信越化学工業(4063)2027年3月期 中間決算分析――現金があるのに借りた理由が気になる

信越化学工業(4063)2027年3月期 中間決算分析――現金があるのに借りた理由が気になる 日本株

水道管の材料と、半導体の土台を作っている会社

信越化学工業の事業は、大きく2つあります。1つは塩化ビニル樹脂です。水道管、窓枠、電線の被覆に使われ、住宅や道路を造る人たちが材料として買っていきます。

もう1つは半導体シリコンウエハーです。スマートフォンやデータセンターのチップは、この薄い円盤の上に作られます。ほかにもシリコーン、半導体の回路を焼き付けるフォトレジスト、錠剤を固めるセルロースなどを手がけています。

家を建てる側と、半導体を作る工場の側。どちらも顧客なので、景気の波を受ける場所が2つある会社だと私は理解しています。

上期は2桁の増収増益

10月27日に出た中間決算です。

今回前年同期増減率
売上高1兆4,206億8,400万円1兆2,845億2,200万円+10.6%
営業利益3,859億1,800万円3,339億3,500万円+15.6%
経常利益4,151億800万円3,673億3,900万円+13.0%
純利益2,869億3,900万円2,578億4,400万円+11.3%

利益の伸びが売上の伸びを上回っています。1ページ目だけなら、文句の付けようがない決算です。

伸びたのは半導体の材料で、塩ビは減益

短信の3ページ目に、事業ごとの売上と営業利益が載っています。

上期売上高 前年売上高 今回営業利益 前年営業利益 今回
電子材料4,963億円5,777億円1,706億円2,189億円
生活環境基盤材料5,004億円5,221億円1,023億円862億円
機能材料2,206億円2,456億円481億円632億円
加工・商事・技術サービス671億円751億円136億円174億円

短信は、この表の金額を億円未満切り捨てで載せています。

全社の営業利益の増加は520億円で、そのうち483億円が電子材料です。塩化ビニルを含む生活環境基盤材料は、売上が増えたのに営業利益は16%減りました。

ただ、四半期ごとに並べると印象が変わります。補足資料によると、この事業の営業利益は前期の1〜3月が185億円でした。そこから4〜6月に348億円、7〜9月に514億円と戻っています。上期で前年を下回ったのは、前年の4〜6月と7〜9月がまだ500億円前後あったからです。

自己株式に2,500億円、同じ半年に長期借入れも増えた

引っかかったのは、短信の13ページ目のキャッシュ・フロー計算書でした。

上期の主な現金の出入り金額
営業活動によるキャッシュ・フロー4,107億5,700万円
有形固定資産の取得による支出△1,691億2,100万円
配当金の支払額△984億500万円
自己株式の取得による支出△2,500億200万円
長期借入れによる収入1,610億5,000万円
定期預金の純増減額△920億3,400万円

本業で入った現金から設備投資と配当を払うと、残りは約1,432億円です。4,107億円から設備投資の1,691億円を引きます。そこからさらに配当の984億円を引いた、私の引き算です。自己株式の取得は2,500億円なので、足りない分は約1,068億円になります。

そこへ長期借入れが1,610億円あります。足りない分より500億円ほど多い額です。そしてこの半年に、定期預金を920億円積み増しています。……借りたお金で、預金を増やしたように見える。

貸借対照表では、現金及び預金が3月末より増えて1兆7,510億9,500万円あります。長期借入金は2,363億6,600万円から3,974億3,700万円へ増えました。自己資本比率は78.7%から75.6%に下がっています。

なぜ借りたのかは、短信には書かれていません。補足資料の増減内訳を見ると、現金・預金の増加910億円のうち523億円は、海外子会社の換算レートの差によるものです。手元の現金のかなりの部分が、海外の子会社に置かれているのかもしれません。

借りることが負担になっていないのは、利息の数字で分かります。営業外収益の受取利息は311億3,300万円で、キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額は16億6,000万円です。受け取る利息のほうが、払う利息よりはるかに多いということです。

自己株式は3月末の1億2,828万株から、9月末に1億6,926万株へ増えました。純利益の伸びは11%ですが、1株当たりの利益は14%伸びています。差の3ポイントは、自己株式が増えて、市場に出ている株数が減った分です。

会社の説明は、AI関連の投資と価格改定

電子材料について会社は、データセンター向けを中心にAI関連の投資が半導体市場を大きく伸ばし、いくつかの製品群で供給が逼迫した、と書いています。そのなかで価格改定に取り組み、半導体材料の売上を伸ばした、という説明です。

営業利益が28%増えて、売上の16%増を大きく上回っています。値上げが通ったときの形なので、この説明はそのまま受け取ります。

留保を付けるのは為替です。補足資料では、4〜9月の平均レートが前年の146.0円から159.4円へ円安になっています。海外売上高は全体の8割近くあります。電子材料は国内で生産する分が大きく、輸出で円安の恩恵を受けやすい構造です。それでも、円安が利益をどれだけ押し上げたのかは、短信には分けて書かれていません。

下期の予想は、前年の下期とほぼ同じ売上

会社は通期予想を「7月時点の発表内容を維持」として変えていません。

上期実績通期予想進捗率下期に必要な額前年下期比
売上高1兆4,206億8,400万円2兆7,000億円約52.6%約1兆2,793億1,600万円約−0.8%
営業利益3,859億1,800万円7,000億円約55.1%約3,140億8,200万円約+4.2%
経常利益4,151億800万円7,700億円約53.9%約3,548億9,200万円約+4.1%
純利益2,869億3,900万円5,250億円約54.7%約2,380億6,100万円約+10.0%

約の付いた数字は、短信の上期実績と通期予想から私が出したものです。

7〜9月の3か月だけで、売上は7,582億円ありました。下期に必要な約1兆2,793億円を2で割ると、1四半期あたり約6,400億円です。7〜9月より1,000億円以上少ない水準を見込んでいることになります。10月以降の想定レートは1ドル157円前後で、上期の平均より少し円高の前提です。

私はどう読んだか

長期借入れの増加は、現金が足りなくなったからではないと考えています。理由は、本業で入る現金が前年を上回り、預金も減っていないからです。現金のある場所と、自己株式の取得に使える場所が違う、というのが私の読みです。そう考えると、借りながら預金を積み増す動きにも説明が付きます。

下期の予想は、7〜9月の売上の水準からすると控えめです。何か悪い材料を見込んでいるはずです。塩化ビニルについて、会社は7月以降を「一進一退」と書いています。心配性なので、そちらを頭に置いておきます。上がるかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

https://www.shinetsu.co.jp/wp-content/uploads/2026/07/20261027_con_J.pdf

長期借入れを増やした理由と、増益のうち円安の分がどれだけかは、短信からは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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