武田薬品工業(4502)2027年3月期 中間決算分析――増益の多くは、償却と税だと読みました

武田薬品工業(4502)2027年3月期 中間決算分析――増益の多くは、償却と税だと読みました 日本株

はじめに

武田薬品工業は、病院で医師が処方する薬を作って売っている会社です。潰瘍性大腸炎やクローン病の患者さんが続けて使う注射薬、献血された血漿から作る免疫グロブリンの製剤、がんの薬、患者の少ない病気の薬、それにデング熱のワクチンがあります。

売っている先は、日本よりも米国のほうがずっと大きく、欧州や中南米にも広がっています。以前に海外の大きな製薬会社を買収していて、そのとき手に入れた薬の権利を、毎年少しずつ費用にしています。今回の決算では、この費用が話の中心になりました。

見出しの数字は、文句の付けようがない半年

10月29日に出た中間決算です。4月から9月までの半年を、前年同期と並べます。

項目今回前年同期増減率
売上高(売上収益)2兆4,069億9,700万円2兆2,194億8,100万円+8.4%
営業利益4,067億3,900万円2,535億6,100万円+60.4%
経常利益———
純利益(親会社の所有者に帰属)3,056億2,600万円1,124億4,100万円+171.8%

国際会計基準なので、経常利益の段はありません。近いものとして税引前中間利益を見ると、3,186億8,800万円で、前年同期から8割近く増えています。

為替の影響を除くと、売上はわずかに減っていた

会社は短信の4ページ目で、増収は主に円安によるものだと書いています。為替の影響を除いた増減率も並べてあり、売上収益は前年同期より1%減っています。いちばん大きい米国の売上は、円に直すと増えていますが、為替を除くと5%ほど減りました。

伸びている薬もあります。過去5年以内に出した新製品は、為替を除いても2割近く伸びました。ただ、売上全体に占める割合はまだ4%です。6割近くを占める既存の主力製品は、為替を除くとほぼ横ばいでした。

営業利益を押し上げたのは、終わった償却と前年の減損

引っかかったのは、営業利益の増え方です。為替を除けば売上は減っているのに、営業利益は1,532億円増えています。短信の7ページ目と財務補足資料に、その内訳がありました。

費用前年同期今回
製品に係る無形資産償却費2,608億円2,123億円
製品に係る無形資産減損損失760億円62億円
合計3,368億円2,185億円

出どころは財務補足資料の上期の業績表です。

この2行だけで、費用が1,183億円減っています。営業利益の増加分1,532億円のうち、4分の3ほどがここから来ていることになります。

償却が減ったのは、VYVANSE/ELVANSEという薬の権利の償却が終わったからだと書かれています。減損が減ったのは、前年同期に細胞療法の研究を中止して、582億円の減損損失を計上していた反動です。逆に、事業構造の再編にかかる費用は524億円増えていて、それを吸収したうえでの増益です。

償却の終わりは来期以降も効く減り方ですが、前年の減損の反動は一度きりです。どちらも、薬がよく売れて増えた利益ではありません。会社が本業の物差しとして出しているCore営業利益は、為替を除くと前年同期から1%も伸びていません。

税金の費用が、5分の1になった

純利益は、さらに別の理由で膨らんでいます。法人所得税費用が、前年同期の663億円から130億円へ減りました。税引前の利益が8割近く増えたのに、税金の費用は5分の1ほどです。

理由は短信の8ページ目にあります。繰延税金資産の回収可能性を見直したことと、子会社の資本再編で生じる税務上の譲渡損失に繰延税金の便益を計上したことです。貸借対照表でも、繰延税金資産は半年で5,462億6,000万円から6,075億2,200万円へ増えました。

7月から9月の3か月だけを取り出すと、法人所得税は費用ではなく、365億円の利益として出ています。税金が利益を押し上げる側に回っています。……税金で利益が増える四半期は、さすがに珍しい。

ここまでは損益計算書と貸借対照表の数字です。将来の税金を減らせる見込みができたので、その分を先に利益へ入れた、と私は受け取りました。

現金が減った主な理由は、社債の満期でした

キャッシュ・フロー計算書も見ました。営業活動によるキャッシュ・フローは4,319億円で、前年同期より1,618億円少なくなっています。売上債権と棚卸資産が増えたこと、為替予約の決済が入金から支払いに変わったことが理由だと、短信の11ページ目にあります。

手元の現金は、半年で5,950億5,400万円から4,185億3,300万円へ減りました。大きかったのは社債の償還による支出2,396億円で、9月23日に満期を迎えた米ドル建ての社債15億ドルが含まれます。満期どおりの返済なので、ここは気にしていません。社債と借入金は、まだ4兆5,756億円あります。

会社はどう説明しているか

会社は、増収は円安、営業利益の増加は償却の終了と前年の減損の反動、純利益の増加は税の便益と、項目ごとに理由を書いています。説明は数字と合っていて、私はそのまま受け取ります。

留保は一つです。税の便益は見直しによって計上したもので、来期以降も同じ形で出るのかどうかは、短信からは見通せません。

下期は赤字の見込み、その中身は減損の枠

会社は今回、通期予想を引き上げました。営業利益は4,200億円から4,530億円へ引き上げています。純利益は1,660億円から2,090億円へです。上期の実績と並べます。

項目通期予想(今回)上期実績下期
売上収益4兆7,000億円2兆4,069億9,700万円約2兆2,930億円
営業利益4,530億円4,067億3,900万円約463億円
純利益2,090億円3,056億2,600万円約△966億円

約の付いた数字は、通期予想から上期の実績を私が引いたものです。

純利益は、上期だけで通期予想を1,000億円近く上回っています。下期はおよそ966億円の赤字を見込んでいることになります。営業利益も、通期の9割近くを上期で稼ぎ終えています。

なぜそうなるのかは、短信15ページ目の予想の前提に出ていました。

費用通期予想上期実績下期
製品に係る無形資産減損損失1,000億円62億円約938億円
その他の営業費用2,440億円1,016億円約1,424億円
金融収益及び費用(純額)△1,840億円△880億円約△960億円

下期の列も、同じ引き算で出しています。

減損損失の通期の枠は、5月の予想から1,000億円のままです。上期は62億円しか使っていないので、下期に900億円以上を見込んでいる形になります。どの製品に向けた枠なのかは、決算短信には書かれていません。

Core営業利益で見ると、下期の様子は違います。Core営業利益の通期予想は1兆1,900億円で、上期の実績は7,106億円です。引き算すると、下期も4,794億円ほどを稼ぐ見込みです。下期の赤字は、売上が落ちるからではなく、減損と再編の費用を厚めに見込んでいるからです。

金融費用の増加理由には、AMITIZA訴訟の判決に関連する利息の引当計上が含まれると財務補足資料にあります。どういう訴訟なのかは、短信には書かれていません。

私はどう読んだか

私はこの上期を、薬が売れて強くなった半年ではなく、費用と税の巡り合わせが良かった半年だと考えています。理由は、為替を除いた売上が減っていて、Core営業利益もほぼ横ばいだからです。償却の終わりは続く効果ですが、前年の減損の反動と税の便益は毎期来るものではありません。

もう一つ、年間配当の予想は204円で、通期予想の1株当たり利益は131円28銭です。Core EPSの見込みは482円なので、配当はそちらを基準に決めているのだと私は考えています。それでも、配当が決算書どおりの1株当たり利益を上回る並びは、心配性の私には落ち着きません。上がるかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

https://assets-dam.takeda.com/image/upload/v1793241256/Global/Investor/Financial-Results/FY2026/Q2/qr2026_q2_er_jp.pdf

下期に残した減損損失の枠が、どの製品を想定したものなのかは、決算短信からは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました