デパ地下で、肉と惣菜と大福を売っている会社です
柿安本店は、百貨店の食品売り場に店を出している精肉店です。三重の黒毛和牛「三重 柿安牛」を自分のブランドとして持ち、すき焼き用の肉を量り売りする精肉の店、牛肉のしぐれ煮やメンチカツを並べる惣菜の店、大福を売る和菓子の店を、それぞれ別の看板で出しています。デパ地下を歩いたことがある人なら、どれか一つは通り過ぎているはずです。
安さで選ぶ店ではなく、ハレの日と少しの贅沢のための店です。このほかに、フードコートで丼を出すレストラン事業と、しぐれ煮をホテルや機内食に卸す食品事業があります。
事業が分かれているので、セグメントの表でどの店が稼いでどの店が足を引っ張っているかが分かります。今回はそこを中心に読みました。
売上は微減、営業利益は7割減
9月9日に出た第1四半期(5月から7月)の決算です。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 84億4,600万円 | 86億5,700万円 | △2.4% |
| 営業利益 | 6,500万円 | 2億3,900万円 | △72.8% |
| 経常利益 | 8,700万円 | 2億5,300万円 | △65.6% |
| 純利益 | 1,600万円 | 1億4,700万円 | △88.8% |
売上は2%ほどの減りで、営業利益は7割減っています。これがどこから来たのかを追いました。
減った粗利が、そのまま営業利益から消えていました
損益計算書を開くと、売上が2億1,100万円減ったのに対して、売上原価は3,800万円しか減っていません。その差が粗利の減り分です。売上総利益は46億3,100万円から44億5,800万円へ減りました。減り幅は1億7,300万円です。
一方で販売費及び一般管理費は、43億9,200万円から43億9,300万円へ動いています。増えた分は100万円です。売上が2億円減った四半期に、経費が減っていません。……いや、100万円増えている。粗利の減り分1億7,300万円に、経費の増え分100万円を足します。すると1億7,400万円で、営業利益の減り分とぴたりと合います。営業利益が7割減った理由は、これで全部です。
原価率が上がった、ということです。会社は「原材料価格の上昇」を挙げていますが、どの事業でどれだけかは、短信には書かれていません。
惣菜で6割、残りはレストランと精肉で減っています
セグメント別の利益を並べます。
| 事業 | 売上(今回) | 売上の増減率 | 利益(前年同期) | 利益(今回) |
|---|---|---|---|---|
| 精肉 | 31億2,200万円 | △2.9% | 1億6,600万円 | 1億2,900万円 |
| 惣菜 | 30億4,400万円 | △2.0% | 2億2,900万円 | 1億2,300万円 |
| 和菓子 | 15億9,700万円 | +4.4% | 2,500万円 | 2,500万円 |
| レストラン | 2億5,200万円 | △27.3% | 100万円未満 | △2,100万円 |
| 食品 | 4億2,900万円 | △6.3% | 4,900万円 | 3,800万円 |
セグメント利益の合計は4億7,100万円から2億9,600万円へ減っています。減り幅は1億7,500万円です。いちばん大きいのは惣菜です。売上は2%しか減っていないのに、利益は1億600万円減ってほぼ半分になり、合計の減り分の6割を、この一つで占めます。
精肉も同じ形です。肉を仕入れて加工して売る2つの事業で、仕入れの値上がりを売値に載せ切れていない、と私は読みました。
レストランは、売上が3割近く減って赤字になりました。短信は退店を1店と書いていますが、それは和菓子の店で、レストランの店は減っていません。店を減らさずに3割減った理由は、短信では触れられていません。
伸びたのは和菓子だけです。1店を閉めたうえで売上が4%増え、利益も横ばいを保ちました。ただ規模が小さく、利益2,500万円では惣菜の減り分の4分の1にもなりません。
キャッシュ・フロー計算書は無く、現金は10億円減りました
第1四半期なので、キャッシュ・フロー計算書はありません。注記には減価償却費1億4,200万円だけが載っています。無いなら貸借対照表から組み立てます。
現金及び預金は、4月末の80億5,200万円から7月末の70億3,600万円へ減りました。減り幅は10億1,600万円です。会社が財政状態の説明で挙げている動きを並べます。
| 動き | 金額 | 現金への向き |
|---|---|---|
| 剰余金の配当 | 8億1,400万円 | 出た |
| 未払法人税等の減少 | 2億5,500万円 | 出た |
| 売掛金の増加 | 2億8,500万円 | 入っていない |
この3つを足すと13億5,400万円です。現金の減り10億1,600万円との差、3億3,800万円は別のところから入ってきたことになります。減価償却費の1億4,200万円と仕掛品の減り9,400万円が、その大半です。残りは買掛金の増え6,000万円で、だいたい埋まります。これは私の足し引きです。本業で現金を稼いでいないわけではない、というところまでは言えます。
引っかかったのは売掛金です。売上が減った四半期に、2億8,500万円増えています。ただ、比べているのは4月末と7月末で、百貨店に納めた分の回収は月をまたぎます。夏の贈答の時期なら、季節で膨らむのが普通かもしれません。前年の7月末の売掛金は短信に載っていないので、季節なのか回収の遅れなのかは決められませんでした。
純利益が9割減った理由にも一言だけ。税金等調整前の利益は8,600万円で、法人税等の合計は7,000万円です。第1四半期は期末に積んだ引当金の取り崩しで繰延税金が動くので、税金の減りが利益の減りに追いつかないことはよくあります。ここは心配していません。
会社はどう説明しているか
会社は環境を「消費者の節約志向が依然として根強い」「原材料価格の上昇や労働力不足の深刻化」と書いています。やったこととしては、月初の感謝袋、WEB予約のキャンペーン、アニメを使った牛鍋弁当、店舗限定の高付加価値商品、複合型店舗の検討、しぐれ煮の機内食採用を挙げています。
環境の説明と数字が結び付いていません。環境のほうはそのまま受け取り、施策のほうは割り引いて受け取っています。理由は、感謝袋もキャンペーンもお値打ちに売る話で、粗利を戻すほうの話が一つも無いからです。
残りの9か月で、前年より1割多く稼ぐ置き方です
| 項目 | 通期予想 | 第1四半期 | 進み具合 | 残り9か月に必要な額 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 360億円 | 84億4,600万円 | 23.5% | 275億5,400万円 |
| 営業利益 | 14億円 | 6,500万円 | 4.6% | 13億3,500万円 |
| 経常利益 | 14億5,000万円 | 8,700万円 | 6.0% | 13億6,300万円 |
| 純利益 | 8億円 | 1,600万円 | 2.0% | 7億8,400万円 |
進み具合と残りの額は、表紙の予想から私が引いた数字です。
年末の贈答で稼ぐ商売なので、第1四半期の営業利益が小さいのは前年も同じです。それでも今年は、3か月で通期の20分の1にも届いていません。残りの9か月で13億3,500万円が必要です。前年の同じ9か月は約11億9,000万円でした。これは13億3,500万円を、前年比+12.4%で割り戻した私の数字です。1割強多く稼ぐ置き方になります。
会社は予想を据え置いています。表紙には「決算補足説明資料作成の有無:無」「決算説明会開催の有無:無」とあるので、据え置いた理由を読める書類は短信しかありません。その短信に、残りの9か月をどう積み増すかは書かれていません。
配当も85円のままです。予想の1株利益は83.50円なので、今期の利益より多く配る予想になります。現金が70億円あり自己資本比率も8割近いので、払えないわけではありません。ただ、払えることと、稼いだ中から払っていることは別です。
私はどう読んだか
粗利が戻れば戻る決算と受け取るか、経費が動かない決算と受け取るか。私は後者の見方をしています。理由は、売上が2億円減っても販管費が100万円増えた、という一点で、経費がほぼ固定費だと分かるからです。固定費の商売は、粗利が増えれば利益は大きく跳ね、減ればそのまま消えます。今回は消えるほうが出ました。
残りの9か月で前年より1割強多く稼ぐには、粗利率を戻すしかありません。それには値上げか客数の戻りが要りますが、その手がかりは短信には書かれていませんでした。心配性なので、下振れのほうを先に置いておきます。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)

レストラン事業の売上が、店を減らさずに3割近く減った理由は読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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