はじめに
中部地方の家庭や工場に電気を売っている会社です。部屋の照明やエアコン、工場の機械を動かす電気の、毎月の請求書を出している側です。
グループの中身は大きく3つに分かれます。電気を売る小売の会社、電線と変電所で電気を届ける送配電の会社、そして火力発電です。火力は東京電力側と一緒に作った合弁会社に移してあり、そこが稼いだ利益は、持ち分に応じて取り込む形になっています。
自前の発電所として残っているのは、水力と、静岡県の浜岡原子力発電所です。浜岡は止まったままです。今回の決算は、ほとんどこの発電所の話でした。
半年で2,800億円の赤字
10月29日に発表された中間決算です。売上は1割ほど増えましたが、利益の行は様子がまったく違います。
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆9,452億600万円 | 1兆7,478億3,200万円 | +11.3% |
| 営業利益 | △780億5,400万円 | 1,455億4,400万円 | — |
| 経常利益 | 410億4,700万円 | 1,962億9,500万円 | △79.1% |
| 純利益 | △2,804億5,900万円 | 1,663億8,100万円 | — |
営業損益は赤字、経常損益は黒字、純損益は大きな赤字です。同じ半年の中で、利益の符号が上から順に入れ替わっています。
原子力発電設備が、ゼロ円になった
印刷した短信の貸借対照表に、赤ペンで丸を付けた行がいくつかあります。
| 科目 | 2026年3月末 | 2026年9月末 |
|---|---|---|
| 原子力発電設備 | 824億8,600万円 | 0円 |
| 装荷核燃料 | 400億4,000万円 | 0円 |
| 建設仮勘定及び除却仮勘定 | 5,006億9,800万円 | 3,092億4,100万円 |
| 現金及び預金 | 3,366億8,600万円 | 1,959億3,400万円 |
| 繰延税金資産 | 1,445億3,700万円 | 2,059億9,700万円 |
出典:決算短信の中間連結貸借対照表
原子力発電設備は、半年前には824億8,600万円ありました。9月末はゼロです。原子炉に入っている装荷核燃料も、同じくゼロになっています。……ゼロか。
損益計算書の特別損失は、減損損失と核燃料評価損を合わせて3,704億7,000万円です。発電設備の824億円と核燃料の400億円を足しても、届きません。工事中の設備を載せる建設仮勘定も、5,006億9,800万円から3,092億4,100万円へ減りました。減った額は1,900億円あまりです。安全対策の工事に積んできたお金も、ここで落としたのだと私は考えています。
引っかかったのは、短信の追加情報にある一文です。回収可能価額は「零円と見積もられた」と書かれています。減損は普通、帳簿の価値をいくらか切り下げる処理です。今回は全額でした。
本体は赤字で、黒字は合弁会社から来ている
営業損益の780億円の赤字は、電気を売って届ける本体の成績です。それでも経常利益が残ったのは、持分法による投資利益が1,321億6,800万円入ったからです。前年同期の683億900万円から、ほぼ倍になっています。
ここから先は説明会資料の数字です。火力の合弁会社の経常損益は786億円から1,348億円に増えました。一方で、小売の会社は956億円の黒字から1,038億円の赤字です。燃料の値段が電気料金に反映されるまでの時間差を、会社は「期ずれ」と呼んでいます。この期ずれが、前年は差益で、今年は差損になったという説明です。
燃料が高くなると、発電する側は売り先で稼ぎ、電気を売る側は仕入れで苦しみます。グループの中で、得と損がきれいに分かれた半年でした。
現金の減少と、税金の戻り
損益計算書には出てこない動きが2つあります。1つは現金の行方、もう1つは赤字を和らげている税金の処理です。
現金及び預金は、半年で1,400億円ほど減りました。売掛金なども増えています。ただ、この短信にはキャッシュ・フロー計算書が載っていないので、お金が何に出ていったのかは追えません。
繰延税金資産は614億円ほど増えました。損益計算書の法人税等は△506億3,500万円です。赤字の一部を、将来払う税金が減る分として資産に計上した形です。特別損失が3,704億円あるのに純損失が2,804億円で止まっているのは、経常利益とこの税金の戻りがあるからです。
会社はどう説明しているか
短信の注記の説明は、こういう順序です。9月11日に、浜岡の基準地震動の策定をめぐる不適切事案について、調査委員会の報告書を受け取った。申請資料の信頼性に重大な疑義が生じたため、9月25日に3・4号機の設置変更許可申請などを取り下げた。再稼働の時期も、安全対策工事の費用も見通せなくなった。そこで将来のキャッシュ・フローを厳しめに見積もったところ、帳簿価額を下回った、という流れです。
9月25日は、この中間期が終わる5日前です。最後の1週間で、半年分の決算の形が変わったことになります。
説明会資料では、会社は「廃炉を意味しません」と書いています。回収できるシミュレーションも存在するが、十分な根拠をもって説明できない、という言い方です。帳簿はゼロでも、発電所をやめたわけではない。会計の手続きの話としては、この説明をそのまま受け取ります。
ただ、同じ説明会資料に、10月以降に浜岡の維持管理で行う設備投資も減損として計上する見込みだとあります。通期で100億円程度です。これから払うお金も、資産に載った時点で消えていく仕組みになりました。
通期予想に対して、どこまで来ているか
通期予想は修正されました。説明会資料によると、7月29日の時点では純利益1,600億円の黒字を見込んでいました。
| 通期予想 | 中間実績 | 下期に必要な分 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 4兆2,000億円 | 1兆9,452億600万円 | 約2兆2,548億円 |
| 経常利益 | 1,100億円 | 410億4,700万円 | 約690億円 |
| 純利益 | △2,150億円 | △2,804億5,900万円 | 約654億円の黒字 |
約の付いた数字は、通期予想から中間実績を引いた私の引き算です。
純損益は、上期だけで通期予想より深い赤字になっています。会社は下期に650億円あまりの黒字を出して、赤字幅を縮めると見込んでいます。下期にも浜岡の減損が100億円程度出る前提なので、それを上回って稼ぐ見込みということになります。なお、短信の通期予想には営業利益の欄がありません。
配当は年70円のまま変えていません。中間の35円はすでに決まりました。表紙の通期予想では1株当たり当期純利益が△284.51円なので、今期の利益からは出ない配当になります。
私はどう読んだか
営業赤字のほうは、期ずれで説明のつく部分が大きいと考えています。説明会資料の数字で、期ずれを除いた経常損益は950億円程度です。前年同期の1,632億円程度よりは減っていますが、赤字ではありません。
全体としては、私はこの決算を悪いほうに見ています。重く見ているのは、浜岡のゼロのほうです。理由は、ゼロを戻す手がかりが、今回の短信にも説明会資料にも見当たらないからです。会社自身も説明会資料で、再稼働について話せる状況にないと書いています。帳簿から消した額は一度きりでも、止まった発電所にかかる費用は毎年出ていきます。自己資本比率は41.0%から38.5%に下がりました。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
https://www.chuden.co.jp/ir/ir_siryo/kessan/__icsFiles/afieldfile/2026/10/29/2026tanshin_2qua_1.pdf
現金及び預金が半年で1,400億円ほど減った理由は、この短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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