田んぼに撒くものを作っている会社です
片倉コープアグリは、化学肥料を作っている会社です。米や野菜を育てる畑に入れる、窒素やリン酸やカリの入ったあの粒です。買うのは農家ですが、農協などの流通を通って作付けの前に田畑へ運ばれます。だから需要には季節があり、値段が動く前には注文のほうが先に走ります。
肥料だけの会社ではありません。化粧品の原料になる化学品、たとえば合成マイカという光る粉も作っています。ファンデーションや口紅に入る、あれです。それと渋谷に自社のビルを持っていて、その賃料も収入になっています。肥料の会社が化粧品と不動産を持っている、という取り合わせが、私にはまだ少し不思議です。
今回読んだのは、2026年8月7日に出た第1四半期の決算短信です。4月から6月までの3か月分です。
この決算で何が起きたか
売上が1割強伸びて、営業利益は2倍を超えました。1ページ目の表はそういう顔をしています。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 111億3,700万円 | 98億100万円 | +13.6% |
| 営業利益 | 3億9,500万円 | 1億7,500万円 | +125.9% |
| 経常利益 | 2億8,900万円 | 1億9,500万円 | +47.9% |
| 純利益 | 1億7,700万円 | 1億1,200万円 | +57.9% |
営業利益の伸びに比べて、経常利益の伸びが小さい。この落差が最初に引っかかりました。そこへ行く前に、増えた営業利益2億2,000万円を誰が稼いだのかを確かめます。
増えた営業利益の主役は、売上の8割を占める肥料ではありませんでした
短信の9ページにセグメントの表があります。売上111億3,700万円のうち、肥料が90億9,100万円で、8割を占めます。ところが利益の側は様子が違います。
| セグメント | 前年同期の利益 | 今回の利益 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 肥料 | 700万円 | 5,600万円 | 約4,900万円増 |
| 化学品 | 1億7,800万円 | 2億6,100万円 | 約8,300万円増 |
| 不動産 | 300万円 | 1億300万円 | 約1億円増 |
| その他 | 300万円 | △900万円 | 約1,200万円減 |
約の付いた数字は、セグメント表の今回から前年同期を私が引いたものです。
営業利益は2億2,000万円増えましたが、肥料の取り分は4,900万円です。いちばん大きいのは不動産の1億円で、前年度に建ったビルの賃料がまる3か月分乗りました。次が化学品の8,300万円で、化粧品原料に加えて子会社の設備工事の受注が増えたと4ページにあります。
肥料の利益は5,600万円で、売上は90億9,100万円です。割ると利益率は1%に届きません。6月の値上げを見越した前取り需要で数量が増えた、と会社は書いています。前取りは値上げ前の値段で売っています。売上は膨らんで利益はほとんど残らない、その形だと私は受け取りました。
16億8,500万円借りて、現金は3億1,800万円減っています
私はいつもキャッシュ・フロー計算書から会社を見ますが、この短信には付いていません。8ページに「第1四半期に係る四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成しておりません」とあります。第1四半期では珍しくない扱いです。代わりに貸借対照表の3月末と6月末を並べて、現金の行き先を追いました。
| 項目 | 3月末 | 6月末 | 動き |
|---|---|---|---|
| 現金及び預金 | 26億5,500万円 | 23億3,700万円 | 約3億1,800万円減 |
| 受取手形及び売掛金 | 79億4,400万円 | 93億7,300万円 | 約14億2,900万円増 |
| 原材料及び貯蔵品 | 56億5,100万円 | 63億1,000万円 | 約6億5,900万円増 |
| 商品及び製品 | 87億3,800万円 | 82億8,000万円 | 約4億5,800万円減 |
| 支払手形及び買掛金 | 63億1,900万円 | 66億7,600万円 | 約3億5,700万円増 |
| 借入金の合計 | 139億2,000万円 | 156億500万円 | 約16億8,500万円増 |
動きの列は6月末から3月末を私が引いたもので、借入金の合計は短期借入金・1年内返済予定の長期借入金・長期借入金を足しています。
3か月で借入を16億8,500万円増やして、それでも現金は3億1,800万円減りました。行き先は売掛金と原材料です。製品在庫が減ったのは、前取りの注文に倉庫の在庫で応えた分でしょう。ここまでは貸借対照表の数字です。
売った肥料の代金はまだ入っておらず、値上げ前に原料は仕入れてあります。前取り需要というのは、会社の側から見ると先にお金が出ていく商売だ、と私は読みました。売上が増えれば売掛金も増えるので、それ自体は心配していません。
営業外費用に、工場を止める費用が出始めています
冒頭で引っかかった、営業と経常の落差です。営業外費用が前年の4,000万円から1億4,800万円へ増えています。前年はゼロだった「操業休止等経費」に6,500万円が載っています。「災害による損失」も前年の300万円から3,200万円へ増えました。支払利息も3,200万円から4,700万円へ増えました。借入を増やした分です。
4ページに生産を終える工場の一覧があります。今年9月に名古屋、山川、門司の3工場が生産を終え、来年1月に大越、3月につくば、翌9月に秋田と続きます。6つのうち5つを今期中に止める計画です。止める前の工場で、もう稼いでいない設備の経費が出始めたのではないか。時期を並べると、そう結び付けたくなります。……いや、これは私の推測だ。
引当金にも動きがあります。構造改革引当金の総額は13億6,500万円から13億4,600万円へと、ほぼ変わっていません。ところが固定負債から流動負債へ、1年以内に使う分として約3億円が移っています。9月末の再編が、帳簿の上でも目の前に来ています。
会社はどう説明しているか
セグメントごとの理由は、前の節で触れたとおりです。肥料は前取り需要、化学品は化粧品原料と子会社の設備工事、不動産は渋谷のビルの賃料。どれも表の数字と食い違いがなく、そのまま受け取っています。
もう一つ、1ページ目と3ページ目の2か所に同じ断りがあります。中東情勢の緊迫化による原材料・資材の調達の危うさと価格上昇は、業績予想に織り込んでいない、という一文です。肥料は原料を海外から買う商売です。据え置いた予想の外側に、置き場のない心配が一つある、ということです。
通期予想に対して、どこまで来ているか
通期予想は5月に出した数字のまま据え置かれています。営業利益8億円に対して、3か月で3億9,500万円。半分近くまで来ています。売上は4分の1弱で、こちらは季節どおりの進みです。
| 通期予想 | 第1四半期の実績 | 残り9か月に必要な額 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 460億円 | 111億3,700万円 | 348億6,300万円 |
| 営業利益 | 8億円 | 3億9,500万円 | 4億500万円 |
| 経常利益 | 7億円 | 2億8,900万円 | 4億1,100万円 |
| 純利益 | 5億円 | 1億7,700万円 | 3億2,300万円 |
8億円から3億9,500万円を引きます。残りの9か月で必要な営業利益は4億500万円です。前年の同じ9か月に比べて、2割ほど多く稼ぐ置き方です。この2割は、残りの4億500万円を前年の同じ時期の実績と私が比べて出した数字です。通期の伸び率は+58.5%ですから、残り9か月に求めている伸びは、それより緩やかです。それでも会社は予想を動かしませんでした。前取りで乗った売上は後で抜けますし、原料の値段は読めません。据え置きの理由は、短信に書いてあることだけでも組み立てられます。
私はどう読んだか
進みの良さは上振れの前触れではなく、会社の言うとおり前取りの分が乗った結果だ、というのが私の見方です。理由は、営業利益の伸び2億2,000万円のうち、肥料が担ったのは4,900万円だけだからです。
そのうえで、増えた利益の大半は不動産の賃料と化粧品原料で出ています。この2つは、前取りが抜けても消える種類のものではありません。だから見せかけの好決算だとも考えていません。売上の主役と利益の主役が別の場所にいる、それだけのことです。
心配は現金の側にあります。借入を16億円増やして、売掛金と原料に化けています。前取りの代金が7月以降に入ってくれば解ける話ですが、それを確かめる書類が今回はありません。上がるかは知りません。中間決算にキャッシュ・フロー計算書が付いたら、営業キャッシュ・フローの欄を先に開きます。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260807/140120260807514656.pdf
操業休止等経費6,500万円が、どの工場のものなのかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


コメント