はじめに
中小企業や個人事業主のための業務ソフトを作っている会社です。帳簿付け、請求書、給与計算、経費精算を、パソコンやスマホで済ませるためのものです。経理担当が一人しかいない会社や、税理士事務所が顧客の帳簿をまとめて見る場面で使われています。ソフトは買い切りではありません。月ごとに料金を払って使う形です。
個人向けには、銀行口座やカードの明細を自動で集めて家計簿にするアプリがあります。ほかにも事業を抱えています。法人カードや請求書の早期入金のように、お金の流れそのものを扱う事業。金融機関向けのシステム開発。それから、スタートアップに出資するファンドです。今回の決算では、最後のファンドが話の中心になりました。
この決算で何が起きたか
2026年10月15日に出た第3四半期決算です。数字は12月から8月までの9か月の累計です。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 469億800万円 | 353億600万円 | +32.9% |
| 営業利益 | 16億8,600万円 | △19億7,900万円 | ― |
| 経常利益 | 3億2,800万円 | △23億7,500万円 | ― |
| 純利益 | 4億9,800万円 | △33億8,400万円 | ― |
前年は営業段階から赤字でした。今回は4つの利益がそろって黒字に変わっています。表だけを見れば、先行投資で赤字を続けてきた会社が、ついに黒字に届いた決算です。
営業利益の大半は、ファンドが売った株1銘柄から来ていた
会社の説明文の中に、一文だけこう書いてあります。ファンドが持っていた非公開株を1銘柄売り、21億3,400万円を売上高に計上した、と。ベンチャー投資を事業として行っているので、株を売った代金が売上に入る仕組みです。
これを踏まえて、事業ごとの利益の表を前年と並べました。
| 事業 | 前年同期 | 今回 |
|---|---|---|
| Business(企業向け) | △9億9,000万円 | 20億5,000万円 |
| Home(個人向け) | 6億8,500万円 | 9億6,600万円 |
| X(金融機関向け) | 2億3,500万円 | 3億7,500万円 |
| Finance(ファンド) | 1億8,600万円 | 14億5,900万円 |
| SaaS Marketing(売却済み) | 3億1,300万円 | ― |
| 全社費用など | △24億1,000万円 | △31億6,600万円 |
| 営業利益 | △19億7,900万円 | 16億8,600万円 |
出どころは短信のセグメント情報です。100万円未満は切り捨てています。
営業利益16億8,600万円のうち、14億5,900万円がファンドの利益です。16億8,600万円からファンドの分を引きます。残りは2億2,700万円です。ファンドを除けば、全社の営業利益はほぼ収支とんとんです。
一方で、Businessは前年の9億9,000万円の赤字から、20億5,000万円の黒字に変わっています。こちらは株の売却とは関係のない、ソフトの利用料から出た利益です。
営業より下でも、株の売却が利益を支えている
経常利益は3億2,800万円まで縮みます。持分法による投資損失が6億7,300万円、支払利息が3億4,800万円出ているからです。
そのあと、特別利益に投資有価証券売却益が24億2,900万円入ります。ファンドとは別の勘定で、こちらも株を売った利益です。税金を引いた四半期純利益は20億600万円まで戻りました。ここで引っかかりました。
そのうち15億800万円は「非支配株主に帰属する」利益です。親会社の株主に残るのは4億9,800万円でした。……20億600万円のうち4分の3が、外の株主の取り分だ。
どの子会社の利益が外へ回ったのかは、決算短信には書かれていません。
この短信には、キャッシュ・フロー計算書が無い
私はいつもキャッシュ・フロー計算書まで見に行きます。今回の短信の注記には「四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成しておりません」とありました。現金の出入りは、貸借対照表の前後を比べて追うしかありません。
| 前期末 | 今回 | |
|---|---|---|
| 現金及び預金 | 409億7,200万円 | 391億4,700万円 |
| 借入金(短期・長期の合計) | 208億4,800万円 | 290億2,700万円 |
| のれん | 67億3,100万円 | 122億5,000万円 |
借入金は、短期借入金、1年内返済予定の長期借入金、長期借入金の3つを私が足したものです。
借入れを80億円あまり増やしましたが、現金は少し減っています。のれんが倍近くに増えた理由は、短信の注記に書いてあります。勤怠管理システムの事業や、経理代行の事業を譲り受けたからです。黒字の9か月でも、手元の資金は借入れと一緒に買収へ出ていった、と私は受け取りました。
会社はどう説明しているか
会社が理由として挙げているのは、ほぼBusinessの話です。2025年6月に価格を改定しました。営業体制を広げ、AIエージェントを相次いで出しました。その結果、1社あたりの単価が上がったとあります。6月から8月の3か月では、Businessの売上は前年同期比で5割増えたとも書いています。
この部分は、そのまま受け取ります。理由は、Businessの売上が9か月で249億4,300万円から375億1,900万円へ増え、利益も赤字から黒字に変わっているからです。説明と表の数字が同じ方向を向いています。
一方で、ファンドの売却は事業の紹介の中に一文あるだけです。全社の黒字にどれだけ効いたのかは、決算短信の説明文の中では触れられていません。
通期予想に対して、どこまで来ているか
通期予想は幅で出ています。7月13日に修正したあと、今回は変えていません。
| 通期予想 | 9か月の実績 | |
|---|---|---|
| 売上高 | 605億〜623億円 | 469億800万円 |
| 営業利益 | △5億〜15億円 | 16億8,600万円 |
| 経常利益 | △22億〜△2億円 | 3億2,800万円 |
| 純利益 | △32億〜△7億円 | 4億9,800万円 |
営業利益は、9か月で予想の上限をもう超えています。上限の15億円から、9か月の実績を引きます。答えは△1億8,600万円です。いちばん良い場合でも、9月から11月の3か月は赤字を見込んでいる計算になります。下限なら、その3か月で21億円あまりの赤字です。
経常利益と純利益は、予想の幅そのものが赤字です。9か月で黒字にした分を、残り3か月で吐き出す前提になっています。なぜそう置いたままなのかは、決算短信には書かれていません。表紙には決算補足説明資料と説明会が「有」とあります。理由はそちらにあるのかもしれませんが、私はまだ目を通していません。
売上は、下限の605億円に対して8割近くまで来ています。ただ、この中にはファンドの21億3,400万円が入っています。
私はどう読んだか
全社の黒字と、Businessの黒字。この2つは分けて考えるべき決算です。
私は、Businessの黒字化のほうを重く見ています。理由は、ソフトの利用料が5割伸び、その上で前年の赤字が消えているからです。料金を上げても客が離れていない、という形が表の数字に出ています。
それでも、全社の黒字16億8,600万円をこの会社の実力とは受け取っていません。ファンドの1銘柄を除けば、営業段階でほぼ収支とんとんです。その下の利益は、特別利益の株の売却が支えています。会社自身も、残り3か月を赤字と見込んでいます。心配性なので、来期に株の売却が無い場合の数字のほうを先に考えています。
出典:決算短信(会社発表)

Businessの先行投資の表にある「第3四半期実績」77億700万円が、9か月の累計なのか、6月から8月の3か月分なのかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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