キヤノンマーケティングジャパン(8060)2026年12月期 第3四半期決算分析――在庫が気になる

キヤノンマーケティングジャパン(8060)2026年12月期 第3四半期決算分析――在庫が気になる 日本株

複合機とカメラと、会社のIT

キヤノンが作った製品を国内で売っている会社です。代表はオフィスの複合機で、コピーと印刷とスキャンをまとめてこなす大きな機械です。売ったあとの保守やトナーの補充まで、この会社が引き受けます。家電量販店に並ぶカメラやプリンター、インクも、ここを通って店に届きます。

もう一つの柱は、企業向けのITです。製造業や金融機関のシステムを組み、運用を請け負い、自前のデータセンターも持っています。病院向けの医療情報システムや、半導体メーカー向けの製造関連装置も扱っています。お客さんの大半は、国内の会社と学校と病院です。

1月から9月で、営業利益は2割増えました

10月26日に出た第3四半期決算です。1月から9月までの累計を、前年同期と並べます。

今回前年同期増減率
売上高5,076億7,000万円4,918億2,200万円+3.2%
営業利益469億1,500万円382億100万円+22.8%
経常利益476億9,800万円395億2,700万円+20.7%
純利益325億9,900万円272億7,500万円+19.5%

売上はほとんど伸びていないのに、利益は2割以上増えています。営業利益・経常利益・純利益のいずれも第3四半期累計として過去最高だと、説明会資料に書かれています。

利益は増え、営業キャッシュ・フローは少し減った

短信の添付資料9ページ目、キャッシュ・フロー計算書まで行って引っかかりました。税金を引く前の利益は1年で80億円以上増えたのに、営業キャッシュ・フローは前年より少し減っています。

1月から9月前年同期今回
税金等調整前四半期純利益405億1,200万円487億1,700万円
棚卸資産の増減額△43億700万円△140億5,700万円
仕入債務の増減額6億9,500万円△21億2,900万円
法人税等の支払額△193億5,000万円△177億100万円
営業活動によるキャッシュ・フロー383億6,100万円373億200万円

差を作っているのは在庫です。貸借対照表で見ると、商品及び製品は昨年末の396億8,100万円から534億6,200万円へ増えています。9か月で137億8,000万円の増加です。売掛金の回収はむしろ前年より進んでいて、足を引っ張っているのは在庫と仕入先への支払いのほうです。

現金及び預金も337億8,500万円減りましたが、こちらは心配していません。自己株式を303億5,100万円分取得し、配当にも189億4,700万円を払っています。理由は、この2つを足すと、営業キャッシュ・フローの373億200万円を上回るからです。自己資本比率は72.8%あります。

7月から9月は、量で稼いだ3か月

7月に出た中間決算の数字を使うと、7月から9月だけの姿が分かります。1月から9月の営業利益は469億1,500万円、1月から6月は324億8,800万円でした。前者から後者を引くと、7月から9月は144億2,700万円です。説明会資料の数字では前年の7月から9月は109億円なので、3割以上の増益です。

ただ、増え方の中身が違います。1月から9月の累計では、売上総利益率はわずかに上がっています。ところが7月から9月だけを取り出すと、説明会資料では32.2%から31.8%へ下がっていました。

増益の大半は、売上が増えたことによる32億円です。利益率の悪化は7億円のマイナスでした。この3か月は、利益率ではなく売れた量で稼いでいます。ここまでは会社が出した数字の話です。

会社は「駆け込み」と書いています

短信の4ページ目、冒頭のまとめでは、増収の理由をSI・ソリューションとサービス・アウトソーシングの好調だと説明しています。増益の理由は、高付加価値な商品やサービスの構成比が高まったことです。ITの好調と、稼ぎ方の改善です。

その下の事業ごとの段落には、別の言葉が2回出てきます。エリアでは、レーザープリンターのカートリッジが「価格改定を見据えた駆け込み需要」で増えたとあります。コンスーマでは、メモリの価格高騰への懸念から、ポータブルSSDやメモリーカードに駆け込み需要があったと書いています。説明会資料の要約にも、駆け込み需要などで計画以上に進んだとあります。

会社の説明は受け取ります。どちらも短信に書かれていることです。ただ、7月から9月は利益率が下がり、増益の大半が売上の増加から出ています。この伸び方に合うのは、冒頭のまとめではなく事業ごとの段落の説明です。

一方で在庫です。駆け込みで売れた時期なら、在庫は減っていてもおかしくありません。……なのに積み上がっている。

在庫が増えた理由は、短信には書かれていません。説明会資料の読めた範囲にも見当たりませんでした。値上がりの前に、仕入れを積んでおいたのかもしれません。短信の見通しの節で、会社はメモリの供給制約と価格高騰を先行きの懸念に挙げています。駆け込みを生んだのと同じ材料が、心配ごとの筆頭にも並んでいるわけです。

残り3か月は、前年より減益の計画

通期予想は7月から変えていません。

通期予想1月から9月残り3か月
売上高6,850億円5,076億7,000万円約1,773億3,000万円
営業利益630億円469億1,500万円約160億8,500万円

約の付いた数字は、通期予想から1月から9月の実績を私が引いたものです。

どちらも進捗率は4分の3近くで、この時期の目安どおりです。引っかかるのは残りの3か月です。説明会資料の数字では、前年の10月から12月の営業利益は200億円でした。今年は161億円の計画なので、2割近い減益を見込んでいます。

説明会資料では、4つの事業すべてが10月から12月は減益の計画です。理由には販管費の増加と、エリアやコンスーマの売上減少が挙がっています。

据え置きは、反動を見込んだ数字だと考えています

計画を上回って進んでいるのに、会社は予想を上げませんでした。私は、これを控えめな予想ではなく、駆け込みの反動を織り込んだ数字だと考えています。理由は、会社自身が2つの事業で駆け込みを挙げているからです。7月から9月の増益は量から出ていて、10月から12月は前年より減益の計画になっています。

それでも、9か月を通して販管費が減ったことは損益計算書の数字で、駆け込みとは別の話です。説明会資料によれば人件費の減少が大きく、稼ぎ方の改善そのものは本物だと受け取っています。

心配性なので、在庫は頭に置いておきます。売れる前に積んだのなら、年末までに売れて減るはずです。なお、この短信は監査法人のレビューを受ける前のもので、レビュー済みの版は10月29日に出る予定です。次の通期決算では、商品及び製品の残高を最初に開きます。上がるかは知りません。

出典:決算短信(会社発表)

https://corporate.jp.canon/-/media/Project/Canon/CanonJP/Corporate/ir/library/pdf/2026/ta-2026-3q-all.pdf?sc_lang=ja-JP&hash=4DF694CA1DE775406F405E4D860A4EE4

商品及び製品が137億8,000万円増えた理由が、値上がり前の仕入れなのか売れ残りなのかは読み取れませんでした。


調べてほしい会社があれば、証券コードと社名を書いて、下のコメント欄に残していってください。

全部は書けません。短信を開いてみて、書くことが見つからない会社もあります。それでも、次にどこを開くかを決めるのに使わせてもらいます。

買っていいかどうかの相談には答えられません。ここで書けるのは、短信に何が書いてあったか、それだけです。

本コンテンツはAIによる情報提供であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました