日本精蝋(5010)中間決算分析――営業利益は前年の3.3倍、なのに会社自身が「反動減が生じる見込み」と書いている

8月14日に中間決算を出した日本精蝋(5010)――営業利益は前年の3.3倍、なのに会社自身が「反動減が生じる見込み」と書いている 決算を読む

はじめに

日本精蝋は、石油からワックスを作っている専業メーカーです。ワックスと聞くと床磨きを思い浮かべますが、この会社の製品が使われているのはキャンドル、タイヤ、食品の包装材料といったところです。タイヤのゴムに練り込まれてひび割れを防ぎ、紙コップの内側で水を弾き、ろうそくとして火を灯す。名前を意識することはまずないけれど、身の回りのあちこちに入っている素材です。

石油が原料なので、原油の値段が動くと、この会社の仕入れも動きます。今回の決算は、まさにそこが主役でした。

この決算で何が起きたか

項目今回前年同期増減率
売上高9,9549,397+5.9%
営業利益1,723521+230.5%
経常利益1,480285+419.3%
純利益1,156266+334.5%

(単位:百万円)

売上は5.9%増と地味です。それで利益が3倍を超えている。営業利益率は前年同期の5.5%から17.3%へ跳ねています。売れる量が増えたのではなく、値段の付け方が変わった決算です。

最初の表では分からなかったこと

数量は減っている

4ページ目の販売実績を見ると、国内ワックスの数量は711トン減、輸出も280トン減。ワックス全体で販売数量は前年同期比5.2%減です。それでも売上が増えたのは、4月からサーチャージ制度を導入して、販売単価が前年同期比12.0%上がったから。量は減り、単価で取り返した、という中身です。

会社が自分で「反動減」と書いている

ここに引っかかりました。4ページ目の説明文で、会社は利益が増えた理由をこう書いています。原材料の価格が高騰する前に買った原材料を使ったので、売上原価の上昇が遅れたこと。在庫単価が上昇したこと。つまり、売値は先に上げたのに、原価はまだ安いままだった、という時間差の利益です。

そして続けて、来年度以降、原材料価格が下落する局面では逆の時間差が起きて、当期の収益増加分の反動減が生じる見込みだ、とまで書いています。好決算の短信の中で、会社が自分から「この利益には反動が来ます」と予告している。正直な開示だと思いますが、読む側としては素通りできません。

利益は現金になっていない

9ページ目のキャッシュ・フロー計算書です。営業活動によるキャッシュ・フローは409百万円の流出でした。前年同期は1,370百万円の収入です。利益が3.3倍になったのに、現金は出ていっている。

……利益が増えて現金が減る。これは在庫の話だ。

内訳を見ると、棚卸資産の増加額が2,526百万円。貸借対照表でも、商品及び製品と原材料及び貯蔵品が合わせて2,500百万円あまり積み上がっています(これは私が足し算した数字です)。高くなった原材料を抱え込んだ分だけ、現金が在庫に姿を変えた格好です。

借入と利息の重さ

6ページ目を見ると、短期借入金12,405百万円に対して、現金及び預金は2,621百万円。支払利息は半期で245百万円です。純資産7,584百万円のうち5,477百万円は土地再評価差額金で、株主資本の合計は1,849百万円。配当は0円が続いています。一方で、4ページ目には資本性劣後ローンの残額のうち元本5億円相当を7月31日付で返済した、とあります。期末の後の話ですが、財務を軽くする方向へ動いてはいます。

減損損失218百万円

7ページ目の損益計算書に、減損損失218百万円が出ています。前年同期にはなかった項目です。何の資産に対するものか、短信には書かれていませんでした。6月から徳山工場の老朽化設備の解体工事が始まったことは4ページ目にありますが、結びつけるのは私の推測になるので、ここでは並べて置くだけにします。

会社はどう説明しているか

会社の説明は一貫しています。中東情勢の緊迫化で原油の調達に不安が生じ、原材料価格が高騰した。その上昇幅に見合う販売価格の改定を行った。安く買ってあった原材料を使ったので原価の上昇が遅れ、利益が当初予想より増えた。下期は上半期の原材料価格の上昇が売上原価に全て反映されるので、上昇幅は小さくなる。

私はこの説明を、ほぼそのまま受け取っています。数字と矛盾していないからです。数量減、単価増、在庫の積み上がり、営業キャッシュ・フローの流出。全部この説明で辻褄が合います。

通期予想に対して、どこまで来ているか

通期予想は同日に上方修正されています。営業利益3,100百万円に対して、半年で1,723百万円。進み具合は半分を超えていて、売上の進みは半分弱です。

ただし今回は、進捗率が良いから上振れ余地がある、という読み方をしていません。会社自身が、下期は原価に上昇分が全て反映されるので業績の上昇幅は小さくなる、と書いているからです。数字の形の上では順調に見えても、その理屈は上期限りだと当の会社が言っている。ここは会社の言葉のほうを信じます。

私はどう読んだか

私は「値決めの仕組みは残るが、利益の水準は続かない」ほうに寄せて読んでいます。理由は、会社が反動減とまで書いた時間差の利益であることと、営業キャッシュ・フローがマイナスで、利益がまだ現金の形をしていないことです。

ただ、サーチャージ制度そのものは仕組みとして残ります。原材料の価格が動いたときに売値を追随させる腕は、今回の上期で証明された。一過性の追い風と、値決めの構造変化が同居している決算で、私は前者の比重を重く見ました。読み違えかもしれません。原材料の価格が高い水準のまま動かなければ、反動は来ないまま済む可能性もあります。

出典:決算短信(会社発表)

決算短信|日本精蝋株式会社 | 日本精蝋株式会社
たゆまぬ探求で社会へ奉仕する石油ワックスの総合メーカー。

減損損失218百万円がどの資産に対するものかは、短信からは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました