キーエンスは、工場の生産ラインで使うセンサーや計測機器、画像で検査する装置を作る会社です。流れてくる部品の寸法が決まった範囲に入っているか、ラベルが正しく貼られているか、異物が混じっていないか。人の目では追いつかない速さでそれを見分け、外れたものをはじきます。
買い手は自動車や半導体、電子部品、食品の工場です。新しいラインを作るときや、古い設備を入れ替えるときに一緒に入ります。製品を作る工程の多くは国内の協力工場に任せています。工場が設備にお金を出している時期に売れる会社です。
9月の前の記事では、7月28日に出た第1四半期の短信を読みました。そのとき引っかかったのは、売上ほど原価が増えていないことです。粗利率の上昇はかなりの部分が円安によるものだと書きました。為替が逆に動いたときにどうなるかは、次の損益計算書で確かめるとしていました。
今回読むのは、10月29日に出た中間決算の短信です。会計期間は3月21日から9月20日までの半年です。
この決算で何が起きたか
| 今回 | 前年同期 | 増減率 | |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 7,353億9,900万円 | 5,453億円 | +34.9% |
| 営業利益 | 4,082億6,200万円 | 2,721億7,900万円 | +50.0% |
| 経常利益 | 4,243億4,800万円 | 2,850億円 | +48.9% |
| 純利益 | 2,986億7,500万円 | 1,999億5,900万円 | +49.4% |
半年で見ても、売上が3割半ば増え、利益が5割増えています。営業利益率は前年同期の5割弱から、5割半ばへ上がりました。
3か月ごとに分けると、後半のほうが伸びている
中間決算の数字は半年分の累計です。第1四半期の数字を引けば、6月21日から9月20日までの3か月だけを取り出せます。売上高なら、中間の7,353億9,900万円から第1四半期の3,466億2,100万円を引きます。残りは約3,887億7,800万円です。
| 第1四半期 | 第2四半期 | |
|---|---|---|
| 売上高 | 3,466億2,100万円 | 約3,887億7,800万円 |
| 売上高の前年同期比 | +32.8% | 約+36.8% |
| 営業利益 | 1,870億7,600万円 | 約2,211億8,600万円 |
| 営業利益の前年同期比 | +44.7% | 約+54.8% |
| 売上総利益率 | 85.0% | 約86.2% |
| 営業利益率 | 54.0% | 約56.9% |
約の付いた数字は、中間の累計から第1四半期を引いた3か月分と、それをもとにした私の割り算です。前年の第2四半期も同じように引いて求めました。
伸びは第1四半期で一服していませんでした。後半の3か月のほうが、前年比の伸びも利益率も一段高くなっています。
前の記事では、前年の同じ時期が低かったぶん伸びが大きく見えている面もある、と受け取っていました。ところが今回は、第1四半期から第2四半期にかけて売上が1割強増えています。前年の第1四半期から第2四半期への増え方は1割弱でした。季節の差だけでは片付かない増え方です。
営業外で為替が損に回った3か月に、粗利率は上がった
前の記事で確かめると書いたのは、ここです。
第1四半期の損益計算書では、営業外収益に為替差益が22億4,300万円ありました。中間の損益計算書では、為替差益の欄は消え、営業外費用に為替差損19億9,200万円が載っています。半年で差損ということは、第1四半期の差益を打ち消したうえで、さらに損が出たことになります。第1四半期の差益22億4,300万円と、半年の差損19億9,200万円を足します。第2四半期の3か月だけで、約42億3,500万円の為替差損です。
為替差損は、外貨で持っている預金や売掛金を、期末の為替で円に直したときに出ます。この3か月のうちに、為替が円高の方向に振れた場面があった、と私は受け取りました。
その3か月に、粗利率は85.0%から約86.2%へ上がっています。……円安だけの話なら、ここは下がっていてもおかしくない。
断っておくと、売上を円に直すときは期中の平均の為替を使うので、期末の為替差損と粗利率の動きはそのまま連動しません。ただ、為替の影響額は今回の決算短信には書かれていません。円安がどれだけ効いたかを、自分で切り分ける材料がありません。
在庫が4割近く増え、買掛金は3倍近くになった
もう一つ、貸借対照表で目が止まったのは、仕入れの側が大きく動いていることです。
| 期首(3月20日) | 中間期末(9月20日) | |
|---|---|---|
| 受取手形及び売掛金 | 3,795億9,000万円 | 4,382億7,400万円 |
| 棚卸資産 | 852億7,300万円 | 1,172億8,700万円 |
| 支払手形及び買掛金 | 108億9,000万円 | 309億700万円 |
売掛金の増え方は1割半ほどで、売上の伸びより小さくなっています。代金の回収は遅れていません。一方で棚卸資産は4割近く増え、売上より速いペースです。前の記事で「心配していません」と書いた項目ですが、第2四半期にも積み増しが続きました。
買掛金は3倍近くになりました。短信4ページ目の説明文も、負債が増えた主な理由をこの買掛金だとしています。協力工場からの仕入れを大きく増やし、その代金をまだ払っていない形です。売れる見込みがあって部品や製品を手元に厚くしている、と私は考えました。何をどの製品向けに仕入れたのかは、決算短信には書かれていません。
お金の流れも見ておきます。この短信にはキャッシュ・フロー計算書が載っていないので、貸借対照表の差で追うしかありません。現金及び預金は第1四半期末に減っていましたが、9月20日には6,985億700万円まで戻しています。投資有価証券も期首から1,775億円ほど増えました。手元の現金は細っていません。
会社の説明文は、3か月前とほとんど同じ
短信の説明文は、製造業を中心に設備投資が続き、各地域で堅調だったと述べています。北中南米は幅広い業界で堅調、アジアは半導体・電気精密業界を中心に成長、欧州は持ち直し、国内は回復基調。自社については、企画開発と営業の強化に努めたと書いています。
この並びは、第1四半期の短信とほとんど同じ言葉です。後半の3か月で伸びが強まったのに、説明の温度は変わっていません。いちばん具体的なのはアジアの半導体・電気精密の一文で、伸びの中心がそこにある、というところまでは受け取ります。加速した理由は、決算短信には書かれていません。表紙には補足説明資料を作り、アナリスト向けの説明会も開くとありますが、そちらはまだ手元にありません。
通期の予想は出ておらず、上がったのは配当
この会社は今回も通期の業績予想を出していません。短信の表紙に売上や利益の予想の欄が無く、進捗率は測れません。残りの半年に何を見込んでいるのかも、短信からは分かりません。
会社が示したのは配当です。中間配当は前期の275円から325円に上がりました。期末の予想も、分割前の換算で325円に修正し、年650円としています。前期は年550円でした。11月21日付で1株を5株に分ける予定で、分割後の期末予想は65円です。
半年の1株利益は1,231.53円です。修正後の年間配当650円の、2倍近くあります。業績の見通しは数字で示さず、配当の引き上げだけを先に決めた、という形です。
前の記事の読みは、円安を重く見すぎていた
前の記事で私は、粗利率の上昇のかなりの部分は円安が見せている姿だ、と書きました。今回はその見方を改め、本業の伸びのほうが大きいと考えています。理由は、営業外で為替が損に回った第2四半期に、粗利率も営業利益率もむしろ上がっているからです。外れていた、と書いておきます。
それでも心配性なので、在庫と買掛金の増え方は頭に置いておきます。積み上げた分が次の四半期に売上として出てくるのか、それとも在庫のまま残るのか。それは第3四半期の貸借対照表で確かめます。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
https://www.keyence.co.jp/pdf/EarningsRelease_202610_ja.pdf
第2四半期に伸びが強まった理由と、積み増した在庫が何に向けたものなのかは、決算短信からは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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