イノテック(9880)2027年3月期 第1四半期決算分析――経常より大きい純利益予想が気になる

イノテック(9880)2027年3月期 第1四半期決算分析――経常より大きい純利益予想が気になる 決算を読む

半導体を作る会社は、まず回路を設計し、できあがったチップが設計どおりに動くかを検査します。イノテックは、その設計に使うソフトウェアと、検査に使う装置の両方を扱っています。装置は自社で作っていて、なかでもメモリー、つまりスマートフォンやデータセンターに入っている記憶用のチップを検査するテスターが主力です。

子会社も多く持っています。自動車に載せるソフトの検証ツール、産業機器や防衛向けに組み込む小型のコンピューター、店で使う決済端末など、扱うものは幅広いです。

私がこの会社の短信を読むのは今回が初めてです。読んでみて、1ページ目には無い話が2つ引っかかりました。順に書きます。

この決算で何が起きたか

2026年8月10日に出た、2027年3月期の第1四半期決算です。同じ日に、通期予想の修正も出ています。

今回前年同期増減率
売上高139億9,600万円94億5,700万円+48.0%
営業利益16億800万円2億3,400万円+584.7%
経常利益17億1,400万円4億700万円+320.7%
純利益12億600万円1億8,500万円+549.7%

営業利益率は前年同期の2.5%から11.5%へ上がりました。量が増えただけでなく、採算そのものが変わった四半期です。

テスターの売上が、前年の6倍近くになっていた

なぜこれだけ利益が出たのかは、短信の1ページ目には書かれていません。答えは8ページ目と9ページ目のセグメント表にありました。

テストソリューション事業の売上は61億7,900万円で、前年同期の2.3倍です。セグメント損益は、前年の2億6,400万円の損失から、10億2,100万円の利益へ変わりました。会社全体の営業利益の6割強を、この事業ひとつで稼いだことになります。

自社製テスターの売上は、前年同期の5億5,400万円から32億4,600万円へ増えました。割るとおよそ5.9倍です。台湾の子会社STAr Technologiesも21億1,700万円から29億3,200万円へ伸びていますが、事業を黒字に変えたのはテスターのほうだと分かります。

前年同期の5億5,400万円という薄さも引っかかりました。そのころは事業全体で赤字でしたから、テスターの売上だけでは固定費を払えなかったのだと受け取れます。今回はそこに一気に量が乗りました。……これは、売れ方が変わったのではなく、売れる時期が来た、ということかもしれない。

経常利益40億円より大きい、純利益50億円

2つ目の引っかかりは、表紙の通期予想です。経常利益の予想が40億円で、純利益の予想が50億円です。ふつう純利益は、経常利益から税金を引いたあとの数字なので、経常より小さくなります。

第1四半期の税金等調整前の利益は17億900万円で、法人税等は4億8,100万円でした。割ると税率は約28%です。通期の経常利益40億円にこの税率を当てると、残るのはおよそ28億8,000万円です。純利益を50億円にするには、その差の約21億円を、経常利益の外にある何かで埋める必要があります。

それが何なのかは、決算短信には書かれていません。表紙に「業績予想の修正に関するお知らせ」を別に出したとあり、「決算補足説明資料作成の有無:有」ともあるので、そちらに書いてあるのかもしれません。

現金が減った理由は、納税と自社株買いでした

貸借対照表では、現金及び預金が前期末より減っています。これだけ利益が出た四半期に現金が減ると、私は先にそこを疑います。ただ今回は、中身を並べると理由が見えました。

科目前期末今回
現金及び預金85億3,400万円73億9,700万円約11億3,600万円減
未払法人税等19億5,600万円4億1,900万円約15億3,600万円減
受取手形、売掛金及び契約資産133億2,600万円152億7,500万円約19億4,800万円増
前受金61億5,900万円77億3,300万円約15億7,400万円増
短期借入金31億2,300万円53億4,100万円約22億1,800万円増

差の列は、貸借対照表の2つの数字から私が引いたものです。

未払法人税等が15億円以上減っているのは、前期分の税金をこの3か月で払ったからです。それに加えて、9ページ目の注記にある自己株式の取得が5億9,400万円ありました。この2つだけで、現金の減り幅を超えます。売上が5割増えれば売掛金も増えますから、その分は珍しいことではありません。

前受金が15億円以上増えているのも、テスターの商売と噛み合っています。装置を納める前に代金の一部を受け取るなら、注文が積み上がっているときに前受金は膨らみます。先の売上のたねになっている数字だと考えています。短期借入金を22億円積み増したのは、納税と売掛金の立て替えをつないだ格好で、ここも心配はしていません。

この短信に、キャッシュ・フロー計算書が無い

9ページ目に「当第1四半期連結累計期間に係る四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成しておりません」とあります。第1四半期は作らない会社が多いので、これも珍しいことではありません。

ただ、営業活動でいくら入って、投資でいくら出たかは分かりません。書かれているのは減価償却費3億2,200万円と、のれん償却4,200万円だけです。本業でどれだけ現金が入ったかは、中間決算まで待つことになります。

会社はどう説明しているか

短信の2ページ目の説明文で、会社は「国内及び海外向けメモリーテスターの販売が大幅に伸長した」ことと「後工程用検査ボードの需要が増加」したことを、テスト事業の理由として挙げています。半導体設計関連事業とシステム・サービス事業も増収増益で、システム・サービスでは組込み製品のデータセンター向けと防衛向けが伸びたそうです。

一方で、良くない話も同じ説明文の中に隠さず入っています。三栄ハイテックスのLSI設計受託は、ベトナム子会社でAI関連の需要が減り、国内も伸び悩んで減収減益です。ガイオ・テクノロジーの車載向けソフト検証は、自動車メーカーの戦略見直しで11億7,000万円から9億9,500万円へ減りました。

全部が伸びた四半期ではなく、メモリーとデータセンター向けが、車載の落ち込みを覆い隠した四半期だと受け取っています。

通期予想に対して、どこまで来ているか

売上510億円のうち139億9,600万円で、4分の1を少し超えたところです。営業利益は40億円のうち16億800万円で、4割まで来ています。第1四半期でこれだけ稼ぐと、残りの9か月に求める数字は小さくなります。

営業利益第1四半期残り9か月通期
今期 会社予想16億800万円約23億9,200万円40億円
前年同期との比べ方+584.7%約17%減+28.7%

残り9か月の欄は、通期予想から第1四半期の実績を引いた私の数字です。会社は、この先の9か月を前年より2割近く少ない利益で見積もっています。その理由は短信の3ページ目にも書かれておらず、「業績予想の修正に関するお知らせ」を見るように、とあるだけです。

私はどう読んだか

テスターが5.9倍に売れたことも、前受金が増えたことも、セグメント表と貸借対照表にある数字で、そこは疑っていません。ここまでは短信の数字です。

そのうえで私は、この四半期を「一時的な山」だと考えています。理由は、会社自身が残りの9か月を前年比で減益と置いているからです。何か悪い材料を見込んでいるはずですが、それが何かは短信からは読めませんでした。上がるかは知りません。心配性なので、2つを頭の片隅に置いておきます。経常より大きい純利益予想の中身と、残り9か月を弱く見積もった理由です。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260810/140120260810516518.pdf

純利益予想50億円は、経常利益予想40億円を上回っています。その約21億円の差が何なのかは、決算短信からは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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