アステラス製薬(4503)2027年3月期 中間決算分析――強い上期より、下期の予想が気になる

アステラス製薬(4503)2027年3月期 中間決算分析――強い上期より、下期の予想が気になる 日本株

がんと目の病気の薬を、米国を最大の市場に売る製薬会社

アステラス製薬は、医師が処方する薬を作っている会社です。ドラッグストアの棚には並びません。いちばん大きい製品は前立腺がんの治療薬で、ほかに尿路のがん、胃がん、白血病の薬があります。

がん以外では、加齢で網膜が傷んでいく目の病気の薬や、閉経に伴うほてりなどの症状に使う薬も持っています。患者さんがこれらを手にするのは、医師の処方を受けたときです。

売上は日本より米国のほうがずっと大きく、業績は為替に左右されます。今回の決算は、最大の製品から次の製品へ稼ぎ手が移っていく途中の記録でした。

売上は2割強、利益は6割近く増えた半年

11月4日に出た中間決算で、4月から9月までの数字です。

今回前年同期増減率
売上高(短信では売上収益)1兆2,708億6,100万円1兆301億1,400万円+23.4%
営業利益3,165億5,600万円1,993億7,800万円+58.8%
経常利益———
純利益2,416億7,700万円1,476億3,500万円+63.7%

IFRSの短信なので、経常利益の欄はありません。ここだけ見れば、文句の付けようがない半年です。

営業キャッシュ・フローの減少は、前年の返金負債で説明が付きました

添付資料16ページのキャッシュ・フロー計算書で引っかかりました。税引前中間利益が1,228億円増えたのに、営業キャッシュ・フローは125億円減っています。

項目前年同期今回
税引前中間利益1,946億600万円3,174億5,400万円
返金負債の増減額1,228億2,300万円448億5,400万円
売上債権及びその他の債権の増減額△608億8,400万円△757億7,100万円
その他△277億6,400万円△522億600万円
法人所得税の支払額△472億2,600万円△853億5,900万円
営業活動によるキャッシュ・フロー2,825億9,900万円2,700億5,600万円

短信の説明文が挙げているのは、法人所得税の支払いが381億円増えたことです。ただ、それだけでは足りません。

前年の欄を見ると、返金負債の増減額が1,228億円のプラスでした。偶然ですが、利益の増加額と同じ金額です。今回は449億円のプラスです。前年の1,228億円からこれを引くと約780億円で、そのぶん現金を押し上げる力が小さくなっています。

返金負債は、あとで相手に戻す見込みの金額を、売上から差し引いて積んだ負債です。製薬会社なら、卸や保険者へのリベートが思い浮かびます。ただし内訳は短信には書かれていません。残高は9月末で4,613億7,100万円あり、流動負債の中で最大の科目です。

この科目が増える間は、まだ払っていない分だけ現金が手元に残ります。ここまでは計算書の数字です。稼ぐ力が落ちたのではなく、前年の欄が膨らんでいた、と私は読みました。1ページ目は嘘をつきません。ただ、全部は言いません。

現金及び現金同等物は434億円減りましたが、この半年で社債及び借入金を1,410億円減らしています。親会社所有者帰属持分比率も51.3%から56.2%へ高まりました。現金の減少は返済の結果で、心配する種類のものではありません。

最大の製品XTANDIは、為替を除くと前年並みでした

増えた売上を製品ごとに分けると、伸びている場所とそうでない場所がはっきり分かれます。

製品前年同期今回増減率
重点戦略製品計2,205億円3,339億円+51.4%
PADCEV1,025億円1,583億円+54.5%
IZERVAY341億円562億円+64.5%
VYLOY266億円459億円+72.7%
VEOZAH229億円307億円+33.8%
XOSPATA344億円429億円+24.5%
XTANDI4,770億円5,337億円+11.9%

重点戦略製品と呼ぶ5つが、そろって伸びています。1つの薬に頼った増収ではありません。

一方で、最大の製品は今もXTANDIです。5,337億円を売上の1兆2,709億円で割ると、4割強になります。短信の説明は「為替の影響も増加要因」までで、下期の話は書かれていません。

説明会資料には、為替影響を除くと前年同期並みの売上水準だとあります。米国のインフレ抑制法の影響により、下期は売上の減少を見込むとも書かれています。稼ぎ頭の減少は、短信を読むだけでは分かりませんでした。

為替の影響も小さくありません。短信によると、売上収益を993億円押し上げています。これを増えた2,407億円で割ると、増収の約4割が為替です。

計算の合わない部分も残ります。重点戦略製品の増加は1,134億円、XTANDIの増加は567億円です。増収の2,407億円からこの2つを引くと、706億円余ります。主要製品の表に載っていない薬の増加分です。短信は上方修正の理由にミラベグロンの名前を挙げていますが、この薬は主要製品の表にありません。

費用の管理は数字に出ています。「前年並み」には条件があります

短信の説明では、増収の主な要因は重点戦略製品の売上拡大です。費用については、SMTと呼ぶコスト最適化で販管費を約100億円、研究開発費を約80億円減らしたとしています。上方修正の理由は、製品の好調な進捗、為替、着実な費用管理の3つです。

製品の伸びは上の表で確かめられるので、そのまま受け取ります。販売費及び一般管理費も、売上が2割強伸びるなかで6.6%増に収まりました。

気を付けたいのは言い方です。説明会資料の「販管費は前年同期並み」は、米国でのXTANDI共同販促費用と為替影響の両方を除いた話です。総額は増えています。

営業利益の進捗率は7割近く。下期は減収を見込んでいます

表紙の通期予想は今回上方修正され、売上収益は2兆3,300億円、営業利益は4,600億円になりました。

通期予想上期実績進捗率残り6か月前年の下期
売上収益2兆3,300億円1兆2,708億6,100万円約54.5%約1兆591億3,900万円約1兆1,091億3,100万円
コア営業利益7,000億円4,249億2,800万円約60.7%約2,750億7,200万円約2,730億4,900万円
営業利益4,600億円3,165億5,600万円約68.8%約1,434億4,400万円約1,832億5,500万円

約の付いた数字は、短信にある通期予想と前期実績、上期実績、前年同期から私が引き算と割り算をしたものです。

通期予想のとおりなら、下期の売上収益は前年の下期を5%近く下回り、営業利益は2割強減ることになります。為替の想定は1ドル156円です。前年は通期平均が151円、上期が146円でした。上期と下期の平均が通期だと単純に考えると、前年の下期は156円前後になります。上期にあった前年同期比13円ぶんの円安の上乗せは、下期の想定には入っていません。

引っかかったのは、コア営業利益との差です。コア営業利益は、無形資産償却費や減損などを除いた、収益力を示す利益です。下期はこちらが前年並みなのに、営業利益だけが2割強減ります。

下期のコア営業利益は2,750億7,200万円、営業利益は1,434億4,400万円の計算です。引き算すると、下期の差額は1,316億2,800万円です。無形資産償却費が上期と同じ713億円だとすると、残りは約603億円になります。上期のその他の費用は、開発中止に伴うASP5541の減損264億円まで含めて382億円でした。

上期を上回る費用を、下期にも見込んでいる計算です。……これは何の費用だ。その中身は、短信にも、私が読んだ説明会資料の23ページまでにも書かれていません。期初予想でもコアとの差は2,250億円あったので、今回急に出てきた話ではないようです。

良い決算だと考えています。力の目安は下期のほうです

上期の勢いをこの会社の力と見るか、下期の予想に近いところを力と見るか。私は後者の見方をしています。理由は、円安の上乗せが下期の想定では消え、最大の製品の減少も会社自身が見込んでいるからです。

それでも、良い決算だと考えています。コア営業利益の増加は1,423億円で、為替の分は412億円です。これを引いても、約1,011億円残ります。XTANDIの減少を見込む下期でも、コア営業利益の予想は前年並みです。稼ぎ手の入れ替わりが、数字になって出てきました。

気がかりは約603億円のほうです。2015年に決算を読まずに痛い目に遭って以来、説明の見つからない差額を読み飛ばせなくなりました。この先どう動くかは、私には分かりません。

出典:決算短信(会社発表)

https://www.astellas.com/content/dam/astellas-com/global/ja/confidential-documents/financial-results/2q2026_jp.pdf

下期に見込む約603億円の中身と、ミラベグロンの売上額は読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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