デンカ(4061)2027年3月期 第1四半期決算分析――中間の純利益ゼロが気になる

デンカ(4061)2027年3月期 第1四半期決算分析――中間の純利益ゼロが気になる 決算を読む

ゴムと樹脂と、AIの基板に入る材料を作る会社

デンカは、古くからある化学の会社です。合成ゴムの一種のクロロプレンゴムや、スチレン系の樹脂を作っています。スーパーで見かける食品の包装シートも作っています。インフルエンザのワクチンや、病院で使う検査キットも手がけています。

いま伸びているのは電子材料です。AIのサーバーに入る基板は、絶縁層に樹脂と粉を混ぜて作ります。デンカはこの樹脂と粉を、基板メーカーに売っています。信号を遅らせない性質が求められる材料です。データセンターの蓄電池や、高圧の送電ケーブルに使う材料も出ています。

営業利益は5倍近く、純利益は4割減

8月7日に出た第1四半期決算です。4月から6月の3か月分になります。

今回前年同期増減率
売上高969億7,700万円940億6,700万円+3.1%
営業利益109億9,300万円23億200万円+377.6%
経常利益94億7,500万円16億7,100万円+466.8%
純利益28億4,300万円50億100万円△43.2%

本業の利益は大きく増えたのに、最後の純利益は減っています。上と下で、向きが逆です。

増えた利益の大半は、在庫の値ずれと工場の停止でした

営業利益は前年同期から86億9,100万円増えました。短信の4ページ目で部門ごとに並べると、AIで伸びている電子・先端プロダクツ部門の増益は12億1,300万円です。いちばん増えたのはポリマーソリューション部門で、32億2,100万円でした。

ポリマー部門の説明文には「在庫影響による一時的な増益効果もあり」とあります。原燃料の価格が上がる前に仕入れた材料を、値上げしたあとの価格で売った差です。全社でいくらになるのかは、短信には書かれていません。

説明会資料のほうに金額がありました。そこでは、在庫影響が全社で60億円、米国子会社の工場を止めた効果が30億円です。この2つだけで、増益の86億9,100万円を上回ります。……AIで5倍になったわけではない。

財務担当の役員も、在庫影響は原燃料価格が下を向けば逆にマイナスになり得ると話しています。会社自身がこれを一時的と認めているので、ここは私の受け取り方と同じです。

止めた米国工場が、損益計算書の上と下で逆に効いています

米国子会社は、クロロプレンゴムを作る会社です。その工場を、期限を定めずに暫定停止しています。コストの高い工場だったので、止めれば営業利益は良くなります。エラストマー・インフラソリューション部門は、前年同期の13億9,500万円の赤字から、27億4,100万円の黒字に変わりました。

ただ、止めるにも費用がかかります。特別損失の事業整理損は48億4,400万円で、前年同期の22億100万円から倍以上に増えました。説明会資料によると、工場から原材料や中間品を抜き取る作業の労務費などです。従業員は7月末で約80名まで減ったそうです。

営業外費用にも引っかかった行があります。操業休止等経費が5億6,700万円から11億2,500万円へ、倍になっています。何の操業休止なのかは、短信には書かれていません。

7月から9月は、純損失の置き方になっています

短信の5ページ目で、会社は上期の予想を直しています。営業利益は120億円から170億円へ上げました。純利益は0円のまま据え置いています。理由は、米国子会社の事業整理損失を見込んでいるからだと書いてあります。

4月から6月で純利益が28億4,300万円出ています。上期を0円と置くなら、7月から9月の3か月で同じだけの純損失を見込んでいることになります。前年と並べると、この置き方がはっきりします。

4〜6月7〜9月上期
営業利益 前年実績23億200万円約74億3,800万円97億4,000万円
営業利益 今年109億9,300万円(実績)約60億700万円170億円(会社予想)
純利益 前年実績50億100万円約△10億9,900万円39億200万円
純利益 今年28億4,300万円(実績)約△28億4,300万円0円(会社予想)

約の付いた数字は、上期の数字から4〜6月を引いて私が出したものです。

今年の7月から9月は、営業利益が4〜6月の半分ほどで、前年の同じ3か月も下回る置き方です。前年もこの3か月は純損失でした。前年の4〜6月の純利益は、固定資産売却益の81億8,800万円に支えられていました。説明会資料によると、大船工場の用地を売った益です。

在庫と借入が、3か月で増えています

この会社は、第1四半期のキャッシュ・フロー計算書を作っていません。短信の10ページ目の注記に、そう書いてあります。代わりに貸借対照表を3月末と6月末で並べました。

3月末6月末
棚卸資産(製品・仕掛品・原材料の合計)約1,273億9,600万円約1,355億円
受取手形・売掛金882億9,900万円832億7,700万円
建設仮勘定789億9,700万円855億7,200万円
有利子負債(借入金・CP・社債の合計)約2,217億1,300万円約2,378億7,600万円

約の付いた数字は、短信の科目を私が足し合わせたものです。

在庫が約81億円、建設中の設備が約66億円増えました。売掛金は約50億円減っています。仕入れ値が上がれば、同じ量でも在庫の金額は膨らみます。現金の出入りの表が無いので確かめきれませんが、設備と在庫を借入でまかなった3か月、と私は受け取りました。

会社は「在庫影響は一時的」と自分で書いています

短信の説明はこうです。電子・先端製品の販売数量が増えました。原燃料価格に合わせて販売価格を見直し、円安で手取りも増えています。そこに在庫影響の一時的な増益が加わりました。純利益は、米国子会社の特別損失で減りました。

在庫影響を自分から「一時的」と書いている点は、率直だと思います。そのまま受け取ります。

引っかかったのは、説明会での財務担当役員の言葉です。特別損失は今後も出るので「特別利益などで補填し、最終利益をコントロールしていきたい」と話しています。私も財務の仕事をしているので、言いたいことは分かります。ただ、何を売って埋めるのかは、短信にも説明会資料にも書かれていません。

通期予想に対して、どこまで来ているか

通期の予想は5月13日に出したものから動かしていません。第2四半期の決算で見直すと予告しています。

通期予想進み具合残り9か月に要る額残り9か月の前年同期比
売上高4,500億円約22%3,530億2,300万円約2割増
営業利益300億円約37%190億700万円約2割減
経常利益200億円約47%105億2,500万円約4割減
純利益160億円約18%131億5,700万円約2割増

進み具合は4〜6月の実績を通期予想で割って、残りの額は通期予想から4〜6月の実績を引いて出しました。

営業利益は、3か月で4分の1を大きく超えました。残り9か月は前年を2割下回っても届きます。一方で売上高は、残り9か月で2割増が要ります。4〜6月の伸びは3%ほどだったので、開きがあります。

私はどう読んだか

私は、この四半期の増益を、半分以上は一度きりのものだと考えています。理由は、60億円の在庫影響は原燃料価格が下を向けば逆に効くと、会社自身が話しているからです。工場を止めた効果は続きますが、同じ工場の後始末が特別損失として出続けます。

腰の据わった伸びは、電子・先端の部門の12億円ほどです。小さくはありません。ただ、増益全体から見れば一部です。

通期予想を据え置いたのは、慎重すぎるとは思いません。上がるかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260807/140120260806512746.pdf

7月から9月に出る特別損失の大きさと、それを埋める特別利益の中身は読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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