インスペック(6656)2027年4月期 第1四半期決算分析――縮んだ損失を、そのまま受け取れない

インスペック(6656)2027年4月期 第1四半期決算分析――縮んだ損失を、そのまま受け取れない 決算を読む

はじめに

半導体のチップは、そのままでは製品に載せられません。チップと外側の配線をつなぐ「パッケージ基板」という細かい配線板の上に載せて、はじめて使えるようになります。この配線は髪の毛よりずっと細く、わずかな欠けや短絡があれば、その上に載せた高価なチップごと不良になります。

インスペックは、このパッケージ基板をカメラで撮り、配線の傷や欠けを自動で見つける検査装置を作っている会社です。買うのは基板を作るメーカーです。フィルム状の基板をロールから送りながら検査する装置や、製造ラインに組み込む検査システムも手がけています。

装置は一台の金額が大きく、納入がどの期間に入るかで売上が揺れます。この会社の短信を開くときは、まずそこを頭に入れておきます。

この決算で何が起きたか

9月11日に出た、2027年4月期の第1四半期決算です。5月から7月の3か月分になります。

項目今回前年同期増減率
売上高4億9,600万円9,900万円+401.0%
営業利益△2,100万円△1億3,600万円
経常利益△3,100万円△1億4,400万円
純利益△100万円△1億4,500万円

売上は前年同期の5倍ですが、前年の土台が9,900万円と低く、増え方の大きさはそこから来ています。損失は3段とも縮み、純損失は100万円まで来ました。ここまでが1ページ目です。

純損失100万円の下に、戻入益3,064万円があります

引っかかったのは、純損失が100万円で済んでいることです。営業損失は2,100万円、経常損失は3,100万円あるのに、です。損益計算書を下までたどると、特別利益に「新株予約権戻入益」3,064万円が載っていました。

経常損失3,128万円に、この3,064万円を足します。すると税引前の損失は63万円です。税金を引いて、純損失は183万円。1ページ目は端数を切り捨てるので「1」に見えます。……戻入益で埋めた、ということか。

新株予約権戻入益は、以前に発行した新株予約権が行使されないまま消えたときに、純資産に計上していた分を利益に戻す科目です。現金が入ってくる種類の利益ではありません。貸借対照表でも、新株予約権が2億1,206万円から1億8,392万円へ減っています。どの回の予約権が消えたのかは、決算短信には書かれていません。

本業の損失は、前年の1億3,600万円から2,100万円へ縮みました。ここは本物です。ただ、売上が5倍になったのに、売上総利益は4倍に届いていません。4,986万円から1億9,513万円への増え方です。

この短信にキャッシュ・フロー計算書が無いので、貸借対照表で現金を追いました

第1四半期のキャッシュ・フロー計算書は作成していない、と注記にあります。珍しいことではないので、貸借対照表の4月30日と7月31日を並べて、現金の行き先を追いました。

項目4月30日7月31日動き
現金及び預金5億853万円3億1,725万円1億9,100万円減
売掛金及び契約資産12億6,500万円5億5,470万円7億1,000万円減
電子記録債権1億2,673万円208万円約1億2,400万円減
仕掛品6億1,681万円7億676万円約9,000万円増
短期借入金17億2,080万円9億円8億2,000万円減

「約」の付いた動きは私の引き算で、ほかは短信4ページに会社が書いている増減です。

前期末に12億6,500万円あった売掛金が、3か月で半分以下になりました。電子記録債権と合わせて、8億3,000万円ほどの現金が入ってきた計算になります。ところが現金は1億9,100万円減っています。

行き先は短期借入金です。8億2,000万円を返しています。回収した売掛金が、そのまま返済に消えた形です。そのうえで仕掛品と原材料が増え、営業損失の分も出ていきます。

説明は付くのですが、手元の現金3億1,725万円は、四半期の売上4億9,600万円より少ない額です。

受注残高12億3,900万円と、残り9か月に要る20億400万円

第1四半期の受注高は4億6,200万円で、前年同期より2割強少ない額です。期末の受注残高は12億3,900万円で、前年同期から3分の1以上減っています。売上が5倍になった裏で、注文の入りは細っています。

通期予想の売上は25億円です。そこから4億9,600万円を引くと、残り9か月で20億400万円が要ります。受注残高12億3,900万円が全部この期のうちに納入されたとしても、差し引き7億6,500万円は、これから受注して、これから納めなければなりません。第1四半期の受注高4億6,200万円の調子が続けば、届く数字ではあります。

期末のあとに決まった、約20億円の新株予約権

重要な後発事象に、第19回新株予約権の発行が載っています。8月5日の取締役会で決め、8月21日に海外の金融機関へ割り当てました。全部が行使されれば、差引で19億9,910万円が入る見込みです。行使価額は毎週見直され、下がれば調達額も減る、と注にあります。

潜在株式は235万9,000株で、発行済株式401万3,200株の6割近くにあたります(私の割り算です)。借入を返して現金が3億1,725万円まで減った四半期の直後に、20億円近くを株で調達する仕組みを用意しました。……順番はこれで合っているのか。

利益剰余金は2億519万円のマイナスで、配当予想はゼロです。調達したお金の使い道は、決算短信には書かれていません。

会社はどう説明しているか

売上が伸びた理由は、ロールtoロール型検査装置とインライン検査システムが堅調だったから、と4ページにあります。背景には、先端半導体やAIデータセンター向けの設備投資と、チップレット化によるパッケージ基板の需要増を挙げています。受注が減った理由は「大型案件が多くクロージングまで時間を要するため」で、商談は活発だとも。

売上の説明はそのまま受け取ります。理由は、契約負債が1億2,371万円から1億9,640万円へ増えていて、次の納入に向けた作業が動いている跡が貸借対照表に見えるからです。

「期初の計画通り堅調に推移」には留保を付けます。受注高が2割減、受注残高が3分の1減で、それが計画どおりなのか、計画がもともと後半に偏っているのか、短信の文章からは分かりません。補足説明資料は作らないと表紙にあるので、いま読める書類はこの短信だけです。

通期予想に対して、どこまで来ているか

第1四半期の売上4億9,600万円は、通期25億円の2割で、4分の1の目安より少し遅れています。ただこの会社の売上は納入の時期で動くので、前年の形と並べます。

売上高第1四半期8月から4月の9か月通期
前年 実績9,900万円約23億8,000万円約24億8,000万円
今年 会社予想4億9,600万円20億400万円25億円

約の付いた数字は、通期予想25億円を増減率+0.8%で割り戻し、そこから前年の第1四半期を引いたものです。20億400万円は私の引き算です。25億円から今回の4億9,600万円を引きました。

前年は、第1四半期のあと残りの9か月で23億8,000万円を売っています。今年は同じ9か月で20億400万円あればよく、前年より15.8%少なくて済む置き方です。出だしが良かった分、後半の負担は軽くなっています。

営業利益は、通期予想1億5,000万円に対して、第1四半期は2,100万円の損失です。残り9か月で1億7,100万円の黒字が要ります。前年も第1四半期の損失のあと通期を黒字で終えていますから、形は前年をなぞる置き方です。

私はどう読んだか

損失が縮んだ四半期というより、現金を借入の返済に使い切ったあとに株での調達を用意した四半期だ、と私は受け取りました。純損失100万円は、戻入益を除けば3,100万円の経常損失で、黒字の手前にいる会社の数字です。

売上の回復は本物だと考えています。理由は、次の納入に向けた動きが貸借対照表に出ているからです。

それでも心配性なので、先に下のほうを見ます。受注高の減り方と、6割近い潜在株式です。注文が細っているのは、商談の大型化で時間がかかっているだけかもしれません。それが本当かどうかは、次の受注高で分かります。上がるかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

IRライブラリー
インスペック株式会社の公式サイト。AOI、AVI(AFVI)、ロールtoロール型検査装置では高速、高性能なPCB用外観検査装置を、ロールtoロール型シームレスレーザー直描露光機では継ぎ目のない超長尺FPC用露光装置をお届けします。

受注残高12億3,900万円のうち、この期のうちに売上になる分がどれだけかは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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