オービックは、会社の中の事務をまとめて動かすソフトを作っています。会計を真ん中に置いて、販売、購買、人事、給与といった帳簿のもとになる仕事を、一つの仕組みに乗せる。世間で統合業務ソフト、ERPと呼ばれているものです。買うのは製造業や流通業、金融などの大手・中堅企業で、実際に触るのは経理や情報システムの部署の人たちです。
私は財務の人間なので、こういうソフトは毎日「使う側」です。伝票を切って、月次を締めて、資金繰りの表を出す。その土台が止まると仕事が止まります。だから一度入れた会社は簡単には替えません。入れたあとの運用や保守、クラウドで預かる仕事が長く続くのは、そういう理由です。
この会社の特徴は、ソフトを自分で作って、自分で売るところにあります。代理店を挟まず、クラウドの設備も自社で持っている。短信の説明文でも、そこを繰り返し自分の言葉で書いています。
この決算で何が起きたか
7月22日に出た第1四半期の決算短信です。4つの利益がそろって1割以上伸びました。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 366億9,800万円 | 324億3,100万円 | +13.2% |
| 営業利益 | 248億6,000万円 | 214億7,900万円 | +15.7% |
| 経常利益 | 320億4,900万円 | 272億3,800万円 | +17.7% |
| 純利益 | 226億9,700万円 | 195億1,200万円 | +16.3% |
3つの事業がすべて増収増益で、いちばん大きい運用支援・保守の事業がいちばん速く伸びています。表だけなら、文句のつけようがない四半期です。ただ、この表の下に「包括利益」という注があって、8割近く減っていました。引っかかったのはそこです。
売上の2割しか原価がかからない商売
先に、この会社の利益の出方を確かめておきます。損益計算書の上のほうです。
| 項目 | 今回 | 前年同期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 366億9,800万円 | 324億3,100万円 |
| 売上原価 | 75億1,200万円 | 68億6,400万円 |
| 売上総利益 | 291億8,600万円 | 255億6,600万円 |
| 販売費及び一般管理費 | 43億2,500万円 | 40億8,700万円 |
| 営業利益 | 248億6,000万円 | 214億7,900万円 |
原価が売上の2割しかありません。販管費を引いても、売上の3分の2が営業利益として残ります。営業利益率は67.7%で、前年同期の66.3%からさらに高くなりました。これは私の割り算です。自社開発・直接販売で、間に誰も入らない。それが数字にそのまま出ています。
経常利益の2割強は、持ち株から来ている
ここからが、表紙では分からなかったことです。経常利益は320億4,900万円でした。そこから営業利益の248億6,000万円を引くと、71億8,900万円が残ります。この差は本業ではなく、営業外から来ています。
| 営業外収益 | 今回 | 前年同期 |
|---|---|---|
| 受取配当金 | 29億1,900万円 | 25億1,600万円 |
| 投資有価証券売却益 | 20億300万円 | 15億2,100万円 |
| 持分法による投資利益 | 18億1,100万円 | 14億5,700万円 |
| 受取賃貸料 | 5億9,800万円 | 5億4,900万円 |
| 受取利息 | 1億7,600万円 | 7,500万円 |
| 合計(その他を含む) | 75億6,800万円 | 61億4,000万円 |
上の3つは、どれも株を持っているから入ってくるお金です。配当を受け取る、持分法の会社の利益を取り込む、売った分の益を出す、の3つです。合計75億6,800万円を経常利益320億4,900万円で割ると、2割強になります。
貸借対照表を開くと、理由が分かります。投資有価証券が3,095億4,800万円あって、総資産5,839億7,300万円の半分を超えています。現金及び預金の1,942億8,700万円より大きい額です。ソフトの会社の資産の大半が、現金と株式でできています。
純利益は増え、純資産は232億円減った
その持ち株が、この3か月で評価を減らしました。会社の説明文にあるとおり、投資有価証券は前期末から228億2,700万円減っています。売った分もありますが、大半は評価の分で、その他有価証券評価差額金が154億6,800万円減りました。
それで、包括利益です。純利益は226億9,700万円なのに、包括利益は71億2,700万円。前年同期の317億9,800万円から77.6%減りました。……いや、四半期でこれだけ動くのか。損益計算書には出てこない評価の減り分が、150億円ここに載っています。
もう一つ、純資産を減らしたものがあります。株主への支払いです。配当金の支払が203億6,600万円、自己株式の取得が99億9,900万円。合わせて303億6,600万円が財務活動で出ていきました。営業活動で増えた資金148億5,000万円の2倍です。期末発行済株式数は前期末の4億9,800万株から4億9,200万株へ、600万株減っています。買った株を消したのだと受け取りました。
こうして純資産は前期末から232億3,900万円減って、4,927億7,200万円になりました。利益剰余金も48億1,500万円減っています。純利益は226億9,700万円で、配当は203億6,600万円です。差し引けば、まだ23億円ほど増えるはずの科目です。消した自己株式の分が剰余金から落ちた、と私は考えています。本業の稼ぎより、持ち株の評価と株主への支払いのほうが大きく動いた3か月でした。
受注は売上より先に伸びている
良い決算の理由も、表紙の外にありました。補足資料の受注実績です。受注は393億4,500万円でした。前年同期は345億7,300万円ですから、13.8%の伸びです。売上の伸び13.2%より先に走っています。
前受収益も、前期末の13億3,500万円から27億9,900万円へ、3か月で倍になりました。先に代金をもらって、これから仕事をする分です。運用支援や保守の売上は、こういう形で先に積み上がります。ここは追いかけたい数字です。
会社はどう説明しているか
短信の説明文では、大手・中堅企業への新規開拓が進んだこと、クラウドを中心に運用支援・保守が好調だったことを理由に挙げています。一方で、業界全体については「先行き不透明な景況感の中で投資判断には慎重さが見られました」とも書いています。慎重な顧客にも売れています。この説明は、そのまま受け取っていいと考えています。
留保が一つ。表紙に「決算補足説明資料作成の有無:無」「決算説明会開催の有無:無」とあります。つまり会社が出したのはこの短信だけです。投資有価証券を売って20億円の益を出したことについて、なぜ売ったのか、どこまで売るのかは、短信には書かれていません。営業外の話は、ほとんど数字だけです。
通期予想に対して、どこまで来ているか
4月21日の予想は据え置かれました。第1四半期の3か月分ですから、目安は4分の1です。
| 項目 | 通期予想 | 進み具合 | 残り9か月に必要な額 | 残りの前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,487億円 | 24.7% | 1,120億200万円 | +9.0% |
| 営業利益 | 980億円 | 25.4% | 731億4,000万円 | +8.6% |
| 経常利益 | 1,145億円 | 28.0% | 824億5,100万円 | +6.3% |
| 純利益 | 820億円 | 27.7% | 593億300万円 | +6.6% |
進み具合と残りの額は、表紙の予想から私が引いて割った数字です。
営業利益は目安どおりです。経常利益だけ4分の1を超えています。配当を受け取る時期が第1四半期に集まりやすいので、営業外は前半に偏るものだと私は考えています。会社側も通期の経常利益の伸びを営業利益より低く置いていて、残り9か月の経常利益の前年比は6.3%まで落ちます。持ち株からの収益を、先の期間には当て込んでいない置き方です。
配当は期末に47円を足して年94円の予想です。前期の84円から10円の増配になります。予想の1株利益189.23円に対して、半分ほどを配当に回す計算になります。
私はどう読んだか
本業と持ち株を分けて読みました。本業は、受注が売上に先行し、前受収益が倍になり、原価の薄い商売がそのまま続いている。ここに不安は見つけられませんでした。
私が気にしているのは持ち株のほうです。経常利益の2割強が配当と持分法と売却益から来ています。その元になる株式は、この3か月で150億円以上の評価を減らしました。損益計算書に出る利益は増え、貸借対照表の純資産は減っています。本業だけを見れば、この決算を私は良いほうに読んでいます。持ち株の評価は別の袋に入れておく、というのが私の見方です。上がるかは知りません。
出典:決算短信(会社発表)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260722/140120260721596752.pdf
投資有価証券を、この四半期に何を、どこまで売ったのかは読み取れませんでした。
調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。
全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。
買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。
本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。


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