野村総合研究所(4307)2027年3月期 中間決算分析――コンサルだけ減益なのが気になる

野村総合研究所(4307)2027年3月期 中間決算分析――コンサルだけ減益なのが気になる 日本株

証券会社や銀行の裏側で、システムを動かし続ける会社

野村総合研究所は、システムを作るだけでなく、作ったあとも動かし続ける会社です。お客さんの中心は証券会社、保険会社、銀行です。いくつもの証券会社が一つの仕組みを共同で使う形のサービスも持っています。証券口座で注文を出したとき、その後ろではこうしたシステムが動いています。

金融のほかに、流通業や製造業のシステム、データセンターの運営、情報セキュリティの仕事もあります。いちばん上流にはコンサルティングがあります。何を作るかをお客さんと一緒に考える段階から入れるのが、この会社の形です。

4月から9月の半年は、増収増益

10月29日に出た、2027年3月期の中間決算です。4月から9月までの半年を、前年同期と比べます。

今回前年同期増減率
売上高4,299億600万円3,970億6,500万円+8.3%
営業利益882億7,200万円787億9,900万円+12.0%
経常利益———
純利益600億1,400万円535億6,500万円+12.0%

IFRSの会社なので、経常利益の欄はありません。いちばん近いのは税引前中間利益で、897億300万円でした。営業利益が売上より速く伸び、営業利益率は前年同期より0.7ポイント改善しています。

通期の営業利益「約3倍」は、前の期の損失の裏返し

表紙の通期予想には、営業利益が前期の約3倍、純利益が約8倍と載っています。最初に引っかかったのはここでした。上期の伸びが1割前後の会社に、3倍は合いません。

手がかりは、添付資料8ページの予想の表の右端にある「前年度実績」でした。前の期の営業利益は582億7,300万円です。前の期は上期だけで787億9,900万円を稼いでいました。通期の582億7,300万円から、上期の787億9,900万円を引きます。すると、前の期の下期は205億2,600万円の営業損失だったことになります。

その下期に何があったのかは、この短信には書かれていません。説明会資料は、前の期の営業利益を「減損損失等を含まない参考値」として1,566億円と出していて、それと比べた通期予想の伸びは14.9%です。どちらも説明会資料の数字です。3倍は成長の大きさではなく、前の期の損失の大きさを映しています。

7月から9月の3か月のほうが、利益率は高かった

7月30日に出た第1四半期の数字があるので、上期から引いて7月から9月だけを取り出しました。

4月〜6月7月〜9月上期累計
売上高2,104億5,500万円約2,194億5,100万円4,299億600万円
営業利益417億1,100万円約465億6,100万円882億7,200万円
営業利益率約19.8%約21.2%20.5%

約の付いた数字は、上期累計から第1四半期を私が引いたものと、それを売上で割ったものです。

後ろの3か月のほうが、売上も利益率も高くなっています。半年の伸びは、前半の貯金で作ったものではありません。

コンサルティングだけが、減益で予想も減額

セグメント売上収益前年同期比営業利益前年同期比
コンサルティング331億9,200万円+4.7%77億8,400万円△6.8%
金融ITソリューション2,445億3,900万円+8.8%423億1,700万円+17.7%
産業ITソリューション1,183億1,000万円+5.1%149億2,400万円+0.5%
IT基盤サービス1,191億9,800万円+11.8%227億1,200万円+17.8%

4つの事業のうち、営業利益が前年同期を割ったのはコンサルティングだけです。短信の5ページ目には、売上はAIコンサルティングの受注増で伸び、営業利益は「一部の案件縮小に伴う稼働率の低下」で減った、と書いてあります。

通期の見通しにも同じ傾きが出ています。添付資料8ページのセグメント別売上予想で、全体は8,500億円から8,700億円へ増額されました。その中で、コンサルティングだけが700億円から660億円に減らされています。

……AIの相談は増えているのに、相談を受ける部門の予想が減っている。

説明会資料には、AXコンサルの売上が前期比で約2倍とあります。部門全体の売上の伸びは5%に満たないので、AI以外のコンサルティングが縮んだ、と私は受け取りました。縮んだのは大型顧客向けの案件だと、説明会資料は書いています。

稼いだ現金より多くを、株主に戻した半年

キャッシュ・フロー計算書まで進むと、この半年の現金の使い道が分かります。

項目金額
営業活動によるキャッシュ・フロー945億3,400万円
定期預金の払戻による収入488億8,600万円
長期借入れによる収入240億円
自己株式の取得による支出△950億4,300万円
配当金の支払額△241億2,200万円

本業で生んだ現金は、前年同期の736億6,800万円から2割以上増えました。ただ、自己株式の取得と配当を足すと、その額を超えます。差を埋めたのは定期預金の払戻と、社員持株会向けの信託を再設定するための借入れです。

結果として、親会社所有者帰属持分比率は45.2%から41.0%に低下しました。利益を出しながら自己資本を減らすのは、会社が選んだ資本の使い方です。営業債権が減って契約資産が増えた動きも、年度末に終わる案件が多いための毎年の形だと、短信の6ページ目に書いてあります。

短信は「案件と運用の増加」、AIの話は説明会資料の側に

短信は、利益率の改善を「国内事業のシステム開発案件や運用サービスの増加」で説明しています。AIについては、IT基盤サービスの節で「開発プロセスへのAI活用などによる抜本的な生産革新に取り組んでいます」とあるだけです。短信には、AIが増益に効いたとまでは書かれていません。説明会資料は、表紙の次のページで「AIを活用した生産革新が増益に寄与」と言い切っています。

この説明には、少し留保をつけています。理由は、売上総利益率の動きが小さいからです。売上総利益は1,613億9,600万円で、売上で割ると37.5%です。前年同期は37.3%だったので、改善は0.2ポイントにとどまります。開発の手間がAIで大きく減ったなら、まず原価に出るはずです。今回は、販管費の伸びが6.5%に収まった効き目のほうが大きいと考えています。

通期予想の半分近くまで来ている

上期実績通期予想(10月29日修正後)進捗率
売上高4,299億600万円8,700億円約49.4%
営業利益882億7,200万円1,800億円約49.0%
純利益600億1,400万円1,230億円約48.8%

進捗率は、上期実績を修正後の通期予想で割ったものです。

通期予想の8,700億円から、上期の4,299億600万円を引きます。下期に要る売上は4,400億9,400万円です。営業利益も同じ計算で、1,800億円から882億7,200万円を差し引きます。残りは917億2,800万円です。どちらも上期より大きい額です。営業利益なら、7月から9月の約465億円のペースが2回続けば届きます。前の期の下期は損失だったので、前年と比べる物差しは使えません。

説明会資料の数字ですが、9月末の受注残高のうち今期の売上になる分は2,942億8,800万円あります。

強さは本物で、コンサルの縮みは大型案件一つの影響だと考えています

私は、この上期の強さは本物だという見方をしています。理由は、利益の伸びに営業キャッシュ・フローの増加が伴っていて、しかも7月から9月の3か月のほうが利益率が高いからです。営業外の一時的な収入で作った利益でもありません。

コンサルティングの減益は、大型顧客の案件が縮んだ影響だと考えています。説明会資料では、コンサルティングの受注残高が前年同期より1割増えています。ただ、半年の受注高は前年同期をわずかに割っています。心配性なので、次の決算ではまずこの部門の受注高を確かめます。この先どうなるかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

https://data.swcms.net/file/nri-ir/dam/jcr:131a4fe5-0277-494c-8662-dc0ea44d4ae1/140120261027556542.pdf

コンサルティングで縮小した「一部の案件」がどんな案件で、来期まで影響が続くのかは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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