はじめに
キリンといえばビールですが、いまのキリンホールディングスをビール会社と呼ぶには広すぎます。缶ビールと発泡酒。自動販売機に並ぶ清涼飲料。病院で処方される薬。ドラッグストアの棚にあるサプリメント。海外では豪州のビールと、米国のコカ・コーラ製品の瓶詰め、豪州のサプリメントも持っています。
だから、この会社の決算は「ビールが売れたか」だけでは読めません。どの商売が稼いで、どれが足を引いたのかを分けないと、合計の数字は何も教えてくれません。今回は、分けた先で引っかかりました。
本業の利益が増え、通期予想は動かない
2026年8月7日に出た中間決算です。IFRSなので経常利益はありません。事業利益が本業の稼ぎで、そこに売却益や減損を足し引きしたものが営業利益です。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1兆2,178億7,600万円 | 1兆1,363億900万円 | +7.2% |
| 事業利益 | 1,283億300万円 | 942億4,500万円 | +36.1% |
| 営業利益 | 1,290億4,200万円 | 687億2,300万円 | +87.8% |
| 純利益(親会社帰属) | 1,017億2,000万円 | 528億3,500万円 | +92.5% |
ここまでは表紙で分かります。分からなかったのは、本業の利益の3割増がどこから来たのか。それと、なぜ通期の事業利益予想が前年から微増のままなのか、でした。
増えた利益の8割が、医薬でした
事業ごとの利益を並べます。本社の費用などの調整額は除いています。
| 事業 | 前年同期 | 今回 |
|---|---|---|
| 酒類 | 531億6,200万円 | 620億9,400万円 |
| 飲料 | 295億3,700万円 | 309億6,500万円 |
| 医薬 | 335億300万円 | 605億4,000万円 |
| ヘルスサイエンス | 86億1,500万円 | 104億300万円 |
出どころは短信の12ページ目と13ページ目、セグメント情報です。
どの事業も増えていますが、増え方が揃っていません。医薬だけが1年でほぼ倍です。事業利益の増分は、1,283億300万円から942億4,500万円を引きます。340億5,800万円です。医薬の増分は、605億4,000万円から335億300万円を引きます。270億3,700万円です。増えた分の8割が医薬です。これは私の引き算です。
医薬の売上収益は2,304億9,800万円から2,634億8,900万円へ、1割半ほどの伸びです。売上が1割半で、利益がほぼ倍。……この釣り合いは、薬が順調に売れただけでは出てこない。医薬の利益がこれほど跳ねた理由は、短信には書かれていません。
売った分と減損が、ほぼ相殺しています
純利益の9割増には、売って得た分が乗っています。その他の営業収益450億4,300万円のうち、米国のバーボン蒸留所 Four Roses を売った譲渡益が290億3,300万円です。もう一つ、子会社の清算益が141億7,300万円。あわせて432億600万円です。
ただ、反対側も見ておきます。その他の営業費用は443億400万円で、前年同期の276億5,800万円から大きく増えました。中に減損損失94億3,900万円が入っています。差し引きすると7億3,900万円しか残りません。売って得た分は、同じ半年に出した費用に消えたことになります。
だから営業利益1,290億4,200万円は、事業利益1,283億300万円とほぼ同じです。純利益が倍になったのは、売却益のせいというより、前年の側に理由があります。前年の同じ時期はその他の営業費用が重く、営業利益が事業利益より255億2,200万円低かったのです。何の減損なのか、清算したのがどの子会社なのかは、短信に内訳がありません。
現金は増え、株数は1億株減りました
営業キャッシュ・フローは1,373億4,900万円で、前年同期の672億5,300万円の倍です。営業債権が半年で1,149億7,000万円減ったのが効いています。投資キャッシュ・フローは、蒸留所の売却で1,144億7,900万円が入り、設備投資を差し引いても536億6,300万円のプラスでした。
行き先は財務の側です。社債の償還400億円と、借入の返済250億円。自己株式の取得も345億5,400万円ありました。半年で1,624億7,300万円が出ていきました。それでも現金及び現金同等物は1,252億9,200万円から1,680億7,500万円へ増えています。
もう一つ、株数の話です。持分変動計算書に自己株式の消却2,365億7,200万円があります。発行済株式数は9億1,400万株から8億1,600万株へ、およそ1億株減りました。長く抱えていた自己株式を、この半年でほぼ消した形です。
蒸留所を売った金額の2倍以上で、サプリの会社を買います
短信の最後、追加情報の節に、8月7日付でカナダの Jamieson Wellness を買う契約を結んだとあります。北米でビタミンやサプリメントを作って売っている会社で、取得価額は約2,183億円。取得は10月以降の予定です。
Four Roses の譲渡価額は924億3,800万円で、別に売上目標の達成を条件とした約80億円があります。買うほうは約2,183億円。手元の現金は1,680億7,500万円なので、買収額は現金を上回ります。社債と借入金はすでに8,436億100万円あります。
そして買う先が入るヘルスサイエンス事業は、この半年の利益が104億300万円で、報告セグメントの中でいちばん小さい。……いちばん小さい事業に、いちばん大きな買い物をする。心配性なので、ここは頭に置いておきます。
会社は、短信の中では説明していません
この短信には、会社が自分の言葉で書いた説明文がありません。添付資料の「経営成績等の概況」は1行で、内容は決算説明会資料に載せる、とだけあります。表紙には業績予想の修正「有」とありますが、修正前の数字も直した理由も同じく説明会資料に委ねられています。私が今回読んだのは短信だけです。
下期を、前年より2割少なく置いています
| 事業利益 | 上期 | 下期 | 通期 |
|---|---|---|---|
| 前年 実績 | 942億4,500万円 | 約1,574億9,600万円 | 約2,517億4,100万円 |
| 今年 | 1,283億300万円 | 約1,246億9,700万円 | 2,530億円(会社予想) |
約の付いた数字は、通期予想の増減率+0.5%から私が割り戻したものと、通期から上期を引いたものです。
2,530億円を1.005で割り戻すと、前年の通期はおよそ2,517億円。そこから前年上期の942億4,500万円を引くと、前年の下期はおよそ1,575億円です。今年の下期は、2,530億円から1,283億円を引きます。約1,247億円です。前年の下期より2割ほど少ない置き方です。
予想では下期が減益です。理由は、前の節のとおり短信にありません。純利益は通期1,600億円に対して上期1,017億2,000万円で、6割を超えています。こちらは蒸留所の売却益が上期に入っているので、下期が小さくなるのは分かります。分からないのは本業のほうです。
私はどう読んだか
読み方は2つあります。予想が固めなのか、上期の利益に繰り返さないものが混じっているのか。私は後者の見方をしています。理由は、医薬の利益が売上の伸びに釣り合わない増え方をしていて、それが下期には続かないと見込んだ予想になっているからです。医薬で、一度きりの収入が上期に入ったのかもしれません。
ただ、酒類も飲料も健康食品も利益は増え、現金は増え、借金は減っています。気になるのは、その現金より大きな買い物が10月以降に控えていることです。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260807/140120260807514386.pdf
医薬事業の利益が1年でほぼ倍になった理由は、短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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