キオクシアホールディングス(285A)2027年3月期 中間決算分析・続報――納税前の現金と見ました

キオクシアホールディングス(285A)2027年3月期 中間決算分析・続報――納税前の現金と見ました 日本株

はじめに

キオクシアホールディングスは、旧東芝メモリです。作っているのはNAND型フラッシュメモリで、電源を切っても中身が消えない記憶部品です。スマートフォンの写真やパソコンのデータ、データセンターのサーバーに差し込むSSDの中に入っています。

生成AIを動かす企業は、学習に使うデータや答えを返すためのデータを、大量に置いておく場所を必要とします。その置き場所の部品を作っているのが、この会社です。工場は米サンディスクと共同で動かしています。製品はほとんどメモリだけなので、メモリの値段が動くと業績もほぼそのまま動きます。

8月12日に、7月31日発表の第1四半期決算について前の記事を書きました。そのとき引っかかったのは、営業債権が急に膨らんでいたことと、通期予想が無いことです。記事の最後には、次はこの債権が現金に変わるかを確かめる、と書きました。

この決算で何が起きたか

今回は、2026年10月30日に出た中間決算です。対象は4月から9月の半年分です。

項目今回前年同期増減率
売上高(売上収益)4兆2,471億5,200万円7,911億4,500万円+436.8%
営業利益3兆2,647億2,700万円1,308億2,000万円—
経常利益———
純利益2兆1,978億7,100万円589億4,600万円—

IFRSを使っているので、経常利益はありません。営業利益と純利益は増減率が1,000%を超えるため、短信でも「-」と書かれています。純利益は、親会社の所有者に帰属する中間利益です。

売上は前年の上期のおよそ5倍になりました。この表だけを見ると、前回の話がそのまま続いているように見えます。

営業債権は増え続けたが、売上に対する割合は変わらなかった

前回の宿題から片付けます。貸借対照表によると、9月末の営業債権及びその他の債権は1兆6,483億5,600万円でした。6月末から、さらに5,000億円近く増えています。「現金に変わったか」という問いへの答えは、「変わらず、もっと積み上がった」になります。

ただ、残高だけを見ていたのは不十分でした。売上が増えれば、回収を待っている代金も増えます。そこで、各四半期末の残高をその3か月の売上で割りました。

6月末9月末
営業債権の残高1兆1,516億円1兆6,483億5,600万円
その3か月の売上収益1兆7,671億円2兆4,800億円
残高を売上で割った値約0.65約0.66

約の付いた数字は、上の2行から私が割ったものです。

どちらの時点でも、3か月分の売上の3分の2ほどが回収待ちで残っています。3か月の3分の2なので、日数に直すと2か月分くらいです。回収が遅れたのではなく、売上と同じ速さで残高が増えただけだ、と私は受け取りました。前回の私は残高の大きさだけに反応していて、その点では外れていました。

営業キャッシュ・フローは、税金を払う前の数字だった

債権の話が済んだので、キャッシュ・フロー計算書の残りの行を上から順に追いました。引っかかったのは、法人所得税の支払額です。

項目上期の金額
法人所得税費用(損益計算書)1兆55億1,500万円
法人所得税の支払額(キャッシュ・フロー計算書)1,107億2,600万円
未払法人所得税(9月末の貸借対照表)9,746億8,900万円

損益計算書では1兆円を超える税金を費用に計上しています。それなのに、半年で実際に払ったのは1,107億円ほどです。……そうか、まだ払っていないのか。

払っていない分は、未払法人所得税として負債に残っています。短信の説明文にも、この半年で8,702億円増えたと書かれています。

税金は、利益が出たその時ではなく、あとからまとめて納めるものです。私も財務の仕事をしていて、納税月の資金繰りは毎年の山場になります。ですから、これ自体は珍しいことではありません。

それでも、営業キャッシュ・フローの見え方は変わります。上期の営業キャッシュ・フローは2兆3,796億円でした。ここから未払法人所得税の増加分8,702億円を引くと、1兆5,094億円になります。税金を払い終えたあとの稼ぎは、この数字のほうが近いはずです。

稼いだ現金は、借入の返済より自己株式の取得に多く回った

9月末の現金及び現金同等物は1兆3,973億円で、期首から9,266億円増えました。営業で入った現金がどこへ出ていったかを、短信の説明文から並べます。

上期の現金の出入り金額
営業活動によるキャッシュ・フロー2兆3,796億円
自己株式の取得による支出△8,003億円
長期借入金の返済による支出△5,231億円
有形固定資産の取得による支出△1,353億円
Nanya Technology Corporationの株式取得△782億円

前回は、借入金の繰上返済を見て「堅い順番だ」と書きました。この半年でいちばん大きかった支出は、返済ではなく自己株式の取得です。中間配当90円も決まり、これが初めての配当になります。この90円は、10月1日に1株を3株に分割する前の株数に対する額です。

使い道の表には、逆に増えなかった支出も入っています。有形固定資産の取得は1,353億円で、前年同期の1,431億円より少なくなりました。減価償却費の1,535億円も下回っています。利益が何十倍に増えても、工場への支出は増やしていません。

手元の1兆3,973億円のうち、1兆円近くはいずれ税金として出ていきます。この現金は納税前の現金として見るのが正しい、と私は考えました。

会社はどう説明しているか

会社は、第2四半期を前四半期と比べて説明しています。売上が7,129億円増えた理由として挙げているのは、データセンター向けの需要が旺盛だったことによる平均販売単価の大幅な上昇と、記憶容量ベースでの出荷量の増加です。

引っかかったのは、スマートデバイスの売上です。同じ説明文の中で、会社はスマートフォンとPC向けの需要は鈍化傾向にあると書いています。それなのに、この分野の売上は前四半期から5割増えて7,889億円になりました。

損益計算書からも、同じ方向のことが分かります。第2四半期の売上原価は4,268億7,200万円です。上期累計の8,139億2,300万円からこれを引くと、第1四半期の売上原価は3,870億5,100万円になります。売上が7,129億円増えた四半期に、原価は400億円ほどしか増えていません。

需要が鈍いと書かれた分野まで売上が伸びたのは、数量よりも単価が効いたからだ、と私は読みました。単価が伸びの中心だという会社の説明は、そのまま受け取ります。

通期予想は今回も無く、示されたのは次の3か月だけ

まず前回の答え合わせです。7月に会社が示した上期予想と、実績を並べます。

上期予想(7月発表)上期実績
売上収益4兆1,571億1,700万円4兆2,471億5,200万円
営業利益3兆1,600億1,700万円3兆2,647億2,700万円

売上は予想を約900億円上回りました。これは私の引き算です。

今回も通期予想はありません。理由は前回と同じで、事業環境が短期間に大きく変化するからだと書かれています。会社が示したのは、10月から12月の第3四半期だけです。

項目第1四半期 実績第2四半期 実績第3四半期 見通し
売上収益1兆7,671億円2兆4,800億円2兆5,000億円
営業利益1兆2,700億円1兆9,947億円1兆9,950億円
親会社の所有者に帰属する四半期利益8,422億円1兆3,557億円1兆3,600億円
米ドル平均為替レート160円161円157円

前四半期から4割伸びてきた売上が、ほぼ横ばいになる見通しです。会社の説明では、需要は旺盛なまま続くものの、為替の悪化を見込んで第2四半期と同じ水準にしたとのことです。通期予想が無いので、進捗率は計算できません。

私はどう読んだか

私はこの半年を、前回より安心できる決算だと考えています。理由は、心配していた営業債権が売上と同じ割合で動いており、回収が滞っている様子が短信の数字から見えないからです。

一方で、現金の大きさは割り引いて受け取っています。税金を払う前の手元資金から、8,000億円を自己株式の取得に使ったからです。納税のあとにどれだけ残るかは、次の決算でなければ確かめられません。

会社自身は、次の3か月をほぼ横ばいと見込んでいます。上がるかは知りません。次に見るのは、未払法人所得税が減ったときに、現金がどれだけ残っているかです。

出典:決算短信(会社発表)

https://ssl4.eir-parts.net/doc/285A/tdnet/2902676/00.pdf

従業員に支給する特別利益分配金がいくらだったのかは、読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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