部品・修理は官需を中心に伸びていて、事業全体の減収は2%弱に収まっています。ただ、据え付けを伴う大きな案件だけがぽっかり抜けています。
営業外収益には、違約金収入5,500万円という前年に無かった項目もあります。何に対する違約金なのかは、短信には書かれていません。止まった工事と関係があるのかは、分かりませんでした。
現金が9か月で38億円減った理由を、貸借対照表で追う
第3四半期のキャッシュ・フロー計算書は作成していない、と10ページ目の注記にあります。四半期で省く会社は珍しくありません。代わりに貸借対照表の現金及び預金を見ると、前期末の133億6,700万円から95億7,100万円へ減っています。差は37億9,600万円です。この引き算は私のものです。
行き先は他の行でおおよそ追えます。自己株式が9億円ほど増え、自社株買いに使いました。売掛金と契約資産が17億2,100万円、電子記録債権が12億5,700万円増えました。売ったのにまだ受け取っていない代金が、合わせて30億円近く膨らんでいます。建設仮勘定も6億6,700万円へ増えていて、何かを建てている途中です。
売上が1%も増えていないのに、受け取っていない代金が30億円増えているのは気になります。検収が期末に寄る商売なので、7月末という時点の問題かもしれません。前年7月末の貸借対照表は短信に載っていないため、比べられませんでした。
会社はどう説明しているか
増収は化学品の販売が堅調だったこと、減益は人件費を中心とする販管費の増加と機械事業の減収、と4ページ目にあります。損益計算書と一致していて、そのまま受け取っています。
化学品では、鉱産関連の樹脂向け添加剤が112億8,800万円から89億800万円へ減りました。それを建材向けの工業材料、コーティング用途、半導体向け材料の伸びで埋め、事業全体では増収増益でした。
第4四半期は、化学品は工業材料を中心に好調を維持し、機械は国内民需と海外向けの機械および部品・修理の販売が伸長する見込み、とあります。中東情勢の影響は今のところ軽微だが長期化すれば懸念がある、という一文もあります。
気になるのは機械の一文です。伸びるのは「機械および部品・修理」で、止まっていた装置・工事には、短信のこの見通しの一文では触れていません。受注がどこまで見えているのかは、短信には書かれていません。補足説明資料を作成したと表紙にあるので、そちらにあるのかもしれませんが、まだ読んでいません。
通期予想に対して、どこまで来ているか
通期予想は6月5日に上方修正した数字のままで、売上も利益も過去最高の見通しです。進み具合は次のとおりです。
| 通期予想の進み具合 | 第3四半期累計 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 468億500万円 | 629億円 | 74.4% |
| 営業利益 | 47億1,300万円 | 59億円 | 79.9% |
進捗率は、累計を通期予想で割って私が出しました。4分の3の時期に8割ですから、数字だけなら順調に見えます。
問題は残り3か月です。通期予想の59億円から、累計の47億1,300万円を引きます。営業利益で11億8,700万円が要る計算です。前年の同じ3か月は、前年通期から第3四半期累計を引けば出ます。前年通期は、通期予想の増減率+10.2%から割り戻すと約53億5,400万円です。そこから第3四半期累計の48億600万円を引いて、約5億4,800万円です。今年は、その2倍以上を置いています。
| 営業利益 | 第3四半期累計 | 8月から10月 | 通期 |
|---|---|---|---|
| 前年 実績 | 48億600万円 | 約5億4,800万円 | 約53億5,400万円 |
| 今年 会社予想 | 47億1,300万円 | 11億8,700万円 | 59億円 |
約の付いた数字は、通期予想の増減率+10.2%から私が割り戻したものです。
その中身は、5ページ目のセグメント別の通期予想で分かります。機械事業の通期営業利益予想は21億5,000万円、前年比+16.6%です。同じように割り戻すと、前年通期は約18億4,400万円です。前年の第3四半期累計は19億9,700万円で、通期のほうが小さくなっています。つまり前年の8月から10月は、約1億5,300万円の赤字だったことになります。……前年の同じ3か月は、赤字だったのか。
| 機械事業の営業利益 | 第3四半期累計 | 8月から10月 | 通期 |
|---|---|---|---|
| 前年 実績 | 19億9,700万円 | 約△1億5,300万円 | 約18億4,400万円 |
| 今年 会社予想 | 17億9,800万円 | 3億5,200万円 | 21億5,000万円 |
約の付いた数字は、機械事業の通期予想の増減率+16.6%から私が割り戻したものです。
今年は、21億5,000万円から17億9,800万円を引きます。3億5,200万円の黒字が要ります。全体では、第4四半期の11億8,700万円が前年の約5億4,800万円を上回ります。差は6億3,900万円です。機械事業は約1億5,300万円の赤字から3億5,200万円の黒字へ変わる予想です。およそ5億円の積み増しになります。つまり6億3,900万円のうち、およそ5億円が機械事業に乗っている計算です。9か月間、装置と工事がほぼ止まっていた事業です。
私はどう読んだか
化学品は、第4四半期も同じ調子で来ると考えています。
機械は別です。予想どおりになるかは知りません。ただ、私は慎重側の見方をしています。理由は、第4四半期の3億5,200万円を支えるはずの国内民需と海外向けが、9か月間の実績でいちばん落ち込んだ場所だからです。
据え付けを伴う案件は検収の時期で数字が大きく動くので、期末に固まって出てくることはあります。それでも、その見通しを裏づけるものを、私は短信の中に見つけられませんでした。心配性なので、頭の片隅に置いておきます。
出典:決算短信(会社発表)
製品補償損失引当金が4億3,500万円から6億1,700万円へ増えた理由は、短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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